PCE Deflator MoM Housing
 Fedの金融引締めサイクルが佳境に入り、コアPCEデフレーターがピークアウトする中、最も金融引締めがダイレクトに効きそうなのに最もしぶといのは住居である。一般的に金融引締めは住宅ローン金利の上昇を通して住宅の購買力を削ぎ、住宅価格を下落させ、最後に家賃を低下させようとする。
FRED Case Shiller US National Home Price Index 
New Home sold by Price
FRED Freddie Mac 30y Mortgage Rates
 米国の住宅価格はコロナ後に高騰が続く。これはコロナ後の生活様式の変化に伴う転居需要、資材価格など建築コストの上昇、そして何よりも超低金利が背景である。コロナ前のサイクルでは(トランプ前大統領の圧力で引締めが終わる直前に)30年住宅ローン(モーゲージ)金利は5%のピークを付けたが、コロナショック後の大規模な金融緩和を受けて3%割れまで低下した。そうすると多少住宅が高くても買える人が激増するので住宅購入がブームになった。一方、2022年に入って以来の金融引締めも苛烈であり、国債金利の上昇に伴い住宅ローン金利は3%から再び5%後半まで素早く上昇した。住宅ローン金利の水準はサブプライムショック直前の2005年には及ばないものの、上昇ピッチは類を見ない。
House Price vs Hourly Earnings
DoubleLine Average Mortgage Payment as %Median Household Income 
Yardeni US Housing Affordability Index
GS Housing Affordability Index
Interest Rate vs Purchase Power
 住宅価格の上昇ペースは賃金の伸び率より遥かに高かったので住宅購買力は低下した。住宅価格の高騰に加えて住宅ローン金利まで上昇したので、平均的な家計収入に占める平均的な住宅ローン支払い負担の割合はサブプライムショック直前の2005年並みまで上昇した。住宅ローン金利が2%上がると同じ支払い額では2割引きの家しか買えなくなる。
MBA Purchase and Refinance Mortgage Application
 当然住宅ローンを借りる人は減る。特に金利上昇局面で借り換えが減るのは当たり前である。
US New and Existing Home Sales
 住宅販売も新築、それより遥かに大きい中古市場共に低調になってきた。サブプライムショック前と同様、金融引締めによって購買力が失われるので不動産価格が下落しそうと考えるのが素直であるが、果たして。
Single Family Houses Construction Cost Index
 コロナ後のインフレと供給制約により建築コストの高止まりが続いている。
Wells Fargo Inventory of New Homes for Sale
 
Existing Home Inventory
 その結果、新築在庫は一時払底した。もっとも高く売れるので建築中の住宅は増えている。中古住宅も同様に在庫が薄く、直近で少し増えただけであるので、サブプライムショック前と大違いである。在庫が薄いのに暴落しようがない
Mortgage Origination by Credit Score
 何よりもサブプライムショック時と違うのは住宅ローンの借り手の属性である。サブプライムショック前ではクレジットスコアの低い層(まさにサブプライム層)までが大挙して住宅ローンを借りたが、コロナ後に大挙して住宅ローンを借りているのは明らかに過剰貯蓄を手に入れたクレジットスコアが高い層である。彼らの金融引締めや経済ショックへの耐性はサブプライムショック時と段違いだろう。
GS Mortgage Debt Service Ratio
GS Mortgage Borrower Rate
 更に多くの人は既にコロナ後のブームの時に調達を済ませており、彼らの利払い負担は可処分所得対比でも重くない。これから借りて住宅を購入する人が大変なだけである。
NAR US Existing Homes Months Suppply
 もっとも在庫の供給はさすがに2021年よりは増えたようである。
Bloomberg share of home price cut
 それに伴い直近では値下げも増えている。もっとも値下げのニュースは記事になりやすいためみな血眼になって探しているのが前提なので、どこかで不動産価格が下落したというヘッドラインが増えても全体像を必ずしも示唆しない。上げ幅はさすがに鈍るに違いないが、不動産バブル崩壊にはまだほど遠い。
WP Rent Change Map
 家賃も概して伸びている。住宅価格が上昇すると家賃も引き上げられやすいし、逆に住宅購入を諦めた家庭が賃貸市場に流入するかもしれない。住宅ローン金利の上昇に不動産価格はやや遅れて反応し、賃料は不動産価格に更に遅れて(それぞれ数ヶ月〜1年半)反応するだろう。消費財などは引締めで早速デフレーショナリーになっているが、住居コストに金融引締めが浸透するにはまだ時間がかかりそうである。今引締めサイクルの後半は専ら不動産引締めになりそうである。

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Debt interactive Map 
Rents are rising everywhere. See how much prices are up in your area. 

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。