
先週のS&P 500は再び大きな行ってこいとなった。まず月曜は前の週の雇用統計の慣性で売られ続け、それからは次のマクロイベントであるCPIに向けて買い控え対売り枯れの様相を呈して小陰線が並んだ。先週の記事で触れた「上昇トレンドを台無しにした急落パターンは翌日が小十字、翌々日は少なくとも一時的には続落」パターンを再び示現した形となる。

13日に発表された9月CPIは文句なしにバッドニュースだったのだが、それを受けてS&P 500は大幅に安寄りはしたものの、久々の寄り底となり大幅高で引けた。上がった金利は戻らなかったので株のリスクプレミアムが急速に縮まった形となる。その不一致は翌金曜の高寄り後にニューショートに狙われて指数が再び下落し、一時底打ち感が出ていたチャートは再び中途半端なものになった。これまでの暴落に繋がったCPIも雇用統計も先立って堅調な地合いとなっており期待がどちらかというと上方向に傾いていたからクラッシュしたのであって、今回のように期待がゼロだった場合はヘッジが外れてショートカバーのきっかけになった。

先週の記事では「それまでにラリーしていれば当然CPI発表前日にリスクを落とすのが定石となる。下落していた場合はガチャとなる。よい方に出ても「来月にはガソリン価格が」となりやすいため、やや分が悪いガチャではある」といずれにしても大してオッズがよくないのでCPI前のリスク回避に役に立ったが、結果的には大して分が悪いガチャでもなかった。来月のガソリン価格の議論にもならなかった。今後もCPIガチャに際しては数字自体を見る価値がなく、事前の期待や懸念がリバーサルするだけのイベントになりそうである。ガチャが増えたこともあって24時間以内のオプションに人気が集まっており、それもあってイントラデーの値動きは連日大きなものになっている。



S&P 500企業はいつものように金融を筆頭にQ3の決算期に入りつつある。ボトムアップEPS期待は引続き下降トレンドにあり、それに伴ってフォワードPERはせいぜい15.5と、指数が下がった割には大して下がっていない。金利が上がっていることを考慮するとエクイティ・リスクプレミアムは引続き付いていない。利上げに伴って進んだ米ドル高はEPSにネガティブに働くが、どこまで織り込まれているか。

NAAIMは跳ねた後に再び総悲観に沈んだ。先週の記事では「8月のラリー時ほどはオッズが悪くなっていないものの、極端な悲観ではなく一度色気を出してしまっており、その分ポジションの整理に時間がかかりそう」としていたが、一度上下を大きくやったのがその帰趨だったとすれば、再び総悲観に近付いた後は再び売りづらくなるだろう。

シーズナリティは月から見ても中間選挙アノマリーから見ても有利になりつつある。マクロ的にはイギリスはPivotしつつあり、中国はPivotしそうにない。あのCPIで結局下げて上げて下げてフラットに終わっているということはマクロはあまり重要ではなくなってきそうである。
テクニカルにはまずイントラデーの値動きの大きさを鎮める必要があるだろう。金利が低下に転じない限りファンダメンタルズでもバリュエーションでもサポートが乏しく裁量投資家が慎重姿勢を変更する理由がない中、上昇を当てるのはシステマティック勢のショートカバーを当てることに他ならないため、たとえ方向が上げでも3%の値動きはVolコントロールの再出動を阻止したという意味で筋は悪かった。ロングが昔のショートのような感覚になっており、というのも若干エントリーポイントを考察しやすく、当たったら素早く大きく稼げて、それだけ当たる日を外すと痛く、また放置するとお金が減っていくゲームになっているからだ。今のタイミングで底を当てるのは昨年天井を当てるようなものであり、転換が遠くないのは分かっているものの何もなければ負けが込んでくる。かと言って「上がり始めてから追いかけても遅くない」という場味を感じていない人間の意見に従ってしまうと、ショートカバーの後という最もオッズが悪いタイミングを、まるで人の排泄物を食べるように掴みに行くことになる。
一方システマティック勢のショートは既に深く、たとえ指標自体が裏目に出てもこれ以上ショートを積み増すことが難しくショートカバー需要の方が勝つことが分かっているため、しばらくレンジが続きそうである。イントラデーの値動きの結果、3490の大陽線のスタートはサポートとなる一方、上では3710がレジスタンスとなるが、どちらも目立つだけでブレイクしてもチャートのトレンドを変えるようなものではない。基本的に3500 -3700のレンジ継続を想定しているが、このレンジ内での滞空時間が伸びてリアライズドVolが下がってくれば来週以降はシーズナリティを借りて上昇しやすくなるだろう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。