SPX technical
 S&P 500は久々に連日の下落となった。まず長期金利が再び4%に載せたのを受けてこれまでの漫然とした上昇が止まり、次にフィッチが米国を格下げしたのをきっかけに激しいリスクオフとなった。格下げの実際の影響は大したことがないと思われるが利食いのきっかけにされた。きっかけが中途半端なネタで、市場のリアクションに変に反論したがる参加者が多い時の方が彼らを巻き込めてしっかり下げやすいのである。それでもこの日は2%も下げなかったが、前回の記事で分水嶺としていた4529をブレイクしており、以降4529より上は重かった。2日経って影響も和らいだと思われて反発しかけたところでは再び戻り売りに押され、金曜は大きめの上ヒゲ陰線となった。
AAPL
 これまでの決算でS&P 500を度々支え、S&P 1とまで言われていたアップルは決算で大滑りしている成長の鈍化に加え自社株買いの発表もなかったことから下値も売りやすかったようである。チャートはテクニカル的にもボラティリティ的にもレジーム・チェンジが明瞭となった。これがS&P 500のリアライズドVolのレジーム・チェンジにも繋がるかどうか。最後にNVDAが控えているくらいで、決算期は大方通過したと見なしてよいだろう。
Bloomberg Longer dated US rates Vol
 Fedの金融政策は今更変わらないので、金利のスティープニングと共に長期金利のボラティリティが選択的に上昇した。今度こそ債券による株式のヘッジ機能が喪われるとも盛り上がったが、金曜の株安にはがっつり金利低下が伴っており、一方で金利低下もゴルディロックス的な株式のラリーに繋がらなかった。
GS CTA positioning
GS gamma position
 GS CTAはもとより8月初旬から売りに回る公算が大きいとされていたが、6月以来このCTA売りは何度も延期されてきたので頼りにしづらかった。しかし一旦トレンドそのものまで下向きになると満タンになっていたCTAの売りから逃がれられる可能性は低下する。1日2%ほどの下げはなかったのでVolコントロールの方は炙り出されたと判断する理由がない。
DB CTA weights
DB sector positioning
 DBの詳細なCTAポジショニングとセクターポジショニングが珍しく流れてきている。1枚目のCTA全体のポジショニングはGS CTAと大して変わらない。
JPM retail option delta
 JPMによると直前までリテールのオプション買い(デルタロング、Vol売り)が目立っていた。
GS mutual fund cash and liquid assets
DB discretionary position
 繰り返して取り上げてきたように投資信託は現金を減らして株式を復元している。経済データが好調なのを受けて「リセッションが来るのでポジションは軽くディフェンシブに」と言ってられなくなったのである。
Bloomberg Fed liquidity vs SPX
 流動性(QT再開)対比でS&P 500が自力で伸びてきたのはこれまで述べてきた通りである。
Factset EPS NTM
 1年後のEPSコンセンサスは依然堅調でありショートを正当化しない。
Bloomberg LQD HYG spread
 クレジットは依然静かであり、フィッチの米国格下げが他のクレジットに広がる様相が全くない。従って債券市場全体に何かが波及したフィッチ・ショックというものは存在せず、株式の調整はあっても現状伸びきっているバリュエーションの調整の範疇にとどまるだろう。従って下値を叩くほどではないと判断される。
NAAIM
 NAAIMは極端なまでの楽観さが果たしてネガティブ・インジケーターになった。もっともそれは事後的にそう見えるだけで上がって来る途中ではいくらでも総楽観に見える場面があった。NAAIMも調整しているのは健全であるが、絶対値はまだ高い。もう一息か。

 テクニカルは嫌な形になりつつある。4540が新たに日足レジスタンスとなる。前回の記事で警戒していた日足ヘッドアンドショルダーが完成してしまっており、右肩の4600もレジスタンスとなる。ここまで4500台が長くてテクニカルが煮詰まって来ると、4600を超えたらまた付いていくつもりで4500台ではリスクを落とした方が安全に見える。少なくともドローダウンに耐えられないレバレッジは落としておいた方がよさそうである。サポートは4月からのじり上げ局面の象徴である50SMAの4400近辺か。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。