SPX Daily 
 先週のS&P 500は棒上げになった。先週の記事はやや歯切れが悪いものとなっており、3700 -3910レンジを挙げていたが、週前半は3850まで上昇した後に中間選挙を受けて一旦3750まで反落し、そこからCPIを受けて更に上に飛び、そのままレンジを上に抜けた。3700 -3910レンジは意識されていたのは間違いないが、結果的に上に抜けた形となる。
Bloomberg most shorted basket 
 指標後の上げはショートカバーを誘発し、ナスダック100はその後の2日間で2008年以来の幅となる9.4%上昇となった。
DB Call Volume
Call Volume
 CPIはサプライズで弱かったというより、減速するのはよほど雰囲気で予想している人を除いてみなある程度は予想していて、ただ先月当てが外れたショックがあまりにも大きかったため、予想していてもアグレッシブなポジションを取れなかった、或いは取るのを止められていた市場参加者の方が多かっただろう。従って大してサプライズがなかったにもかかわらず、本来取れるはずだったリスクを取れなかった悔しさが爆発したわけである。木、金の2日間は相場に付いて行くための自棄っぱちのコール買いが目立った。先週の記事では「直前に堅調だった場合はリスクを落としておくことが定石となるか。直前に上がっていなければ、荒れるとまた振り出しに戻るがしばらく経ってクラッシュしないようであればヘッジ外しフローにも期待できるか」としていたが、前日が中間選挙と仮想通貨のクラッシュで先に下がっていたためイベント回避のリスク落としが自明というわけでもなく、恐らく少しだけ綺麗になったポジショニングでCPIに突入した形となった。
GS Concensus revisions 
Factset price change after EPS surprise
Factset price change after EPS surprise historical
Earnings Whispers 
 米企業の決算発表は終盤に近付いている。神経質なシーズンであり、どちら側のサプライズにも株価は大きく反応したが、期待も低下していたためどちらかというとアップサイドサプライズの方が目立った。今週残っているのはホームデポ、ウォルマートと景気を占ったり連想するのに使われそうな銘柄群が中心となる。経済指標も小売売上高や連銀サーベイなど同系統のものが控えている。
Factset SP500 forward PER
GS Equity Risk Premium ERP
GS Relative valuation of GAFAM
 バリュエーションは反発を経て中途半端な水準になっている。滑った主役ともなったGAFAMの中ではGOOGL, AMZNが過去対比で割安、MSFT, AAPLが割高となっている。そして金利上昇を経て全体的に金利対比の割安さは見られず、エクイティ・リスクプレミアムは異例なまでの低さが続く。
JPM Retail order
 機関投資家のショートカバーに対してリテールはベアマーケットラリーと見て利食いをぶつけた。ショートカバーなので、株が単一の経済指標を楽観視しすぎなどというコメントは市場の需給構造を知らない証である。FOMCの後の浅ましい即興口先介入に釣られて下を叩いた市場参加者がショートカバーの燃料になったわけである。まだprematureなどと余計なことを言わずに黙ってFOMCを通過した方が株もCPI後ここまでショートカバーをやらなかったのかもしれない。
LQD HYG
 先週の記事では長期金利とLQDにヒントを求めていたが、MOVEに続いて長期金利の水準まで下がって来るとLQDにしろHYGにしろ、株式指数の上げを少なくとも否定しない程度の上げを見せている。
NAAIM
 NAAIMは依然中途半端な位置にあり、上げに付いて行くのはあくまでも一層のショートカバー誘発を狙う確信犯に限られる。
MS Rate Vol and PER
 テクニカルには一気に好転した。先週はMOVE低下とVIX低下をビッグイベントとして認識しつつもどう捉えるかで悩んでいたのだが、結局「FOMCでMOVE低下→VIX低下→プラスCPIの金利低下で株高」と伝播する流れとなった。ナスダックは底割れしそうなチャートから一気に11200を突破し、「リバース・ヘッドアンドショルダーの出来損ない」からリバース・ヘッドアンドショルダーに転換した。10250が新たにサポートとなる。週後半はショートカバーであり、テックが爆騰する横でディフェンシブから資金が抜けたS&P 500はナスダックよりは上げ方がマイルドであった。S&P 500について「下げ3日パターンを崩されており、これまでのようにただ高値から下落する一方のチャートにもあまり見えない」と感じた違和感は重要だった。週足レジスタンスの3900がブレイクされており、代わりに3740が週足サポートとなる。CPIを受けて近い将来に再び急落して下値を更新するリスクは急速に剥落した。しかし上げも急速で雑なものだったのでS&P 500の3740にしろ、ナスダックの10250にしろ、サポートは軒並み遠くなっており、急いでレバレッジを上げて付いて行ったりすると調整でのドローダウンがまたアホらしく感じてしまう。指標や決算を使って週足陽線の上半分の範囲内でどこまで押してくれるか。一方、明らかにアップサイドがペインなチャートにはなっており、またVIXが異様に低く抑えられており、更にEPSを圧迫するとされてきたドル高もすっかり反転しているため、値頃感ショートが危険であることだけは間違いない。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。