SPX technical
 先週のS&P 500はほぼ一直線に上昇した。月曜は3900をぶち抜いて一時3950まで付けたものの、そこではMSのマイク・ウィルソンから上昇を追いかける動きを戒めるコメントが出て反落、火曜には再び3800台に下がってしまった。もっとも先週の記事で「3800のあまりものガチガチな硬さが印象に残っており、3800台は基本的に押し目買いが優勢になりそう。年初にお勉強した「下がってから上がる」コンセンサスをスクラップするとすればショートカバーに要警戒か」としていた通り、日足が上ヒゲ陰線になったにもかかわらず3800台は目を瞑って買えばよかった。
GS most short basket
Bloomberg GS Most short basket
GS prime bbook US equities weekly short
 現に先々週からARKKやGSショートバスケットのショートカバーが目立っている。ショートカバーは明らかに先週まで続き、連日下ヒゲ陽線が続いた。特に木曜にCPIが発表されるのを前に水曜引けまでにショートカバーは極まった。水曜は指数とVIXが(限界的にだが)同時に上昇した。そうなると先週の記事述べたように「CPI自体はもはや滑りようがないものの、裏コンセンサスも低下している可能性があり、先月の CPIガチャで上げたところが二番天井になったことを復習すると、例えば週前半からコールが大々的に買われて CPIを迎えるようでは前日引けでリスクを整理した方がオッズが良くなる」としていた通り、CPI自体は滑らなかったにもかかわらず上には飛ばず、木曜のイントラデーはむしろ弱かった。債券の方も同様にロングを利食う動きが一時優勢となり、NY午後になって改めて債券とS&P 500が双方買い直された。金曜は金利が反転上昇したものの、S&P 500は気にせず伸び続けた。上値余地については先週の記事で「アップサイドは金曜高値をブレイクしてレンジ上抜けを確認できたら次は200SMAの4000が目安になるか」としていたが、実際には3999で引けピンとなった。ナスダックは久々の6日連騰となり、しかも1日2%、3%の上昇はなく、イントラデーの値幅は抑制されている。
DB Consolidated Equity Positioning
 DBの統合ポジショニングはマイナス域でやや持ち直した状態である。CTAのエクスポージャーは一時かなりのプラスに振れており、本ブログも一時それを「初めてすっきり下げやすくなったか」として解釈していたのだが、異様な硬さを見せた3800を叩いているうちにフリップされたようで、ロングが再び減っている。
GS CTA Estimates
 GSのCTAポジショニング推定も12月中に大きくロングを落としたことになっており、月後半にかけては指数が上がればショートカバー、下げてもフラットという傾きになっている。
Reuter fund flows
 Refinitiv Lipperによるとグローバル株式へのフローは久々に流入に転じている
GS Retail single stock flows
 一方、前回の記事でも取り上げたように個人の個別株売却は進んでおり、GSは2019年から2021年にかけて購入したS&P 500個別株の全額を2022年に売却したとしている。ナスダック100個別株に限るとその間に購入した分の1.5倍も売却している。
Factset SP500 PER and EPS estimates
DB EPS growth
Bloomberg Citi US Revision Index - コピー
Bloomberg Nasdaq forward PER - コピー
 直近のラリーでバリュエーションはややストレッチした。EPSコンセンサスは下がり続けた後にやや横ばいになっており、リビジョンインデックスは12月にガツンと下がった後にやや引下げの勢いが鈍っている。米銀を皮切りに決算シーズンは始まっている。確かに米金利も低下したがS&P 500ほどではなく、エクイティ・リスクプレミアムが圧縮されたまま決算シーズンを迎えるのはやや気が引けて来る。もっとも決算シーズンが終われば自社株買いが再開される(1/27近辺)ので一時的な神経質さではあるので下を叩くほどでもない。
Price bottom and EPS bottom
 もっとも歴史的には株価のボトムはEPSの6~9ヶ月先行するとされているが、それが果たして「今」なのか。
NAAIM
 NAAIMはさすがにやや上向いているが、一直線にラリーした指数には付いていけていない。こちらは買いにやや安心感を与える。
VIX
 CPIで不確実性が剥落したのをきっかけに、VIXは2022年の巨大な水平レンジを下に抜けかけている。VVIXは逆行高となっており、これはVIXのレンジ下抜けを意識したものである。
LQD
 金利低下に伴いLQDも指数のラリーを正当化しているが、金曜に限れば金利低下も止んでいる。
Earnings whispers
 決算スケジュールは米銀の後半勢が続く。ボラティリティを産みそうなのは木曜に控えているNFLXであり、すぐにOp Exが続く。先月はOp exも月末の3835ピンのエクスパイアも通過しても大して変わらなかった。ディーラーのガンマポジションは今週中に誰かが解説するだろうが今のところ分からない。1ヶ月で上昇してきたため推測だけすると何となく顧客のコール買いの方が多そうな気がするが、果たして。

 テクニカルには強気トレンドが続く。週足は2本目の下ヒゲ陽線となった。3800は相変わらずガチガチなサポートであるが、3875までサポートは上がって来る。上値余地は先週取り上げていた200SMAが3980まで低下しており、CPI後は少しずつ攻略しているとも、3980に巻き付いているとも言える。次のレジスタンスは週足50SMAの4050から12月高値の4100にかけての区間になる。4100近辺は9月のコアインフレ化で台無しにされる前の高値でもあり、12月の2度の4100チャレンジは巨大な週足リバース・ヘッドアンドショルダーの出来損ないを残している形になっているため、万が一4100を再びブレイクできればかなり長期的にもチャートが良くなる。金曜は金利上昇を無視してS&P 500だけが上がっているので週前半は調整しやすそうに見えるし、過去もOp ex直前の週が最もリターンが悪かったので多少の押しがあっても、3800~3875が守られる限り驚くべきではない。逆にもしOp ex前のコール売りの踏み上げで金利を無視してショートカバーが進んだ場合はタイミング的にはOp exが当面の目安となるか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。