SPX technical
 S&P 500は続落となった。先週の記事では「4600を超えたらまた付いていくつもりで4500台ではリスクを落とした方が安全に見える。少なくともドローダウンに耐えられないレバレッジは落としておいた方がよさそうである」としてたが、果たして2度見られた4500台はそれぞれ売り場となった。決算期は一段落しており、マクロでは米国CPIが発表されているが、インフレを今更警戒する勢はかなり少なくなっているため、指標発表は不確実性剥落イベントとなったものの、高値圏での買いは続かなかった。ディスインフレーションが進んでいること自体は意外性もなければ金融政策のレジームシフトを促すものでもないので、上値追いの理由にならないのは当たり前であり、株式にしろ債券にしろ、むしろ上がったところで売りたい参加者の方が多くなっていた。特に米金利など、これまで全ての月のCPIでディスインフレーションを確認した上で最終的に4%台にいるわけなので、それでもCPIをきっかけに金利が大幅に低下すると期待するような参加者が生き残れるような甘い市場ではない。滑稽なことにこれまでCPI以上にディスインフレーションの優等生だったPPIがここぞとばかりに上振れており、これまた大して意味がある滑りではないのだが更なる金利上昇とナスダックのプチパニックを招いた。
MS SP500 dealer gamma
GS dealer gamma
GS SPX put volume
 Bloombergによるとディーラーはネガティブガンマになっている本ブログはテクニカルからエイヤーと4529を分水嶺にしていたが、明らかにテクニカル由来ではないものの、ちょうど分水嶺を跨いだあたりからネガティブガンマが目立ってきた。つまり短期的な振れ幅が大きくなり、これまでの長いじり上げ局面と違って下値が脆弱になったのである。分水嶺を下抜けた後は4540をレジスタンスとしていたが、CPI後の反発局面では4527止まりとなっており、レジスタンスが綺麗にワークしたことになる。5月以来見られなかった日足上ヒゲ陰線が連発された。

GS CTA
GS global systemaic macro equity positioning
 前回の記事で「一旦トレンドそのものまで下向きになると満タンになっていたCTAの売りから逃がれられる可能性は低下する」としていた通り、CTAが8月に入って以来売りに回っていたことが分かっている。1週間強の売りを経てGS CTA予想は以前よりもバランスが良くなっているが、代わりに「いつ売り転換を始めるか分からない」から「売り転換を始めたことが分かっている」状態に遷移しており、また依然ダウンサイドストーリーの方がインパクトが大きい。
DB positioning
 DB positioningでも週初め時点でCTAが少し売りに回り始めた。Volコントロールについては本ブログがずっと指摘してきた「2%下げ」へのセンシティビティまで丁寧に描かれている。
Bloomberg SPX high low swing
 もっとも、現に1日2%の下落はまだ見られていないため、Volコントロールが売り転換したとはまだ考えられない。ただ8月に入ってイントラウィークの振れ幅は大きくなっている。
MS Vol target and CTA
 本ブログが描いてきた「1日2%の下げがないのでVolコントロールは売りに回っていないが、CTAは売り始めている」構図はモルスタもまとめている。
BofA Earnings surprise
JPM US stock price reaction

 以前の記事でも触れたように今回の決算期はあまりにも高値圏で迎えているので決算がよくても大して買われず、滑ると大きく売られた。こちらも非対称的だったが、アップルがやたらと素直に売りやすかった以外、指数レベルで売られやすさが広がったわけではない。
NAAIM
GS Retail sentiment
 NAAIMは大幅に低下しており、調整が既にいいところまで行っていることを示唆する。日柄的には、ネガティブガンマが下値不安を作っているとすれば、それが変わりやすいのは18日のOp Exではないか。更に24日にNVDA決算が控えており、それまでにAIバブル崩壊の流れが続くならそこで反転しやすいか。
Bof A Card
 マクロには15日の小売売上高が大滑りすれば局面が変わる可能性があるが、先行指標を見るとまだそのタイミングではなさそうである。
Bloomberg Sep4400 implied vol
 ここまでの下落を精密に予想してきたテクニカル。先週の記事では「サポートは4月からのじり上げ局面の象徴である50SMAの4400近辺か」としていたが、50SMAは一週間で4440まで上昇しており既にタッチした形となる。ただの調整としてはいいところまで済んだと判断しており、よほどの新材料か1日2%の下げがなければ、Op Exあたりを目安に反転しやすいだろう。それまでに50SMAを抜けても日柄を待つだけで下値を売ったりショート転換するほどではない。週足は上ヒゲ陰線となっており4527が新たにレジスタンスとなるが、この水準をブレイクできれば再び上昇トレンドに復帰できそうだ。ナスダックは相対的に弱く一足先に50SMAを割り込んでおり、NVDA決算までナスダックのアンダーパフォームは反転しづらそうである。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。