
S&P 500は週間を通して安寄りからの反発となった。ヘッドラインの展開は速く、先週の記事の雑なストーリー予想はわずか1日程度で全てやってしまい、週後半は全く違う場所まで話題が移っている。もっとも展開が早かった割りには、先週の記事で目を瞑ってテクニカルのみから導き出された3760 -3940レンジに対して実働域は3809 -3964と、1%弱上方にパラレルに遷移した程度のものになっており、ファンダメンタルズを追い掛けて上を買って下を売る行為と比べた時のテクニカルの優位性は十二分に立証された形となる。上方に遷移したのは、「名乗り出てから実際にスポンサーになるまでの距離は長い」としていた本ブログの予想が外れ、スポンサーが名乗り出なくても税金を使わない(時間をかけて州議会を通さなくて済む)で預金を全額保護する当てが判明したため決断が素早く下されたのと、金利側で(「金利低下そのものは当然緩和効果を持つ」として注目はしていたものの)想定以上の金融緩和が織込まれ始めたためである。
月曜はSVB預金の全額保護のヘッドラインを受けて時間外は堅調だったが、先週の記事で「本当に(SVB救済の)ヘッドラインが出て跳ねたのを回避した後は売り直してもよい気がするし、ロングはそこで削減することになる」としていた通りの展開となり、「次」探しで他の地銀株が売られ始めると一転して下落した。もっとも現物が安寄りしたところからは反発し、月曜の実働域は3809 -3905と、時間外も含めると3760 -3940レンジのやや内側を上げて下げて上げてと一往復した形となる。火曜はもはやどうでもよくなったCPIを通過し、高寄りして更にじり上げして金曜の高値をクリアしたが、3940の200SMAに阻まれ、クリミア沖の米軍ドローン撃墜で一時下げたところで引け執行の押し目買いが大量に入って陽線で引けた。 そうは言っても金融機関の資本増強の必要性が懸念される中、真っ先にサウジ・ナショナルからの資本増強に失敗したらしい(後日そんな試みはなかったことが分かっている)CSの経営危機が唐突に話題になり強いリスクオフに入った。しかしそれでもS&P 500は1日2%以上の下落にはならず、金利債券や為替はマッシブにリスクオフだったものの、S&P 500はむしろ金融セクターを切り離し、早期pivot期待を好感したメガテック主導で反発して下ヒゲ陽線で引けている。結局「雰囲気は一番底より遥かに暗かったのに肝心の値動きは一番底を更新していない」パターンになり、木曜は「次」と目されていたファースト・リパブリック銀行が民間銀行によって救済されるヘッドラインが流れるに至り指数は大幅にラリーした。もっとも金曜になると週末の間によくないヘッドラインが出るのではないかという警戒で上値を更に買い進める動きにはならず、金融セクターを更に切り離しつつもやや下げて終わっている。


一連の銀行救済でFed BSは4ヶ月以上のQTを巻き戻す形で一時的にしろ拡大しており、FedBSを見てパブロフの犬のように指数を売買する流派にとってもラリーは久々に正当化されるものになった。

セクター間の分散はえぐいことになった。震源地の金融がアンダーパフォームしたのは当然として、ディフェンシブも大して上がらず、圧倒的に強固なBSを誇るGAFAMへの逃避が目立った。あれほど年初には「メガテックのアウトパフォームだけはない」と散々言われてきたのに、まさに口嫌体正直である。「デュレーションはリセッションヘッジにならない」とも散々言われてきたが、「デュレーションどころかメガテック株もまるで債券のようにリセッションヘッジになった」とその人達の耳元で大声で叫びたいところである。指数に限っては(ナスダックの浮上もあって)1日2%の下落は見られず、リアライズドVolも低迷が目立つ。特にCSのヘッドラインが出た水曜については、リーマンモーメントがやってくるという売りの理由が間違いであったためでもあるものの、それでも▲2%を叩けなかったのは週後半のラリーを予感させるものであった。


GSのCTAポジションは少し前は売り場を分かりやすく教えてくれたが、今はやや中途半端な水準にある。

VIXは申し訳程度に上昇しただけであるが、金利を中心に他の市場のマクロ不確実性はかなり高くなっており、株のみが落ち着いている構図になる。株式の堅調さは金利低下にある程度下支えされていることは間違いないが、今のところヘッドラインによるリバウンド狙いはともかく、低Volじり上げレジームに回帰する前提で高値を追い掛けていく行為のオッズがよいとはあまり思われない。


NAAIMはさすがにやや悲観化した。もっと極端に悲観化している見方もあるが、体感ではそこまで素早くポジションを落としているイメージが湧かない。金利の方のインプライドVolや短期金利のリアライズドVolのブローアップは「今年利下げなどあり得ない」と鼻息荒かった勢の頭に砲弾が直撃したため極端に出ている面もあるが、マクロの方でそこそこ損失が散見されているのにすぐに株の方で上値追いする元気が出て来るとはあまり思われない。
22日にFOMCがあるが利上げ説から利下げ説まで飛び交っており、個人的には最も織込み多数派になっている25bp利上げを素直にやればよいと思っているが、不確実性剥落イベントになれるかどうか。25bpでも利上げで出て来ると催促相場になる可能性もあるが、なるかどうかも直前までの雰囲気による。例えばLQDが米金利にキャッチアップしつつも株式の方が低迷するようならFOMCは出尽くしイベントになるだろうし、マクロ環境が悪化していくモメンタムの最中に迎えると催促相場が続きやすいだろう。たとえCSの件が宙に浮いてもリーマン・モーメントはやって来ないので新しいバッドニュースは正直あまり思い付かないが、そうなると催促相場が最も怖い。
テクニカル。3940は時間外も含めて2度チャレンジして失敗した後に3度目の正直になったのだが、抜けたら上に飛びやすくなるようなレジスタンスでもなかったようだ。H&S右肩の4080は引続きレジスタンスとなるが少し遠い。「CSが解体された時のインパクトが大きく見積もられすぎておりリーマン・モーメントは来ない +代わりにnot QEモーメントが来た」の合わせ技は週後半のラリーの背景にはなったものの、4080近辺は当然一度ポジションを落としたくなるので、マクロの不確実性が残る中でそのまま4080手前まで突っ切れるほどの勢いを持てるかどうかの判断が問われる。アウトパフォームが明瞭になったナスダックは既に右肩の11800の近くまで来ているが、週を明けても11800を突破できないようなら反落リスクが高まる。Op Exについては「日柄だけで言うと週間にわたって下落が続いた場合は金曜に底打ちを期待できるか」としていたのだが、全く逆のケースになった感がある。従ってもし逆に金曜高値の11800をブレイクできればナスダックだけは買える、ということになるだろう。反落した場合の押し目買いは反落の勢い次第でもあるし、先週に続いてヘッドラインの自由度が高すぎるので、その時になってみないと分からないところがあり、予断を持って決め打ちするのは非常に難しい。一応日足ベースでは3850近辺、週足ベースでは先週試せなかった3760が残っている。基本的に飛んでくるヘッドラインに轢き殺されないように注意しながら、漫然とリスクを残さないことが大事になってくるが、そうなるとリスクを取る期間が長くなる週末跨ぎはロング・ショートいずれにしても回避したい。実際、銀行関連のヘッドラインは土日に出ることが多いし、金曜の値動きも明らかにそれを警戒した。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。