

S&P 500はイントラウィーク・スウィングがかなり大きくなったものの、週間を通して概ね横ばいになった。NVDAの決算にもマッシブな注目が集まった。今期決算において他の銘柄が「ビートしても上がらず、ミスすると大幅に売られる」傾向にあったのはこれまでにフォローした通りである。しかしNVDAはAIバブルのど真ん中なのでさすがに決算の安心感が別格であり、大半の参加者がブルポジションで突入した。蓋を開けてみると大半の参加者は正しかったのだが、あまりにもポジションが重いので一層のショートカバーを炙り出せないと分かると押すな押すなになった。特にAIバブルとあまり関係ないのにNVDA決算イベントに上に吹っ飛ばしてもらおうとしていた他の半導体銘柄が大きく売られたし、指数全体もその構図だったかもしれない。積んであったコールの利食いとぶん投げでS&P 500全体がきつい寄り天になった。
翌日はジャクソンホールであり、これまた大した引締め話が出るはずがないし、実際出なかったが、やはりイベント通過のラリーに備えていた市場参加者ばかりが多く、一度は押すな押すなになった。もっともそれも一旦出尽くすと週末に向けて反発した。昨年8月のジャクソンホールはもっとピリピリしており、8月に4300あたりまで反発したところで湧いた後追いストーリーブルは9月にかけての引締め再激化に伴う反落で駆除されたが、今回は肝心な中身がない。NVDAの好決算でも反応が悪かったのを見てS&P 500の騰勢もピークに達したとの観測も早速見られたが、そこまで深読みするのはもはや占いの範疇であり、直近の値動きはあくまでもポジショニングの偏りで解説されるべきと思っている。


GS CTAの売りの日柄はついに大方通過した。ポジショニング自体はまだ重いので、揺さぶれば(ダウンサイドシナリオ)かなりの額の売りが出る態勢というのは変わっていないが、今のところまだダウンサイドシナリオは実現していない。

トロント・ドミニオンの方のCTAポジショニングは先週のラリーで早速ポジションの復元にかかっている。

DBのポジショニングでは逆にシステマティック系よりも、裁量系の機関投資家の方がより積極的にぶん投げている。だとすれば彼らが「リスクイベントを通過した」と考えれば買い戻しが出やすいし、中国発など更に懸念材料が続くと考えたらリスクを取れない。裁量系が最も動かしているとすればISMが跳ねたら素直に買われやすい一方、「バッドニュースはグッドニュース」とはなりづらいか。

GSによると投資信託が遅れてポジションを復元する流れはそれでも続いており、一方HFがマクロイベントと捉えて売っている。

NAAIMは2023年に入ってから最も悲観化しており、「これだけ見ると目を瞑って買える」状態は続いている。

プット・コール・レシオも同様である。
テクニカル。前回の記事では「4328 -4335間に簡易的な週足の水平サポートが形成される」とした上でそのレベルが分水嶺になると分析した。一週間終わってみると4328 -4335をサポートと考えていればNVDA決算の瞬間までのラリーを取れただろう。一方上値余地についてはNVDAがどのような決算を出していようと「レジスタンスは50SMAの4450が反発の目安にされやすそうである」は正しかったわけである。ナスダックなどは50SMAに阻まれたのが二度目となった。もっともそこからの反落は再び4328 -4335のサポートに届かず反発で終わっており、4328 -4335のサポートも再び健在が確認されている。何もなければ4328 -4450レンジが続きそうと思われるし、さすがにもう一度上を試す場合4450はよくも悪くも意識されないだろうとは思えるものの、4328を下に割られると下値余地が大幅に拡大することには引続き注意すべきである。
モメンタムはやや下向きながらも週間レベルで見ると横ばいであり、例えばCTAの売りを加速させるほどのトレンドにはなっていない。前回の記事でも述べたように、CTAは順張りなのでチャートそのものが先に上向きになれば売りも止むだろう。恐らく問題はVolコントロールの方であり、木曜の大陰線がVolコントロールの売りを誘発したかどうかが問われている。厳密には1日2%も下げていないが、極どいところまでは来ており、もし木~金曜が2022年によく見られた「大陰線の翌日は小十字が続き、翌々日は更に下を試す」パターンに当てはまったら、勢いで分水嶺を超えてしまうので相当まずいことになる。逆にVolコントロールが売りモードに入っていなければテクニカル通りに反発しやすいだろう。日柄としては全てのリスクイベントを通過しており、リアライズドVolが下がるのを確認して買いやすくなる局面への遷移を期待しやすいところである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。