

先週のS&P 500は大幅下落となった。先週の記事では「バリュエーションとしては話にならない」「上値は4100台が徐々に重くなってくるだろう。少なくとも上下のリスクバランスがここまで悪化するとレバレッジは残すべきではない」「木曜以降の買戻しの鈍さはシステマティック勢が既に売りに転じ始めたことを示唆するか。転じてなくても先週の記事で触れたようにシーズナリティ的にもやや不利な時間帯に差し掛かる中、例えば4160手前でロングで何かを狙う意味は薄いように思える」と高値追いには否定的であったが、高値追いどころか窓を開けて落下している。22日のFOMCは(インフレ―ショナリーな指標が出る前なので)当然目立ったホーキッシュな記述もなく無事通過となっているが、指数は無事通過を祝うほどの値動きにならなかった。「議事要旨で50bp説の登場が限定的であったなら火消しになるが、FOMC後の指標が強いのが問題なので完全な火消しにはなりづらい」としていた通りである。或いは休み明けの火曜にS&P 500が2%とそれなりに値幅を出して下落したことから、本ブログが主張してきた「2%以上下落の翌日は小十字、翌々日は少なくとも一時的には続落する」パターンがFOMCに勝ったのかもしれない。木曜はNVDAの好決算で高寄りしたものの寄り天となり、そこからじり下げで一度底割れしたものの一度買い直された。金曜はPCEがかなりホットで出て来たため大幅に安寄りしたが、そこから下値を伸ばすには至っておらず200SMAの3940で跳ね返されている。先週の記事の時点で3900台入りは十分に想定していたが、その上で「50SMAと200SMAがゴールデンクロスしている3900台で買いにぶつかりやすいか」「3900台まで調整した場合も――近いうちに3900台にも戻って来ないと見る市場参加者は少数でありサプライズは薄いはずだ――慌てて付いて行くほどではない」としていたのだが、実際3900台は下ヒゲを連発しており、売りはかなり上で作っていないと安心感がなかった。


レンジ気味だった先週までと違ってがっつり下値を伸ばしたのは「2%を超える大幅な下落」と「MOVE発の不確実性増加」により、「国債との逆相関」が危うくなりダブル安の様相を呈したためである。ショートカバーが続く間は想定よりも金利上昇にかなり力強く逆らえたものの、結局債券へのサヤ寄せの重力に勝てなかった形となる。


CTAポジショニングはGS版でもトロント・ドミニオン版でもかなりの勢いで買いから売りにフリップした。これは先週GSが99%パーセンタイルと言っていた時から容易に想像できた。

ポジションが落ちているのはDBの統合ポジショニングからも観測できる。

一方直近の高値でミューチュアルファンドはややキャッシュを減らしたようである。ノーリセッション・FOMOか。



ずっと取り上げてきたことの繰り返しとなるが2023年に入って目立っているのは個人からの資金流入である。2月に入ってから値動きへのインパクトが目立つ0DTEについてはバンカメのレポートの断片が流れてきた。本ブログは少し前からドタ勘で時間切れまで遠いNY時間午前中の方が0DTEを買いやすいとしてきたが、実際定量的にも(大した差ではないが)他のオプションと違って0DTEは朝ask sideで付きやすく(買われやすく)、引けに近付くにつれてbid sideで付きやすい(売られやすい)ことが判明している。リスクプレミアムは引けに近付くにつれて上がっているのは絶対値が安くなったケースが多いからだろう。スマイルは他のオプションはヘッジに使われやすいためプット割高だが、0DTEは相対的にコールが人気である。これまでいくつかの営業日で安寄り後午前はコール買い→前日比フラット手前で息切れ→引け前にぶん投げられる展開が見られたが、先週に限ってはリズムが乱れ始めている。木曜は高寄りからのじり下げで底が抜けたように見えた後に午後に強引に買い上げられた。もっともこれも朝の水準には絶妙に届かず、引けた(コールが消滅した)途端に再び反落している。

先物の流動性は2022年の水準対比で回復気味である。鶏と卵ではあるが、リアライズドVolも大して上昇しておらず、火曜は▲2%ちょうどを付けたものの、例えばホットなPCEでも1日2%以上の値動きを出すのが難しくなっている。



バリュエーションは指数の下落と共に少し縮んだものの大半は金利上昇によるものである。フォワードEPSは依然反発していない。実績が好調なインダストリアルではブルストーリーも聞かれるものの、時価総額が大きいテックは「明らかに投機的なコール買いが持ち上げた指数の高値追いを後追いでChatGPTバブルなどのファンダメンタルズ・ストーリーで正当化するのはイケてない行為であるだけでなく、ワークもしていない」。

NAAIMはさすがにかなり落ち込んできた。従って先週や先々週の高値追いよりはアホらしくなくなっているが、絶対値はまだ低くはない。

シーズナリティは今のところテクニカルの次くらいに綺麗にワークしている。シーズナリティ通りが続くならば3月前半~中旬に底を打つことになるか。


HYGはかなりの規模の資金流出に見舞われているが、短期金利の上昇にもかかわらず直近はやや底堅く解釈に迷う。長期金利が4%を超えたら――二度と超えないと思っていたのだが――債券の弱さの方が目立ちそうである。
テクニカルには2本の週足上ヒゲ陰線が強烈に効いた形となっており、変に深く考えたことの全てはヒゲ未満の存在価値であり、ヒゲより劣った切り口だった。ショートカバーで大幅に上昇した後に金利上昇に遅れて付いて行くパターンは8月後半に似ているが、2023年の流動性回復とリアライズドVolの低迷は8月後半~9月のケースほどの激しい下落トレンドにはならなそうと思わせる。とはいえ4200近辺までのラリーの根拠がほとんど消えてしまった現状では当然ブルになれるわけでもなく、レンジが切り下がっていくイメージを持っている。一旦跳ねた日足200SMAの3940はサポートと認定される。週足の4160レジスタンスはもちろん健在だが遠くなっており、直近ではFOMC後高値の4025が軽い日足レジスタンスとなる。従って非常にアグレッシブにタイトに作れば3940 -4025のレンジになる。引続きどこかでイントラデーで2%以上の下落が見られれば2営業日ほど買い控えることになるか。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。