SPX Daily
 S&P 500は再び反発した。週足は3750 -3900間で鯨幕になっている。三連休を経て欧州発と思われるリスクオフで米株は寄付き、そのまま先週の記事でサポートとしていた3750を秒で割ってしまったが、そこではコモディティ買い・債券売りのインフレトレードのアンワインドに伴ってエネルギーセクターを見捨てつつ、金利低下を手掛かりにナスダックがS&P 500をアウトパフォームした。インフレトレードが始まって以来の久々の「リセッション懸念で株が下がると思いきやナスダック主導で浮かび上がってきてしまう」構図が見られ、S&P 500もフラットながらも日足は2本目の下ヒゲ陽線となった。そこからFOMC議事要旨を通過し、慎重ながらも陽線が続いた。2022年に入って以来ナスダックは初の5連騰となった。一方上げのペースは慎重であり、以前の短命に終わったラリーと異なり1日3%のような雑な上げは見られなかった。今回の下落トレンドで本ブログは執拗に「1日3%のような低Volレジームに移行するほどでもないグッドニュースが伴う上げ」を批判し、雑なショートカバーは売り場としてきたが、そういう意味では今回が初めて筋のいい上昇となっており、ちょっと跳ねるとやれ底打ちと盛り上がる世の中のアニマルスピリットがいい加減振り落とされたことを示唆する。

 先週の記事では「チャート的にはサポートの方が圧倒的に近く、上値さえ追いかけなければ、また将来上値を追いかけたくならないためにも、3750をブレイクしたら切ればよいと割り切ったタクティカルな押し目買いの方がオッズがよい」と逆張りの強気としており、方向性としてはその後の展開と雰囲気とよくマッチしていたが、肝心の3750は火曜の下ヒゲでブレイクされているので最悪の切らされ方である。その後火曜の日足も下ヒゲ陽線になったのを見て入り直さなければならなかった。対S&P 500の優位が久々に再開したナスダックで3750に当たる週足200SMAが再びサポートとなったのがせめての救いである。
SOX
 月末にかけてマイクロンの業績予想に加えてスマホ販売不振などに伴う半導体注文の取消しなどが話題になりSOXは急落したが、先週の記事でも述べたように指数は半導体を見捨てて一足先に反発し、先週になってサムスンの決算を無事に通過したことによりSOXも反発した。
BofA Tech Flows 
ARKK
 年初来パフォーマンスが悪かったテックには資金が少しずつ戻ってきており、それは値動きにも現れている。火曜にインフレトレードのアンワインドに伴いARKK が1日で10%近く買い上げられたのはやけっぱちに見えたが、ARKKはその後に5~6月の戻り高値を更新している。S&P 500が5月末高値から相当遠いことを考えると相当の強さである。
US and EM stocks
 ナスダック優位が戻ってきたことにより米株のEMや他の株式指数と対比した場合の優位も戻ってきた。
TNX LQD HYG
 先週の記事では指数のバリュエーションの考え方に基づいて「金利の低下によってERPは少しまともに見えてきた」としており、それはブル転換を後押しする材料の一つになり得たが、「株価を持ち上げるものは金利低下のみ」としていたにも関わらず、肝心の金利自体はリセッション懸念の後退で週後半に再び大幅に上昇している。では再び指数がクラッシュし、テックからエネルギーへの再シフトが見られるかと思いきやそうはならなかった。金利上昇をスプレッドのタイトニングである程度オフセットしたLQDはやや堅調であり、HYGに至っては単価ベースでも上昇している。HYGすら金利上昇でクラッシュしない間は株は金利上昇でクラッシュしづらい。
NAAIM
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 NAAIMは堅調な一週間だったにも関わらず微妙にベア転しており、続騰のための燃料を投下している。バンカメのブルベア指数は4週連続で0である
Citi Upgrades vs Downgrades 
Bloomberg SP500 and EPS
 アナリストのセンチメントはやや悪化している。今週はまだ決算が本格化しないが、来週になると増えて来る。決算期を高値で迎えるとぼちぼちオッズが悪くなってきそう。今週のうちにどこまで高値を売れるか。

 今週はCPIが予定されている。こちらはPCEより遥かにピークアウトしづらく、簡単にピークアウトは期待できないし、今のところ世の中でもピークアウト期待はあまりないように見えるが、もし発表前に思い出したようにスケベピークアウト狙いが集中するようならオッズが悪くなる。

 テクニカルには週足が5月以来の下ヒゲ陽線となっており、3740がサポートとなる。ナスダックの10850近辺もサポートとなる。これまでは上げが止まって下げに転じると追いかけてもぶん投げないと安値更新を見てしまうパターンが繰り返されたが、6月末の押しは安値を更新しておらず、そして週足が下ヒゲ陽線になったのでだんだん押し目を買いやすくなる。上値余地としてはナスダックは12500を意識することになる。S&P 500の方は4175がそれに当たるが、そのあたりが限界になるような気は引続きしているので、高値で追いかける気はあまりしない。ただ5月以降の急速で短命なラリーと違って今回は息が長い緩やかなラリーであり、NAAIMも反応できていないので値頃感ショートは封印したい。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。