SPX Daily
 先週のS&P 500は淡々とした続伸となった。決算は大半を通過し、ペロシ下院議長の台湾訪問とそのリアクションとしての人民解放軍の軍事演習は攪乱要因になったものの指数を大きく下げるには至らなかった。低下していた米金利は雇用統計を受けて大きく反発したが、株式は金利上昇によく耐えた。
MS SPX vs USIG
 やや長期のチャートとなってしまうが、本ブログが株式が割高と言い出してから株式はUSIG対比でアンダーパフォームしていたが、直近になって金利低下以上に指数が跳ねている。
Factset EPS and Price action 
Factset SP500 EPS
 GAFAMの後は消化試合の感が強かったが、先週まででS&P 500企業の決算は9割近くが出そろった。この時点での今期分のEPS伸び率見通しは6.7%となっているが、エネルギーセクターを除くと▲3.7%となっている。2022年通年では8.9%の伸び(エネルギーセクターを除くと+2.4%と辛うじてプラス)となった。インフレが9%あることを考えると決してよくはないがEPSも株価も名目値である。
Bloomberg PER and EPS from bottom
 6月ボトムからの反発局面は100%以上がフォワードPER(バリュエーション)の修復によるものである。予想EPSは決算期を通過して1%低下、PERは15%弱修復している。
JPM Recession prob
 その結果、JPMのモデルによると6月16日には91%のリセッション確率を織り込んでいたS&P 500は8月3日時点で51%しか織り込まなくなった。その間USIGなどは変わらずで、債券やベースメタルはむしろリセッション織込みが強まったので、株とUSHYだけが相対的に割高化した形となる。
DB Positioning
 久々にDB Positioningのシステマティック勢の戦略別推移が流れて来た。以前の記事で述べた通り、CTAとリスクパリティは引続き低調であり、そういう意味でJPMが言っていたCTAが中立まで戻したという観測とは矛盾する。Volコントロールだけが本ブログが重視するリアライズドVolの低下と共に戻しているのは違和感がない。全体的にはシステマティック勢のポジションは依然軽い(6%パーセンタイル)ということになる。
GS CTA Risk parity  positioning
GS Equity flows by investor
 珍しく流れて来たGSのシステマティック勢ポジショニングではCTAが少し買い戻しており、しばらく見なかったリスクパリティはまだ淡々とポジションを落としている。どちらも軽いのはDBと同様である。投資家別フローでは家計と企業の自社株買いが続いており、海外勢は昨年後半からやや落としているようである。
GS SP500 drawdown and upside
 GSの2007年以来のISMの上昇・低下局面におけるポジショニング別S&P 500のドローダウンとアップサイドを統計している。興味深いことにポジショニングの軽さは指数のアップサイド、特にを明確に影響している一方、ダウンサイドの小ささには必ずしも繋がらず、むしろポジションが軽い方がISMの強弱にかかわらずドローダウンが大きかったりするので、ポジショニングにはある程度の先見性があり、ポジショニングの軽さのみを持って下落トレンドに立ち向かうのは危険であることが分かる。ショートしているのが機械なら儲かっている限り値頃感で利食ったりしないからである。一方、ポジショニングの軽さが威力を発揮するのは上昇トレンドが確立された後である。そういう意味で本ブログのように早々と「ポジショニングが軽い」ことだけをもって下落トレンドを舐めてかかるのは危険な発想であったし、ポジショニングが威力を発揮しているのはまさに「今」である。
NAAIM
 NAAIMは続伸となった。チキンレースというほどまでは回復していないものの、「総悲観だから買い」という話ではなくなった。
US Regular Gas Price
 今週は再びCPIガチャが控えている。前回の高さの要因になったガソリン価格はさすがに大きく下落しているので「今月こそ」ピークアウトするのがコンセンサスとなっている。これまでは備えすぎて株が下がらないイベントとなってきたが、備えがないガチャがまたどうなるか。19日はオプション・エクスパイアなので来週あたりになるとまた地合いが重くなりそう。
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 テクニカルには3本目の週足下ヒゲ陽線となる。「3700さえブレイクできないのに3300の話をしても無駄である」「3820さえブレイクできないのに3300の話をしても無駄である」「3910さえブレイクできないのに3300の話をしても無駄である」としてきたのは「4080さえブレイクできないのに3300の話をしても無駄である」に書き換えられる。週足サポートは一気に170ポイント上がってきた。レジスタンスについては(金利も上がったことであるし)依然バリュエーションからせいぜい4300というのは変わっていないが相変わらずこれは値頃感である。ナスダックがアウトパフォームして12500をブレイクできたため雰囲気はよかったが、S&P 500自体はどちらかというと地固め色が強かった。前回の記事が雑にイメージした「3910 -4300のレンジ」からは当然逸脱していないものの、「現水準より上はポジションを細くする利食い場に見える」「4000近辺は押し目買いできる」はややピントがずれた。買いは4080割れまでは引っ張り続けられそうである。もっとも6月月初高値の4175をやや攻めあぐねているチャートにはなるので、4175を超えられないまま4080が割れたら4175レジスタンスの強さが再確認され、調整が長引く可能性が出て来る。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。