
先週のS&P 500は急落した。週初めではパウエル議長の議会証言では(直近のインフレ再加速を受けてか)利上げペースを加速させる用意があると発言したことが金利発の不確実性増大に繋がった。しかし2日目には3月FOMCの利上げ幅について予断を持っていないとトーンダウンした。既に滅亡した「株価が上がるとパウエルが怒る」伝説は、ここまでお膳立てしてもらっても結局、滅亡したままだったのである。そしてその話もまたどうでもよくなった。パウエル発言でS&P 500が2%は届かなかったものの1%台急落し、気持ちよく売り尽くした翌日に日足が小十字になったのはいつものパターン通りである。

そこで更にSVB銀行の経営懸念が持ち上がり、増資の失敗など2日間にわたって市場参加者にヘッドラインを負わせたところで、金曜NY時間場中にあっさり破綻した。木曜の指数は高寄りした後に一直線に売られ、200SMAの3940と週足下ヒゲの3930を一気にぶち抜いた。金曜は他の地銀株にも一時波及しかけたがさすがに否定されている。金曜は寄り底にも見え、指数は一時プラス域まで浮上したが、結局売り直されている。その過程では底割れしなかった地銀株よりもナスダック等の方が弱く、指数ごとのリスクリダクションっぽい動きに見えた。先週の記事では上値追いに慎重ながらも3930をサポートとしており、パウエル議会証言はそれで乗り切ったのだが、全くカバーしていなかったヘッドラインに粉砕された形となる。

DBポジショニングはこれまで見て来た通り、システマティック勢は淡々とポジションを復元しており、裁量勢は浅いアンダーウェイトを作ったりFOMOで埋めさせらたりしている。

今に始まった動きではないがARKKのショート建玉は急増している。


3月FOMCにおける50bp利上げ説はポシャったと見なして間違いない。それどころか利上げサイクル自体の継続さえ危うくなっている。2年金利は2日間で40bp以上下落した。金利低下そのものは当然緩和効果を持つ。不確実性の増大とどちらが勝つかというと、債券にヒントを求めるとLQDではデュレーションが勝ち、HYGは軟調である。

NAAIMは悲観化していたのがやや持ち直した。楽観化した後に顔面からSVBのニュースを受け止めることになった。

インプライドVolはCPIとFOMCにピークを作っているが、正直ここまで来るとCPIもFOMCも見る意味がない。多少CPIが上振れしたところで利上げ織込みは進まないだろう。日柄で言うと3月下旬からは堅調地合い、17日はOp Exである。日柄だけで言うと週間にわたって下落が続いた場合は金曜に底打ちを期待できるか。
テクニカル。週足は9月に似てきた。すなわち、一旦ショートカバーで山を作った後に調整を始め、一旦底打ちして週足下ヒゲ陽線を作ってさあ二匹目のドジョウを狙おう、という時に底が抜けたパターンである。前回の記事でことさら9月との違いを述べたのは有害であった。もっとも確かにマーケットが薄くはなっておらず、これだけのヘッドラインでも1日2%を超えるドローダウンは木曜だけである。3930サポートがブレイクされ、金曜のヒゲの短い日足上ヒゲ陰線は200SMAあたりで失速しているため3940は日足レジスタンスとなる。変に一度ラリーしたせいで日足チャートは綺麗なヘッドアンドショルダーになっており、右肩の4080もレジスタンスとなる。水準としては3800前半は年末下値が堅かった領域となるが、そこまで試した場合は10月からの上昇サポートラインが割れたと騒ぐ声も出て来るだろう。それでも一応安値の3760にはサポートを置きたい。となると3760 -3940レンジということになるが、今週に限ってはニュースフローに振り回される可能性の方が高く、レンジそのものにこだわっても仕方がない。SVBの救済買収のヘッドラインが流れればリスクオンになりやすく、そういう意味で漫然と長時間ショートを張ると大きく踏み上げられる可能性が残るが、本当にそのヘッドラインが出て跳ねたのを回避した後は売り直してもよい気がするし、ロングはそこで削減することになる。名乗り出てから実際にスポンサーになるまでの距離は長い。この事件を機にシステミックリスクが顕在化するとは思っていないが、一方で金融機関によるリスク落としがしばらく続くことは想定される。その中でひたすら救済で出尽くし待ちというのも精神衛生によくないためロングは相当慎重に構えたいところである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。