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PBOC引締め(1)人民元相場の安定化 : 金利とセンチメントから資産価格を考えるブログ

中国の米国債購入は再び増加している 我々は、中国が資金流出に苦しんでおり、外貨準備高を減らしながら(米国債を取り崩しながら)ドル売り人民元買い介入を続けているというイメージを長らく持ち続けてきた。今年年初から外貨準備高が3兆ドルをぎりぎり割らないところで

PBOC引締め(2) チャイナショックを振り返る : 金利とセンチメントから資産価格を考えるブログ

以前の記事 PBOC引締め(1) 人民元相場 現状確認の次に、2015年8月のチャイナショックから始まる人民元戦争がなぜ大方の予想に反して、人民元の大幅下落で終わらなかったのかについて振り返ろうと思う。 チャイナショックのきっかけ 財新製造業PMI - tradingeconomics.com

 中国のCPIは米国と同様落ち着いているが、チャイナショック以降不動産の高騰が著しい。また李克強指数が一時12%まで伸びたことが、重厚長大産業の過熱を示唆している。2015年のチャイナショック以降、民間経済で積み上がってきたレバレッジの解消は景気対策と比べて優先順位が低かったが、景気の過熱と不動産の高騰で当局は引き締めを始めても問題ないと判断したようだ。金利カーブの傾きが金融の引き締め度を表すとすると、6月に一時1 -10年が逆転した中国は世界の引き締め開始レースで米国よりも先に走っていることになる。世界的な利上げ局面への転換でどこか低金利に慣れていた経済体がコケるのを警戒しているとすれば真っ先にチェックすべきは中国である。
China yield curve
china 1y
 

プルーデンス引締め

 興味深いことに中央銀行は今回の金利上昇の主役ではない。確かに3月にFedが利上げを決めた数時間後に中国人民銀行は中期貸出制度(MLF, Medium-term Lending Facility, 中期借贷便利、要は中期の中銀貸出)金利を地味に引き上げているが、高々10bpである。6月利上げの後に至っては追随せず据え置いたままである。にもかかわらず3ヶ月SHIBORは3月対比で実に50bp上昇した。この金利上昇を招いたのは中央銀行ではなく中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の規制を用いた締め付けである。具体的に規制がどう金利上昇につながったかは以下の大和総研のレポートに詳しい。

大和総研グループ / 中国:「脱実向虚」に対する対策を強化

中国において、良好な資金調達環境を背景に、実体経済だけでなく、非実体経済にも多くの資金が流入してきた。

 大雑把にまとめると、低金利時代では中小銀行がインターバンク(コール、レポ、譲渡性預金証書)で資金を調達し、それを他行の債券やリスクの高い理財商品などに投資してキャリーを稼いでいた。インターバンクでレバレッジが積み上がると金融システムを脆弱にするため、規制当局はレバレッジ解消のためにインターバンク取引そのものを萎縮させようとしている。

 そのためのツールがMPA(Macroprudential Assessment、マクロプルデンシャル評価)ストレステストである。これは全銀行の「レバレッジの高さや資産・負債の構成、流動性の状況に応じて、銀行の健全性をスコアリング管理するシステム」であり、毎四半期末のスナップショットを評価する。結果は非公表だが、罰則として法定準備金付利の引下げや中銀貸出し(SLF)金利の引上げが用意されている極めて厳しいものである。3月末のテスト前には銀行が預金のかき集めと資産処分に奔走し、短期金利の上昇と上海株の調整を招いたが、6月末のテスト前では前回の反省を踏まえて中央銀行が注意深く流動性を提供したため無難に乗り切った。しかし、いずれにしても日本と同じく中国の銀行業界は規制当局からの厳しい攻撃に常に警戒せねばならなくなった。

なぜレバレッジが下がらないのか

 インターバンクの持ち合いそのものから金利が生まれるわけではない。キャリー源の一つは期間リスク。インターバンクで短期で資金を調達しながら利回りの高い長期国債や地方債を買って金利をもらう。相場が動かない限り、大きなバランスシートを使えば使うほど長短金利差をたくさんもらえる。日本でもレポでファンディングしながら1兆を超える長期債・超長期債に投資する信用金庫があったりする。短期金利の上昇によるベアフラットニングでこの取引はうまみは急激に縮小している。

 もう一つは結局どこかで6%や8%を払っても資金を必要としている企業があり、その金利を様々な銀行が共有している可能性がある。経済全体が6%成長しているため6%でもお金を借りたい企業はいるだろう。不動産が値上がりするという確信が持てるならもっと払って投資するかもしれない。そこに銀行Aがインターバンクで資金を調達して貸す。銀行Aは高い金利で貸出できたため、資金調達でも若干鷹揚に払う。直接企業に貸せるほど山っ気のない銀行Bがインターバンクで資金調達して銀行Aにインターバンクで貸す。インターバンクの借り先はさらに堅実な銀行Cである。A, B, Cがそれぞれ少しずつ中抜きし、不動産投資への貸出がいつの間に銀行間貸出に化けている。

PMI
  結局、6%成長が続いている限り、6%の金利を払っても儲かる主体があるため、インターバンク金利との差でレバレッジが積み上がる余地はなくならない。2015年と2016年は不動産が暴騰したため、大きなバランスシートを維持できた不動産企業が勝ち組となった。本当にレバレッジを解消させたいなら短期金利をGDP成長率並みの6%代に引き上げなければならない。CPIが低迷していることもあって、金利の代わりに規制がレバレッジ解消強制のツールとなった。だが、どのようなツールを用いた結果であれ、短期金利の上昇は実質金利の上昇であり、景気に負の影響を与える。その結果、2017年前半の景況感は低迷し、直近になって輸出に引っ張られて改善するまで中国は2017年になっても製造業PMIが50割れした珍しい国となった。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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