S&P 500は日替わりでそれなりに上下動したが週間を通しては地味なじり高となった。先週の記事では「4070は日足ベースの軽いサポートとなるが、もし週明け4070を割ったら続落リスクが高まる」としていたが月曜早速下落して始まり、かろうじて首の皮一枚で4070は守られたため、これまでのような「初押しの押し目買いをトラップしたまま続落するパターン」から脱することができた。先週に続いて経済指標はディスインフレーショナリーなものが多かったが、さすがに金利がここまで低下すると大体は織り込み済になっており、指標発表の瞬間だけは金利が低下し、その後じわじわと浮き上がってくる時間帯が続いた。水曜については「CPIは注目度が下がっている。議事要旨も控えているが中小銀行危機中の会合なのでホーキッシュイベントにはならないだろう」としていたが、裏の裏をかいて出尽くしのラリーにもならずナスダック中心に売り込まれた。もっとも木曜のPPI後は再び大幅に上昇して前日の高値を取り、金曜は小売売上高を無事に通過して反落と日替わりで動いた。逆に言うとインフレ関連の指標への注目度は下がっているということかもしれない。
週を通してみるとディフェンシブがやや強く、決算シーズン入りした金融は大幅に上昇した。本ブログなどから見ると中小銀行からの資金流出が一段落しているのは明らかであるが、そこに関する警戒だけはまだ根強く、Fed H8が発表されるたびに小さなリリーフラリーとなっているし、本来あまり関係ない巨大銀行の決算への警戒も引当金を中心に根強かった。もともと3月に起きたのは消費者発のショックではないので、巨大銀行の個人部門や小売売上高が特に失速していないのは当たり前であるし先行性はない。
決算期前のS&P 500の1ヶ月リターンは2009年以来の高さとなっている。また、決算日の値動きの織り込みは4.4%としばらくぶりの低さになっている。これは市場参加者がマクロに振り回されすぎて決算に備えていないという解釈もできるし、そもそもの期待が低すぎるしポジションも軽いのでヘッジャーがいないというだけかもしれない。
EPSカーブを見るとどうせ今が底だからという視点もある。2023年も2024年もEPS予想は下がり続けているが、2023年と2024年の間には格差(1年間で大幅回復)があり、時間が経つにつれてフォワードEPSはロールアップしている。決算期のガイダンスでは今期で底を打ったのを確認できるか、回復を後ろ倒しするかが問われる。今のところS&P 500企業の中で30社しか発表していないがビートがだいぶ多い。
CFTCの非商業部門S&P 500先物ポジショニングは中小銀行ショックからショートを最大限に積み増している。レバレッジ勢に限っても数ヶ月ぶりのネットショートとなっている。もちろんアウトライトショートばかりではないが、かなりのポジションが既にヘッジされていることは間違いない。これが3800台からの反発の燃料であったことは間違いなく、また多くの人が既に待ち構えている今後の上昇の唯一のドライバーであると思われる。もし特定のセクターのロング vs指数ショートだとすれば、直近スポットが当たったセクターがパフォームしない代わりに指数も下がらない、というつまらない展開になるか。
金曜は指数も重かったのだが、VIXがクラッシュしたことは注目に値する。これは4月中の決算期ヘッジ需要があまりにもないのを背景とし、MOVEで確認できるマクロ不確実性が剥落したことに触発されたものに見える。不確実性の剥落には金利上昇(正常化)が伴い、従って金曜自体は滑らなかった小売売上高を受けて(週末のポジション解消もあって)ややアンチ・ゴルディロックスになったものの、下値を伸ばすには至らなかった。そしてリアライズドVolも上がらない。
マクロ環境はゴルディロックスに傾きつつある。
NAAIMはおそらく水曜の天井感を受けて低下したが、木曜には踏まれている。一応毎日の気迷いを反映して残っている弱気さの象徴ということか。であれば押したところはまだ買えるはずである。
一方、インサイダーは1月末そして昨年8月末以来の売りに傾いている。こちらは逆張りの傾向が強いだけで必ずしも先行性を持つとは限らないという解釈もできるが、追っかけロングしてドローダウンしたらかなりアホらしい水準まで来ていることを示唆する。ヒストリカルに4100, 4200, 4300あたりは鬼門であり、その手前まで上がった局面で我々は散々、主にその前の下げを回避できなかった勢から「これでブルマーケットに復帰する」というファンダメンタルズ・ブルを聞かされたものだが全てブルシットであった。
テクニカルには引き続きショートカバー待ちなのは変わらない。先々週の記事で取り上げた4200が世の中でもあまりにも意識されており、近づくと売りに押されやすくなっている。不確実性の剥落自体が燃料になっているが、「まだ上がる時の方が「勢い」を必要としているフェーズ」から抜けたとはまだ断言できない。今週は決算とOp Exがあるので先週よりも「勢い」が続きづらいか。一方、下値の叩きづらさも満載であり、指数が1日2%以上下がる日が出ない限り、下がったところは押し目になりそう。4070は引き続きサポートとなる。Op Exまで4150 -4200から少し離れては戻すのを繰り返すことになるか。Op Ex後は蓋が取れるという見方もできるし、VIXとリアライズドVolがもう一週間にわたって低迷が続けばまた機械の買いが炙り出される可能性があるが、4月のシーズナリティの良さが終盤に差し掛かっていることにも留意すべきである。もし決算ムードが急に悪化して4070を下に切ったら再び下値余地が広がりそうである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。