

S&P 500は5週連続の上げとなった。先週の記事は調整に入った場合の対処ばかり考えており、これほどの急速な上げは想定できていなかった。米国CPI、FOMC、ECBが集中した週となったが、インフレや金融政策はもはや主要なテーマでなくなっており、いずれのイベントも「不確実性の剥落を伴う通過」となった。更に、ある程度上値を抑えていた中国景気の失速懸念も中国政府の経済対策期待でやや緩和された。何も中国株が急上昇するのに連れて行ってもらえる必要はなく、悪ささえしなければ十分だったようである。

FOMCは久々の休止となった。もっともそれが直ちに「全て買え」バブルを招かないように口先ではタカ派誘導を行ったが、S&P 500に限っては利食いと合わせても小さな穴(下ヒゲ)を掘っただけであった。CPIが不確実性剥落イベントになったのを見た投資家がややフライング気味になっていたことを考えると一瞬はサプライズになったようであった。これまでFedが利上げを休止するとその後の株式のパフォーマンスはよかった。


久々に流れてきたDB positioningでは、「低Volレジームへの移行」で既に買い始めていたシステマティック勢が買い疲れで静観する中、「定性的に見てもマクロリスクが後退」するのに伴い、それまでリセッション懸念を念仏しながら座っていただけの裁量勢が急速にポジションを拡大し始めている。その結果統合ポジショニングは64パーセンタイルまで急上昇した。

株式ファンドに大きく資金が流入した。非システマティック勢のこれまでのポジショニングの軽さも考えるとまさにFOMOである。


資金が少ない投資家は更にコールの買いに殺到した。それが恐らくマーケットの残ったショートガンマをショートカバーに追い立てたが、Op Exでコールの売りポジションが消滅し、金曜の指数は一転してダラダラ売られるようになった。これは過去の下落相場でOp Exの日の朝に(プットの売りポジションが消滅し)底を打つことが多かったのを鏡に映した形ではないか。


週末に近付くにつれVIXも指数と同じ方向に動き始めたこともコール買いが主役であったことを示唆する。とっくの昔から低Volレジームに移行していたのでVIXが低すぎるとは全く思わないものの、VIXが指数と連動し始めるとシステマティック勢の動き方が気になって来ないでもない。「1日2%以上の下げで様子見へ」と本ブログなどはずっと唱えてきたが、1日2%を超える下げがさっぱりやって来ないので、ポジションがフルロードに近いとはいえシステマティック勢の売り転換を雨乞いするのはやや不利である。もっとも、たとえ急上昇の後でももしゲームストップ株ショックのように市場が不安定化して1日2%以上の下げがもしあったらしばらく様子見が正しいだろう。

フォワードEPSは依然上向きであり、それが続く限りショートは封印となる。

NAAIMは総楽観になってそうなのになぜか反落している。水準は依然高いため過去数週間ほど「ロングに全く懸念がない」わけではないが、値動きの割りには極端な楽観にもなっていない。

一時期ほどではないものの、幹部の株式売却ニュースがちょいちょい出ている通り、インサイダーは依然売りが多い。
テクニカルは何週かファインプレーが続いた後についに置いて行かれてしまった。ほとんど想定していなかったが週明けからすぐ4320をブレイクしたことでテクニカルにも再び青天井になっていた。どちらかというと上昇相場のゴールが近いというイメージを持っていた背景はOp Exが近い、NAAIMの楽観化、自己株買いブラックアウト期間入りが近いというあたりだったが、あまりにも踏まれ方が激しいのでOp Ex当日の朝まで待っても間に合ったし、ゴールまで日柄的には数日でも値幅は大きかった。ここからは勝負が付いた後であり、置いていかれた場合は再びどこまで深い押し目を拾えるか。4450は日足レジスタンスとなる。FOMCの安値4340もサポートになり得るが、割ったらトレンドが転換する類の分水嶺ではない。4300 -4320というオプションポジショニングから天井と目されていた水準では買い戻し需要が再び強まりそうである。月末には先月と同様にリバランス売りが降って来やすいがそのあたりは再びダウンサイドの小さい買い場になるか。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。