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SPX Daily
Bloomberg SPX Weekly
 先週のS&P 500は一直線に反発上昇した。週間を通して6%と2022年で2番目に大幅な上昇となった。先週の記事では「先週の記事は続落懸念全開だったが、それが実現して下が総意になりつつあるようにも見えるので、今更下を叩きたくはない。先週に引続き、淡々と売られるならもちろん逆らう必要はないものの、もしリアライズドVolが低下すれば水準が跳ねなくても売り枯れ認定が近付き、横ばいの後にはショートカバーが続きそうに見える」としており、ベアだった先々週の記事と合わせても週次のリズムを上手く捉えられている。

 週末の仮想通貨クラッシュもあって三連休はやや不穏だったが、米株の休み明けまでにはその話は収まった。水曜朝には最近注目を浴びているNick Timiraosのツイートでリセッション懸念が盛り上がったが、こちらも米株がオープンすると無視されて浅い寄り底となった。Nickは6月FOMCで重要なリーク役を務めたものの、よく考えたらリセッションに人一倍詳しいとも思えず、或いはFedのリセッション懸念リークならそれはそれで何を意味しているかを考えると当然の反応ではある。むしろ米金利の方が素直にリセッション懸念に反応したようにも見え、株はやや時間差を置いてゴルディロックスになった。セクター的にもエネルギーが崩れテックへのシフトが見られた。そうは言っても火水木と3日間は調子に乗ることもなく指数は小動きに終始し、そしてまさに「リアライズドVolが低下すれば水準が跳ねなくても売り枯れ認定が近付き、横ばいの後にはショートカバーが続きそう」が発動した形となる。ミシガン大消費者信頼感指数のインフレ期待がやや鎮火したのも引締め後退期待に繋がったとされるがこちらは誤差だろう。
DB Concolidated Positioning
GS Equity net positioning

