SPX Daily 
Bloomberg SP500 drop in first nine months
 先週のS&P 500は大幅続落となった。先週の記事で意識していた3640には日替わりで纏わり付いており大変扱いづらかった。週末まで方向性が分かりづらい展開が続いた後、金曜になって下抜けてしまい、週足200SMAの3585にぴったりとくっ付いて引けている。アップルが需要が伸びないため増産を断念するとのヘッドラインが流れ、更にそれを受けてバンカメがアップルのターゲットを引下げたことによりS&P 1とも言われていたアップルが陥落し、6月にサウジやウォーレン・バフェットが買ったという水準まで戻って来た。指数では6月安値が更新され、4000台まで反発した際に言われていた「戦後S&P 500が下落の半値戻しを達成した後に底割れしたことはなかった」という大局観の有害さが実現した。8月時点で本ブログなどは「ここまで来ると「どうも底を打ったようだ」のような呑気な長期ビューを言われてももはや大半の市場参加者にとっては意味がない。それは次の下落幅が3600までの600ポイント以内に収まることしか意味せず、600ポイントものドローダウンを覚悟できるならなぜ3000を覚悟して3600でエントリーせず、アップサイドが幾ばくもないこの水準を選ぶのか。ショートカバーの残党を追いかけるか金利低下ビューを持っているならともかく、長期投資ならこの水準は完全に祭りの後に見える」と言い切っていたのだが、9月の途中で「2つの75」などに振らされたのは失敗であり初志貫徹して寝ていればよかった。

 マクロではイギリスの超長期金利に振らされていたのにBOEが止めにかかったため米金利にも落ち着きが戻ってきているものの、それを見た指数の上げは1日で終わってしまった。ここ数週間は米ドル高や中国需要の弱さなどに由来する業績懸念の話題が多く、金利が上げ止まったからと言って株が上がりやすくなったわけではない。特にエクイティ・リスクプレミアムがあまり付いていないので業績懸念には脆弱であり、出尽くしにはならない。先週の記事で述べた「あとは暴れている金利次第であるが、株の方にリスクプレミアムが付いていない以上、金利にブルなら直接債券を買った方が早い気もする」としていた通りである。極めて小規模ながら2018年12月のアップルショックと少し重なって見えた。
Factset forward PER 
MS Daily Change in SP500 Forward EPS
 S&P 500のフォワードPERは15.8まで低下しものの、ボトムアップEPSも緩やかに低下基調なので指数が下がってもやや下がりづらくなっている。結局、金利低下を祈るしかないのである。
BofA Bonds dont hedge equities in an inflationary world 
GS Equity Risk Premium
 インフレ―ショナリーな世界ではリスクオフになっても中銀が行動を起こしづらいため、債券による株のヘッジ機能というか分散機能が消滅する。というより利回りが上がった債券は既に「株のヘッジ」などという理由でしか持てない商品ではなくなっており、もはや債券自体が株の代替である。EPSが反転上昇するまでS&P 500の債券化と言ってもよいだろう。金利にブルなら、エクイティ・リスクプレミアムが魅力的なら株、魅力的でないと思うなら債券でよい。
Dailyshot total return attribution
 S&P 500の期ごとのリターンの分解を見ると、下落の要因はバリュエーション調整から徐々にEPS自体の低下に移りつつある。
NAAIM
 NAAIMは2021年以来の低さとなった。機関投資家コミュニティの下落への備えは完璧であり、ショートで下を崩せる気は全くしない。現に強めに出たPCEにも株も債券も動じなくなった。
GS Sentiment Indicator
 GSのセンチメント・インジケーターは2015~2016年以来の31週連続マイナスであり、もう1週経てばチャイナショックの32週連続と並ぶ。実際、8月の記事では2015年パターンか、2018年パターンかとしていたが、やはりその時の4300までのラリーは2015年年末のポジションの軽さだけが招いたラリーと同じ性質であり、その後再び下落に転じた後に欧州系投資銀行破綻の噂がとどめを刺そうとしたところまでそっくりである。
Carson Monthly Returns
Equity clock SP500 Seasonality 
JPM Dec Put spread
 シーズナリティは弱い9月をシーズナリティ通りに全て通過し、年末までシーズナリティの妨害を一切考えなくてもよくなった。四半期末に向けては、JPMのヘッジ付き商品が遺したプット・スプレッドの一部と思われる巨大な3580プットの存在が話題になった。プットの顧客買い・ディーラー売りなので金曜引けに失効するまで指数が上から3580に近付くにつれてディーラー側のガンマショートが効いて来るものの、9/30引けに失効するとエクスポージャーも消滅する。代わりにJPMは12/30に向けて新規にプット・スプレッドを立てた。これは3835 Call売り、3390 Put買い、2860 Put売りの組合せとなっており、3ヶ月後にまた話題になるだろう。その時にもし3390の真上に位置していたら再び3390に吸い込まれやすくなるか。

 テクニカルには明瞭な下落トレンドが続いている。BOEが作った上ヒゲが3735にあり、この話題をもう一度取り上げてブレイクして初めて週足チャートがブル転する。下値では先週の記事で2個目のサポートとしていた週足200SMAの3585にはぴったり寄せて引けており扱いに困る。もし月が変わってガンマショート消滅の勢いで上で始まったなら3735 -3585レンジを意識すればよさそうだが、下に抜けた場合はサポートがなくなってしまう。とはいえポジショニングに加えてシーズナリティまで味方になってくるとなかなか下値を売る気もして来なくなる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。