
先週のS&P 500は棒上げとなった。世間ではリーマン・モーメントへの恐怖が優勢だったようだが、先週の記事では「一週間でこれだけのヘッドラインをこなしても大して動かなかったのはポジティブである。ショートサイドはこれだけの欧州時間発リスクオフ・ヘッドラインを当てても大して利益を挙げられなかったと思われるため、今週以降はショートカバーの方が入りやすいと思われる。金利も正常化するなら株式の上がり方も緩やかにはなると思われるが、下の叩けなさは異常なのでショートは封印となる。FOMCの日の大きな上ヒゲ陰線が非常に目ざわりであるが、木、金と続落リスクを封じており、金曜は下ヒゲ陽線で返せている。S&P 500の3900 -4080が新たなレンジとして意識されそうである。何か新しいイベントで3900を割り込んだらまたイベント消化サイクルとなるが、3900さえも割れないならあまり恐怖を感じる必要はなさそうである」と楽観的だった。むしろ金曜にはレンジ上限の4080がブレイクされている。週前半は想定していた通りの金利の正常化もあって、ナスダックを中心に下押し圧力が強まったが、3900 -4080のレンジを意識できていれば貴重な買い場になっただろう。

リーマン・モーメントの懸念についてはAT1の記事で一蹴しており、「CSのAT1全損に端を発するAT1債ショックの第2波は、ネガティブ・コンベクシティを解放する儀式のようなものである」と結論付けている。この週のためにわざわざ長文を整理したようなものだ。震源地のAT1も反発している。というわけで先週はファンダメンタルズで先に方向性を決め打ちした後、そこに向かって地合いの改善を確認するという、珍しく色んな側面からの観測がシンクロしており、押し目買いで迷う必要もない週だった。

2023年1Qは非常にせわしい期になった。



今回の素早い銀行経営不安で強固なBSを誇るGAFAMへの逃避が目立ったのはこれまで述べた通りであるが、リスクオンが極まるにつれてこの動きもやや反転し、ジャンキーな銘柄群に資金が回帰している。

Fed BSはBTFPで膨張しているためパブロフの犬が元気になっており、本当にBuy the fxxking pivotになっている。QTの効果を遅滞させることしかできないと思っているが、パブロフの犬に逆らうのはストレスが高い。これがnot QEモーメントの威力か。

「S&P 500が下落した日の翌日の平均リターン」は2022年はマイナスで、2020年や2021年のように「下がったら押し目買い」戦略が報われなくなったレジームだったのだが、実は2023年の今までのところは2022年の次にワークしている。これは非常に雑に言えば2023年1Qの株式市場は2022年よりも2020年や2021年に近かったことを示す。もちろんこれはデュレーションによるリセッションヘッジ機能が復活した結果であり、また債券であるGAFAM株のリセッションヘッジ機能が復活した結果でもある。本ブログも何度も「下を叩けない」とドタ勘で感じてきた通りである。


そんな中、GSによると2月から売り続けてきたCTAはマッシブショートとなっている。先週の記事でも「今週以降はショートカバーの方が入りやすいと思われる」とドタ勘で述べていたが、実際もし彼らがショートカバーに入ってきたらそれなりの火力を発揮しそうである。もっとも、CTAのショートカバーはファンダメンタルズには関係ないので、指数が上がったからと言ってチャートに説得されてファンダメンタルズ・ブルにだけはなってはいけない。ここ数ヶ月はだいたい彼らがマッシブロングになった後にフリップで下落に転じているが、今回はセルインメイあたりのタイミングがフリップに当たるか。

逆に今週にわたって上値を抑えていたのはJPMの例の期末ロールのカラーの4065ストライクだった。本ブログなどは4080をレジスタンスとしていたが奇遇であった。次は6/30エクスパイアの4300コール売り、3860プット買い、3260プット売りとなっており、エクスパイアまで4300を突き抜けづらい一方、3860に近付くと3860に吸い込まれやすいか。足してもデルタ・ショートではあるものの、金曜に限ってはとにかく「今」は4065の蓋が取れたのが大きい。ついでに先週の記事の4080のレジスタンスも取れた。どちらでもいいが、とにかくこのあたりを上限目安にしていた市場参加者は多かったはずで、それがJPMコール消滅まで待てなかったショートカバーに巻き込まれた形になる。


NAAIMはさすがにやや改善してきたが、2月のノーランディング騒ぎの時ほどではない。BofAのFMSは相変わらずキャッシュがクラウディッドである。
テクニカル。週足は堂々たる下ヒゲ陽線となった。4080にあるS&P 500の日足ヘッドアンドショルダーの右肩がブレイクされたため首を取りにいく展開となっており、もちろん途中経過は分からないものの、ショートは4200まで覚悟することになる。「週末はリスク落とし」「週末はリスクを落とす人がいるだろうから木曜からリスク落とし、金曜は売り疲れ」「思えば金曜まで予兆もなければさすがに週末に何か起きるのを期待できなそう」というのがここ3回の週末の展開であり、ついに開き直った。週足が週足50SMAに付けた短い下ヒゲの3950はサポートとなるが既に遠い。従って上値追いをした挙句に3950との間のドローダウンで焦るのが最もアホらしく、最良の買い場はあくまでも先週であったことを認めるべきである。ここからは再びCTAのショートカバー狙いくらいしかできない領域に入る。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。