 機関投資家ポジショニングはいつ見ても底辺である。それだけ機関投資家がキャッシュを抱えているので相場が落ち着くと途端にFOMOの気持ちになりやすく、全体的にはダウントレンドでもこのようなショートカバーが時々来やすい。もちろん他の参加者にとってはFOMOでも何でもない。
UBS Retail Option Buying Pressure
UBS options buy vs volumes
 珍しく流れてきたUBS製チャートでも先週までの記事で取り上げた通り、個人オプション取引はコール・プット共に盛り上がらない。
GS US CDS Equity Vol 
Bloomberg VIX vs North America CDX
GS VIX vs SPX Realized Vol
GS Historical SPX 6m realized Vol 
Bloomberg VIX in bear markets
 とにかくVIXが上がらないのも変わらない。ドットコムバブル崩壊を含め過去の大きなショックは少なくとも45を付けてきたとBloombergは主張するが、今回はこれまで粛々とバリュエーション調整をこなしただけでパニックは見られない。ではここからリセッションを織り込んでのVIX >45を待つべきかと言われると短期的には期待薄であるが、(体感で語ってきた日次の値幅はともかく)中期のリアライズドVolは歴史的にもかなり高い水準にあり、さすがに高ボラティリティ・レジームが変わる確信を持てないのにVIXが20台前半になったら売り場なのは変わらないだろう。
UBS Index and VIX options
 VXXはクレジット対比でも依然上昇幅が少ない。VIX Callの建玉はロシアのウクライナ侵攻のピークを超えてコロナショック以来の多さとなっており、VIX上昇への備えが大規模に構築されていたことが分かる。これではVIXが上がらないのはしょうがないし、風呂敷を広げてリスクオフへの備えも強固とも言えるだろう。ただシステマティック勢を追い出す笛を持っているのはあくまでもVIXではなくリアライズドVolである。
BofA Buybacks
 自社株買いはやや減速したが、ブラックアウト期間入りを前に期待する人も減ったはずだ。ここまでの自社株買いペースはS&P 500時価総額対比では2021年より速かったが2019年ほどではない。今いまは絶賛ブラックアウト期間中である。
Equity clock seasonality
 シーズナリティ的には弱いはずの6月後半を堅調に通過しつつある。7月のシーズナリティは「サマーラリー」であるが、今年に限ってはあまりバリュエーションが高い(リスクプレミアムが低い)状態で決算期を迎えたくはない。目下は6月末の年金リバランスフローに注目する時間帯であり、月で見ても四半期で見ても下落していた株には押し目買いが入りやすいとされているが、それまでに金利が低下すると株にインフローが増えやすく、指数が上がると細りやすい。経済イベントはパウエル議長講演、PCEデフレーター、そしてISM製造業が続く。ポジショニングがショートに偏っているため指標がない時間帯はショートカバー優勢になりやすく、一方経済指標が近付くタイミングではややオッズが悪くなる。CPIにばかり注目が集まっているがPCEデフレーターの重要性も増している。インフレ系の指標は巨大なデジタルリスクになりつつあり、もし発表前からインフレ・ピークアウト期待が先行した場合は特にオッズが悪くなるだろう。逆に、仮にインフレ・ピークアウト期待が滑っても寄り底で済むならそれだけインフレの話題への耐性が付いてきた解釈となる。
NAAIM
 NAAIMは先週の記事では先々週分の楽観化への警戒から一転して「再び悲観化し始めたので少し押し目買いのオッズがよくなる」としていたが、今週は悲観化が加速した。木曜まで指数がどちらかというと堅調だったにも関わらず、である。これが金曜には早速逆噴射しており、しばらく下値を支えやすい。
LQD HYG
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 テクニカルには5月末と非常に似たチャートとなった。その時との最も大きな違いは、前回ラリーを分かりやすく先導したLQD/HYGが、金利低下にもかかわらず全く付いて来れていないところである。HYGはセクターローテーションでエネルギーが不利になったので分かるが、LQDは5月末対比であまりにもアニマルスピリットがない。先々週の記事で想定していた「特にLQD/HYGの支援なく単日で大幅にラリーした場合は引けショートも許されそうである」に、特に金曜は当てはまっているように見えるのではないかと悩むことになる。引けピンなので、明らかにやや目線が長めの機関投資家が引けターゲットでFOMO玉を放り込んで来たと判断できる。それに対してこの瞬間は明らかにS&P 500よりもLQDの方が割安に放置されており、来週以降にLQDが付いて来るのか、それとも株の上げの方を一過性の月末リバランスフローとして片付けるか、の二者択一となる。いずれにしろ、先週の膠着を見て売り枯れを判断してロングを建てたならともかく、先週の上昇を見た後に(何度目かの)やれ底打ちと戻り高値でロングを新規に建てていく場面ではないのは間違いないだろう。「もし3月末や5月末のような雑なショートカバーがあればそこが買いの逃げ場となるのは今までと変わらない」も維持するし、ショートカバーの進行に伴いそのケースに突入しつつある。リバランスは上で触れたようなフライングで居場所が変わらない限り月末まで逆らう理由があまりない一方、月が明けるとISMは(金利上昇かリセッション蒸し返しの)どちら側に出ても株が上には飛ばなそうに見えるので、そのあたりの日柄が売り場となるだろうか。もしLQD/HYGが一歩遅れて買い上げられた場合はその勢いが続く限り指数の売りも延期となる。

 純粋にチャートで見ると長い上値下値切下げのダウントレンドは維持されており、前回高値4175の手前はトレンド転換を信じない限り売り場となる。バリュエーション的にも米金利がよほど軌道を外れて低下しない限り4175突破を思い描くのは難しいし、パウエル・コールが健在な間は更に難しい。ナスダックは「1月にQTダウントレンドが始まって以来、全ての週足上ヒゲ陰線には反落、続落が続いた」が、先々週の週足上ヒゲ陰線のヒゲは奪還されており、これが起きたのは今ダウントレンドで初となる。従ってリセッション懸念との相性のよさも顕在化したナスダックについては10550サポートが一層堅牢になっており、遠いものの、もし調整に転じたとしても押し目買いがしやすくなる(ただし5月末でも同じことを言って秒で貫通された)。ナスダックのレジスタンスは前回高値とネックラインが集中する12500手前となる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。