SPX technical
 明けましておめでとうございます。年明けのS&P 500は強いJOLTSやADPを受けてしばらくラージテックで下値を叩き続けていたが、金曜になって弱い雇用統計弱いISMサービス業景況感指数で金利が一段と低下するにつれて大幅に反発した。年末の記事では「週足は陽線にはならなかったものの2週連続で下ヒゲを伸ばしており、下を叩くといいことがなかった。この流れが年が明けても継続するなら3800が再びサポートとなる。代わりにショートカバーで跳ねたところは再び売りやすくなった。レジスタンスは週足の4100がガチガチだが遠くて役に立たない。日足では既に一度ワークしている3900近辺の50SMAを再び意識するか」としていたが、実際3800 -3900のレンジを意識していればよかった。3800サポートは年が明けてもガチガチであり一週間だけでも何度も跳ね返っている。一方上値も重く、3800台後半まで跳ねたところは毎朝タクティカルな売り場になった。金曜大幅に反発した場面でさえ、3900にタッチしたところで止まっている。
US ISM Service and recessions
 ファンダメンタルズ的には時給の伸びの鈍化は本ブログでも想定していなかったわけではないが、やや出来すぎ感も漂う。ISM非製造業の急減速も同様である。過去では非製造業景況感は製造業対比でやや遅行しており、これが50を割り込むのは常にリセッション最中か後であった。だとすれば今回のISM非製造業の減速はほぼ確実なリセッションを意味するものであり、それをBad news is good newsと捉えるのは安直すぎるのではないかとはまず思うだろう。(遅行とは言ってもどれくらい遅行するかを当てるのは難しく、また常にサービス業牽引でも景気が持ち直せるという取り上げ方をされてきたので、一般的に非製造業景況感は製造業から独立している印象が強く、従ってISM非製造業を当てろなんていうのはどだい無理な話であり、他の人もそうなのでみんな数字が出た後に見て動く。そして50以上ならたとえ変動幅が大きくてもやはり取り上げづらく、50という境を超えてようやく非連続的に取り上げられるというわけである)

 一方、経済指標ガチャの構造については、昨年見てきたように物価指標が単月の変動ではなく、「2023年中の3%割れが前提であり、そこに至るパスを見渡せるかどうかを取引している」という話を思い出そう。今回の金融引締めも満遍なく効けば理論的にはソフトランディングできるわけで、その中にあっていわば外れて動かなくなった歯車だったのがサービス業・雇用周り、というのが全体像だった中で、金曜に壊れたと全員が思っていた歯車が唐突に再び動き出して、金融引締めが満遍なく効くパスを急に見渡せるようになったとすれば、その非連続的な衝撃は今回の指標でも連続的にしか変動しないリセッション懸念の比ではない。ただやはり出来すぎ感は否めないので、歯車が嵌まった状態に始点を置くと、例えば米金利が一段と低下して3.0%割れにでも向かわない限り、指数のアップサイドはやはり限られて来るだろう。

 今年のマクロ・コンセンサスは昨年がマクロの年で注目度が上がっていたということもあり、一気に取り組みづらくなっている。中国リオープンはもうやった。日銀の次なる政策修正を見据えた円高はもうやった。リセッション懸念はもうやった。年前半株安後半反発ももうやった、というわけである。あれだけ2023年のアウトルックを勉強してもどれも一週間で賞味期限が切れてしまい、改めて自分で道を切り開いていかねばならなくなったのである。
JPM Retail single stocks flow by sector
Jefferies FANNGM weight
 JPMクオンツの統計によると年末年初にかけて個人投資家のテック個別株の投げが激化している。個人が投げたからと言ってそれを逆指標扱いして直ちにセリング・クライマックスで底打ちと断言するつもりはないが、直近の大型テックの明らかな弱さの犯人が分かると少し恐怖は薄れるというものである。
GS 1m Sector flows
 一方GSによるとETFはヘルスケアとテックが流入超、流出はエネルギーやREITに集中している。
Factset forward PER and EPS
Factset sector PER
TRowePrice EPS growth estimates
 相変わらずフォワードEPSは緩やかな下方調整が続く。「これは米金利も同じくらい素早く低下に転じないと指数が上がりづらいことを意味する」としていたが、先週一週間で米金利は大きく低下した。バリュエーションはそれでも金利が高いことを考慮すると大して割安ではない。
GS ERP yoy change
 エクイティ・リスクプレミアムは景況感の悪さにもかかわらず大幅に低下したままであり、これが買うにしてもタクティカルなものに割り切りたい理由である。
GS EPS revision sentiment
 リビジョンは2020年以来のネガティブ域が続くものの、限界的には低下が減速している。
NAAIM
 NAAIMは金曜の反発を見る前だからでもあるがやや低下している。
LQD
 テクニカルには3800 -3900レンジが続いている。週足は2本の下ヒゲ陰線を経てようやく下ヒゲ陽線になったため3795がサポートとなる。日足では年内以来の高値をブレイクして小さなリバース・ヘッドアンドショルダーを形成しており、その観点からも右肩の3800はサポートとなる。これまでは金曜にぶち上がった後は月、火にかけて冷めたりニューショートが入ったりして反落しやすく、そういう意味で金曜の引値水準は必ずしも3800 -3900のレンジを上に抜けたとは判断させてくれるわけではない。しかし3800のあまりものガチガチな硬さが印象に残っており、3800台は基本的に押し目買いが優勢になりそう。年初にお勉強した「下がってから上がる」コンセンサスをスクラップするとすればショートカバーに要警戒か。割安感は全く感じないものの、一応金利も低下してきており債券も株式を支援している。アップサイドは金曜高値をブレイクしてレンジ上抜けを確認できたら次は200SMAの4000が目安になるか。ダウンサイドは3750 -3800ゾーンを下に切ったら再び広がってしまう。
Bloomberg Inflation swap
 日柄は火曜に「中央銀行の独立性」に関するパウエル講演、木曜にCPIが控えている。 CPI自体はもはや滑りようがないものの、裏コンセンサスも低下している可能性があり、先月の CPIガチャで上げたところが二番天井になったことを復習すると、例えば週前半からコールが大々的に買われて CPIを迎えるようでは前日引けでリスクを整理した方がオッズが良くなる。一方で例えば3800 -3900レンジ内で迎えた場合はガチャに参加することにあまりリスクを感じない。

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。


この記事は投資行動を推奨するものではありません。