SPX Daily 
 先週のS&P 500は買い支えもなく続落となった。上げる時は週足陽線続きだったが、同じように下げる時も週足陰線続きだった。下げる時のパターンは5月以降の下落トレンドでよく見られたパターンに沿っていた。すなわち4200からのクラッシュを1日目と数えて先週の記事で詳細に取り上げた「これまでの堅調地合いを台無しにした大陰線の後が毎回どうなったかというと、続落か、2日目が小康状態の十字線で3日目に下値を伸ばすかであった。早ければ反発に転じるのは3日目であり、1本目の日足大陰線がそのまま安値になったことはない」の通りであった。2日目にあたる月曜は十字線に近い小さな上ヒゲ陰線となった。カシュカリ総裁が株式の下落を喜ぶコメントをしたが大した反応はなく、更に中国への最先端半導体チップの輸出制限なども経て自律反発は5日目に始まり、それなりにグッドニュースとなった雇用統計を経て続伸しそうになったところで、ノルドストリーム1の再停止ヘッドラインで再びクラッシュした。本ブログでは8/1時点で「8月全体にわたって3910 -4300のレンジをイメージすることになる」としていたのだが、8月を通しての実績値幅は3950 -4325とレンジ幅も含めてほぼ完璧であったと言える。しかし月末以来指数はこのレンジの下限に張り付いている。

TD Nasdaq CTA Position
 トロント・ドミニオンのCTAポジション。ショートカバーで指数を持ち上げた後、やはり指数が天井を打って反落に転ずるとショートを追加している。
JPM HF Beta and E mini positioning
 JPMのHFベータは軽い水準から動きそうにない。
DB Discretionary positioning
 DBの裁量投資家ポジショニングも再び削減されパンデミック・クライシス以来の軽いポジションになっている。この削減はISMの悪化ペースよりも速く進んでおり、裁量投資家はグッドニュースが出るたびに買い戻しに動きそうという体勢を示唆しているが、問題はグッドニュースが思い付かないということである。裁量投資家が買い戻しに動くまでCTAのニューショートに押されやすい時間帯が続くだろう。
DB Future Liquidity and Option Vol
 S&P 500先物の流動性と出来高は少し戻って来た。リアライズドVolは指数の急落を受けて19からやや反発して20に近付いており、従ってVIXが負のリスクプレミアムになるのは20近辺となるが、幸い6月ほどは上がっていない。
NAAIM
 NAAIMは先々週の記事で「この水準は買いの最もオッズがよかった時間帯は既に過ぎたことを示している先週の記事で「5月や7月対比では既にだいぶ戻したところであり、既に振り落としが終わったので次は押し目買いである、というほどは低くない」としていたが大変逆指標として役に立った。基本的に世の中が下目線の中で始まった下落トレンドなので誰それがベアと言ったからブルみたいな見方から入ると孤独に一人損するコントラリアンになってしまうが、そういうのと違ってNAAIMやポジショニングはちゃんと見れば依然逆指標として強力である。先週の下落でNAAIMは大幅に下落しており、これは底打ちの週の決め打ちには繋がらないものの、買いのオッズが再び改善し始めたことを示唆する。
Barclays Small Call buying
 リテールのものと思われるスモールサイズのコール買いは値動きを追いかける形で8月に一度盛り返したがすぐにまた萎んでしまった。

 テクニカルには反発の手掛かりがない状態が続く。木曜の自律反発は3900を軽いサポートにしたが、それを手掛かりとした金曜の反発は雇用統計の支持があったにもかかわらず50SMAに綺麗に頭を抑えられて反落した。4020は日足レジスタンスになる。更に短い上ヒゲを持った週足陰線となったため4060もレジスタンスとなる。従って日足で4000台を取り戻さない限りサポートよりレジスタンスの方が強いチャートが続く。木曜から金曜にかけての展開は「上がったところは売り場」という相場が戻って来たことを市場参加者に印象付けるだろう。下値余地については先週の記事で取り上げた4300をトップ、4100をネックラインとするヘッドアンドショルダーは既にターゲットの3900をほぼ達成している。モメンタムは当然下向きであるが、それ以上の下値ターゲットのようなものは特にない。
Factset SP500 forward EPS 
Yardeni SP500 forward PER
 下値余地は再びバリュエーションから考えることになりそうである。決算期を通過してEPS予想は横ばいとなっていいる。とすれば動くのはフォワードPERであり、これについては指数が4200に載っていた時に「実質金利が再びマイナスにならない限りフォワードPERの19倍は遠い」と述べており、実際18を掠ったところで反落したためVIXの19と合わせて「2つの19」が依然天井を規定しているが、その後の下落を通して16.5まで低下してきた。これはどちらかというと長期金利が上昇したのとシンクロするような動きなのでエクイティ・リスクプレミアムはさほど広がっておらず、4200台の時よりはマシになったものの割安化したわけではない。

 金利が下がればバリュエーションのサポートとなるが、レイバーデーが明けると数営業日にわたって上昇しやすいシーズナリティがあり例年通りになると引続き悪さする可能性が高い。その間に今ひとつ織込みが定まらないECBが控えている。中旬から再び自社株買いブラックアウトが始まり、オプション・エクスパイアを経てこれまた今ひとつ織込み切れないFRBが続く。シーズナリティから入ると9月前半はよくてレンジということになる。ECBとFRBの織込み切れない「2つの75」に金利市場の注目が集まっており、両方を通過してはじめてインフレ解消一色の経済指標に注目が戻ることになるだろうか。逆にそれまでの間に誰かが75bpと言い切ってくれた方がその視点転換のタイミングは早まりそうである。

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。


この記事は投資行動を推奨するものではありません。