
S&P 500はショートカバーの後、見慣れたというより見飽きた形で反落した。先週末の高値を2日にわたって一文更新をした後、火曜にまたしても上から下までS&P 500は2%以上、ナスダックは3%近く売り込まれた。背景としては6月のコンファレンス・ボード消費者信頼感指数が弱かったことが挙げられ、週を通してリセッション・リスクを意識し続けることになった。底打ち期待を打ち砕くような大幅下落の翌日は小動きの十字線、その更に翌日は続落というのもこれまでのパターンに沿っている。


その後は下値でリセッションリスクを咀嚼する日が続いた。コアPCEデフレーターはピークアウトが明瞭になり、ISM製造業も明瞭にデフレーショナリーだった。それを受けて長期金利も大幅に低下し、これはゴルディロックスとまでいかないにしろ、ある程度株式の下支えになったようである。金曜にマイクロンが弱気な業績予想を出したのを受けて半導体が総崩れになったものの、S&P 500は半導体を見捨てて反発した。先週の記事ではコアPCEについては「もし発表前からインフレ・ピークアウト期待が先行した場合は特にオッズが悪くなる」としていたが、発表後にピークアウト期待が付いて来る場合は想定をしていなかった。「いずれにしろ、先週の膠着を見て売り枯れを判断してロングを建てたならともかく、先週の上昇を見た後に(何度目かの)やれ底打ちと戻り高値でロングを新規に建てていく場面ではないのは間違いないだろう。「もし3月末や5月末のような雑なショートカバーがあればそこが買いの逃げ場となるのは今までと変わらない」も維持するし、ショートカバーの進行に伴いそのケースに突入しつつある」としていた通り、戻り高値はやり過ごすべきだった。もっともNAAIMが示唆した通りセンチメントはそのパターンを既に想定しておりポジショニングも相変わらず重くないため、崩落パターンをやり過ごした後は自由度が高かった。巷の5月末の4300説に続いて6月末のリバランスの株買い説にも釣られてはいけなかった。ヒゲ1本の方が遥かに頼りになる。「月末リバランスをやり過ごして(リセッション懸念か金利上昇かのどちらかしかない)ISMの前に売る」というリズム感は、現実の方が一拍子早く走っており合わなかった。

DBのポジショニングは相変わらずシステマティック勢が非常に軽く、裁量勢は中立から少し軽い程度の水準で一喜一憂している。



懸念がインフレからリセッションに移るにつれて今度はコモディティ、資源株のぶん投げが目立った。金融もSPACバブルも弾けたのでここ数ヶ月間にわたって金利上昇にもかかわらず処分が続くが、決算期をどう迎えるか。

S&P 500のフォワードPERは15.9、トップ10を除くS&P 490は13.9とかなり安くなっている。バリュエーションの考え方は独立した記事にまとめた通りである。そこでは「リセッションになるならないに関わらず、今この瞬間指数のアップサイドを規定するのはEPSよりも金利低下幅である」としていたが、案外早く金利は低下した。それによってERPは少しまともに見えてきた。ERPが載ってくればEPSについて意見が分かれる余地も出て来ようが、薄かったら考慮する価値もないのである。


ボトムアップEPSもリセッション懸念と共にやや低下し始めている。これが続く限り株価を持ち上げるものは金利低下のみになる。

NAAIMは総悲観で下値を支えるという仕事をこなしてやや跳ねているが、まだ底辺域である。


LQDもクレジットスプレッドは150bp近辺で高止まりしているものの、金利低下の勢いが勝って価格が反発している。HYGの方はエネルギーの弱さと連動する形で全く跳ねていない。とはいえリセッション懸念が最も盛り上がったとされる週後半にはHYGも上昇はしており、先週金曜ほど株の反発は孤立していない。先週金曜もLQD, HYGの盛り上がらなさはよいヒントになったし、一週間を通してLQDがTARAとなった。LQD, HYGは株式の方向性を占うのに引続き役に立ちそうである。



テクニカルには「長い上値下値切下げのダウントレンドは維持されており、前回高値4175の手前はトレンド転換を信じない限り売り場となる。バリュエーション的にも米金利がよほど軌道を外れて低下しない限り4175突破を思い描くのは難しいし、パウエル・コールが健在な間は更に難しい」が続く。というより4175どころではない。とはいえ下値では徐々にサポートが出来始めており、金曜日足が久々に下ヒゲ陽線になったことから3750はサポートとなる。ナスダックでは週足200SMAがそれにあたる。更に下では10550が健在である。上値余地としては引続きS&P 500の4175は遠く、近い将来に到達できそうにない。とはいえチャート的にはサポートの方が圧倒的に近く、上値さえ追いかけなければ、また将来上値を追いかけたくならないためにも、3750をブレイクしたら切ればよいと割り切ったタクティカルな押し目買いの方がオッズがよい。シーズナリティは味方だが、重要な決算の前に堅調に推移したなら再び割りに合わなくなる。つまり基本的には(上値からの売り崩しの翌日の小十字のパターンを観測した時以外は)逆張りを意識した方がストレスが少なそうである。
ファンダメンタルズ的にはコアPCEのピークアウトはインフレに関する雑音を駆除するポジティブ材料である。それを待っていた参加者もいただろう。一方、Fedが現実にそれに反応を示すかどうかは7月会合を待たないと分からず、パウエル・コールの消滅を確認できる前に先走りすぎるとまたもやオッズが悪くなる。イベントは欧米中銀の議事要旨が続く。雇用統計やJOLTSは明瞭な悪化が見られればゴルディロックスになりやすそう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。