

先週のS&P 500は再び下値を試してから反発した。先週の記事では「今週のうちにどこまで高値を売れるか」「高値で追いかける気はあまりしない。ただ5月以降の急速で短命なラリーと違って今回は息が長い緩やかなラリーであり、NAAIMも反応できていないので値頃感ショートは封印したい」としていたが、一旦は「今週のうち」などと言わずすぐに売ってみるのが正しかったし、値頃感ショートも一旦はワークしたはずだ。S&P 500の週足下ヒゲの3740サポートはまたもや一瞬破られてから反発したため役に立たず、一方リセッション懸念に強いナスダックの10850はまたしても守られた。
イベントはマクロ系が多かった。水曜のCPIは「こちらはPCEより遥かにピークアウトしづらく、簡単にピークアウトは期待できないし、今のところ世の中でもピークアウト期待はあまりないように見えるが、もし発表前に思い出したようにスケベピークアウト狙いが集中するようならオッズが悪くなる」としていた通りピークアウトは遠かったが、一方で瞬間的にはリスクオフに繋がったものの「スケベピークアウト期待が崩れた」ような大仰なリアクションもなく、代わりに「よくても悪くてもCPIが終わったら買おう」と予めて決めてかかってそうな買いが引けまで入り続けた。この時までは3740サポートはよくワークした。金利は一時7月FOMCでの100bp利上げを織り込みに行ったものの長期金利は小動きとなった。CPI後はウォラー、ボスティック、ブラードの3人の講演が控えている中、更に前回75bp利上げの決め手となったとされるミシガン大消費者信頼感速報値からのブラックアウト期間入りという、これまた並びが悪い日柄が続く中で「無事に通過して全戻し」というのもおかしいので翌日寄付きから改めて売り直され3740もブレイクされたが、結局連銀高官達はCPIに動じず、挙句の果てにミシガン大インフレ期待は大きく後退したため一連の騒ぎはなかったことになった。


ボトムアップEPSは引続き緩やかな下方修正が続く。それが加速するかどうかは今から始まる決算期で決まりそうである。とはいえ本ブログが述べてきたように、2期連続実質GDPマイナス成長のリセッションだからEPSはこれまでのリセッションの前例通りに14%や15%下がる、とは直ちにはならないだろう。金融は大方の予想通りSPACバブルが弾けて投資銀行部門の収入が減っているが金利上昇恩恵とインフレ耐性を見せた。他のセクターはどうか。


ドル高がEPSに与える悪影響をボトムアップ勢が織り込むのは遅く、MSFTが先月ドル高で売上高を下方修正したのが記憶に新しいが、ネガティブサプライズが散見されると考えた方がよさそう。前期の例では引けまで買い上げられた直後に決算爆弾が落ちた(しかも悪いわけではなく期待爆弾)こともままあったが、やはりこういう場面では高値引けの瞬間にオッズが最悪になるのか、それとも前期よりはサプライズ度が薄れるのか。或いはそもそも決算前から売られて決算通過で跳ねるのか。


そしてEPSとバリュエーションから見ると当然現水準は安くはない。マクロ・ストラテジーが自社のボトムアップリサーチにすらEPS予想が甘すぎるとチャレンジしたりしているが果たしてどちらが正しいか。一般的に前者は企業分析に疎く、一方後者はふわっとした理由では予想を変えづらい。

DBポジショニングは8%パーセンタイルと低迷が続く。裁量勢は恐らく景況感に従ってポジションを平均対比マイナスまで振っているがそこからはまた一喜一憂が始まった。システマティック勢はリアライズドVolの低迷に伴いVolコントロール型が買い戻しているのが明瞭であるが、出動にもっとハードルが高いCTAとリスク・パリティは断固として買戻しに動かない。1日3%上がるような雑なショートカバーはすっかりなくなってきたが、1日2%も3%も下がるような日が続出するとVolコントロールも振り出しに戻ってしまう。強気勢はひたすら「長く続く緩やかな上昇局面」を祈り続けることになる。それがやってきたらその後はバリュエーションを忘れてもよさそうである。

オプションは依然概して低調である。

先物ポジションに限るとリアルマネーもHFもヘッジショートが一直線に積み上がっておりコロナショック時以上のショートである。ISMと並べると景況感警戒のヘッジと分かるが、だいぶ先取りしている。

セクターフローは金融から脱出、テックはふらつきつつも取り崩し転換を回避している。

NAAIMはすっかり弱気が定着しており上のポジショニングと整合的である。ドル高にもかかわらず海外非駐からの積立てフローが途切れない中、フェアバリューが3300や3000とは言っても「誰が」その水準まで売るのか。米国家計の取り崩しか、裁量投資家の更なるポジション削減のどちらかということになるだろうか。

CPIがピークアウトしなかったにもかかわらず長期金利が上がらなかったので、先々週大人しかったLQD, HYGの陽線続きが目立っている。特にHYGは株式よりも「100bp利上げ剥落」テーマに敏感であり金曜に大きく跳ねた。

日柄。先月の巨大オプション・エクスパイアが全然値動きを与えなかったのですっかり忘れていたが15日がそれだった。先週半ばまでの下落は一応オプション・エクスパイアに向けたものという解釈もできる。これまでラリーの陽線は金曜引け止まりになっていたことが多く、その後イントラデーで金曜高値を超えることはあっても週末を跨ぐと途端に陰線が増えることが多かったが、いつそのワン・ウィーク・ラリーのジンクスを打破できるか。そういう意味で上下を占うのは意外と月曜が陽線か陰線かということになるだろうか。

これも日柄であるが、7/22はノルトストリーム1のメンテナンス終了後に欧州への天然ガス供給が再開される予定の日である。理由はいまいち理解できないが世の中ではそのまま再開されないリスクが取り沙汰されており、その日に近付くにつれてデジタルリスクへの警戒が強まる可能性がある。マクロ的には7月FOMC前のブラックアウトに入ったものの、ミシガンまで通過して特に不確実性が高まったわけでもないので、あくまでも決算に興味が集中しそうである。そしてGSによると7/22でブラックアウト期間が明けるので自社株買いが戻って来るようである。
テクニカルには先々週の記事の「逆張りを意識した方がストレスが少なそうである」がワークし続けた時間帯だった。水準的には先々週の3750、先週の3740がそれぞれサポートとしていた水準をブレイクされた挙句に折り返されており非常にやりづらく、とにかく水準を見ずに逆張り、逆張りが正解であった。実際直近の値動きをまとめると6月中旬をボトムに反発に転じた後に緩やかな上昇フラッグを形成している。週足の下ヒゲ陽線がブレイクされたままなので先週高値と50SMAが集まる3930は分水嶺となり、ショートカバーならその手前が限界になる。一方、もし3930を上にブレイクできたらそれなりに上値余地が広がり、再びS&P 500の4175とナスダックの12500が視野に入る。もっとも視野に入るだけで、同時に長期金利が大幅に低下しない限りバリュエーション的にはそのあたりは依然あまりイメージが付かない。サポートの方は一文安値を付け続けた3700台前半が緩やかなサポートとなる。3700さえブレイクできないのに3300の話をしても無駄である。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。