SPX Daily
 先週のS&P 500は本ブログの見立て通り低調であった。「上値についてはやや劣後しているナスダックの方が分かりやすく、11200がレジスタンスとなる。先週の余韻を借りてここを攻略できれば綺麗な日足リバース・ヘッドアンドショルダーとなり、10750をサポートにかなり上値余地が広がってくる一方、もしチャレンジに失敗して手前から反落した場合はかなり弱いチャートとなる」「現状の11100と11200の間は1%幅しかない割りには重要な分水嶺になっており、11200を突破するまでは一旦ポジションを整理した方が安心できる水準である」としていたが、現にS&P 500よりもナスダックの方が遥かに解読しやすかった。火曜の寄付きで11150まで付けた後に寄り天となり11200から離れた。まさに11100と11200のわずか1%幅の分水嶺に押し戻され、「ヘッドアンドショルダーの出来損ない」パターンになったのである。
Bloomberg SP500 Fed Dates
Bloomberg SP500 Fed Dates 2022
 FOMCは声明文がややハト的で記者会見がタカ的と、9月会合と全く同じイントラデー・チャートとなった。年前半のFOMCデーはとにかく会合通過を受けてヘッジ外しのラリー→翌日続落、のパターンが続いていたが、9月以降それがやや加速してFOMCデー中に下落が再開するようになった。「とにかく市場が先にpivotをフルに織り込んだ状態でFOMCに突入すると何が出て来ようとオッズは悪くなりそうである。「最後の75bp」が確認されればインパクトは大きいものの、9月FOMCから11月にかけて遅行指標である物価指標に何か具体的な進展が見られたわけではない。そういう意味では新たに政策サポートが入らない限り、例えば3.9%と3900の組合せは割高感が強い」「エクイティ・リスクプレミアムの観点からするとバリュエーションが壊れていると言ってもいい」とイベントガチャに後ろ向きであった。ガチャが外れと出た後、例によって堅調地合いを台無しにした大陰線の後のパターン通り、翌日は小十字が続いた。その場合「買えるのは早くて3日目」というのがこれまでのパターンだったが、3日目にあたる金曜はすっかりリスクオンで始まった。もっとも場中はGAFAMがあまりにも弱く一時下値を掘ったが、安値を更新したのはナスダックだけであり、S&P 500は長い日足下ヒゲ陽線となっている。
GS US stock skew
GS Skew and tail days
 スキューが著しくプット割安に傾いているのは今に始まったことではない。相場の地合い自体は弱く、実績のテールリスクも著しくダウンサイドに傾いているにもかかわらず、である。スキュー自体にはインプリケーションもないものの、今のポジショニングの説明にはなる。つまり機関投資家のポジションがあまりにも一斉に綺麗になっているため、今更ヘッジすべき下方リスクは限定的であり、むしろ上方リスクの方に脆弱になっている。この構図はたとえ彼らのビューが一斉に正しかったとしても変わらない。FOMCが顕著であったが年前半はイベントを通過すると内容によらずまずはヘッジが剥落するのでその日は上昇しやすく、FOMC声明文発表の瞬間に買い戻すのが既に機械化されている。一方であまりにもポジションが軽いためイベント前の上方ヘッジも増えて来ており、それもFOMC後に用済みになるため反落に繋がりやすくなったとする観測もある。
DB discretionary vs systematic positioning
 久々に流れて来たDBポジショニングは投資家によって分化が進んできた。システマティック勢が依然マッシブショートが続く一方、裁量投資家はショートを維持できず小まめに買い戻している。これはNAAIMとも一致する。
GS US Multi asset funds allocation
 マルチアセットは株を売ってキャッシュか債券に資金を移している最中である。
MS Retail flows
 MSのリテールフローは売りが加速している。GAFAMの総崩れはとどめとなりそうである。
BofA reaction for misses
GS consensus EPS revisions
 EPSリビジョンは下方修正が過去対比でもかなり急ピッチに進んでいる。ただそれだけ決算で荒れる場面は減っており、GAFAMが揃って滑ってもセクターローテーションで済んでおり指数はあくまでも指数自体でマクロ博打をやっている。
NAAIM
 NAAIMはFOMCが滑ったにもかかわらず依然そこそこ楽観的であり、依然押し目買いに安心感を与えない。
VIX MOVE
 VIXは事態をかなりややこしくしている。FOMCは口先はハウキッシュだったものの、指数の売りを招いたもののMOVEも剥落しておりそれがVIXにも伝播した。VIXだけ見ているとこの上なく楽観的に見えるのだが、その動きは水準には全く伝播しなかった。金融政策の不確実性の剥落が遅れて株式指数に波及するか、それともただVIXにネガティブ・リスクプレミアムが付いているという解釈になるか。これは今後の展開を分ける問いと思っており、予断にとらわれないようにしたい。金利そのものが下がらないのに金利ボラティリティだけが伝播するのもおかしな話なので、引続き長期金利とLQDにヒントを求めることになるか。
Barclays Mid term Election
 火曜(日本時間水曜)には中間選挙が控えている。ここまで注目度が低く、また不確実性も低いと思われている。歴史的には中間選挙を通過するとリスクオンになりやすかったが果たして。木曜にはCPIが再び控えている。前回は中身がもうだめだと思われたところから大反発した。VIXが既に十分に低下した状態で指数が上から経済指標で更に上に飛ぶとは引続き想像しづらいため、引続き直前に堅調だった場合はリスクを落としておくことが定石となるか。直前に上がっていなければ、荒れるとまた振り出しに戻るがしばらく経ってクラッシュしないようであればヘッジ外しフローにも期待できるか。

 先週大活躍したテクニカルはやや煮え切らない形になっている。週足では3800サポートがブレイクされたため3910はレジスタンスとなる。代わりに3700は日足サポートとなる。ナスダックのチャートは「ヘッドアンドショルダーの出来損ない」でかなり弱く、底割れしても全く不思議がない形となっている。一方S&P 500は下げ3日パターンを崩されており、これまでのようにただ高値から下落する一方のチャートにもあまり見えない。目下は3700 -3910のレンジをどちらに抜けるかに注目である。もしレンジ内で指標に振り回されず、一週間かけてリアライズドVolが下がってVIXに揃えてきたら買いやすくなりそうである。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。