

0DTEについて述べた前回の記事では、0DTEのアクティビティは「安寄りした日の前日比フラットまでのコール押し目買い」が目立っており、それは低Volレジームの自己実現に寄与するのではないかと述べてきた。「ボルマゲドン "Volmageddon"」を警戒する必要性は軽視を宣言した。前回の記事が書かれた4月から8月にかけて、S&P 500はファンダメンタルズの懸念要素の多さに反して7月まで低Volレジームと、それが可能にした壮大な上昇相場が続いた。逆に8月にファンダメンタルズの懸念要素が減って「好景気ではないか」という脳死ブルが湧き始めると、肝心の指数はどんなに褒めてもせいぜい水平レンジとなったが、それは今回の記事の本題ではない。その後0DTEはどうなったのかというと、2023年Q3になってから0DTEのオプションに占めるシェアは更に上昇しており過去最高を更新している。

では更に増えたのが不安要素、具体的には主にディーラーに下方向に追加ヘッジを強いる「ボルマゲドン "Volmageddon"」が起きるリスクを劇的に増加させたかというと、今のところどの時間帯で見てもマーケット・メイカーを著しいガンマショートにさせていない。またヒストリカル対比でも、0DTEが流行っていない他の株式指数対比でも、顕著にイントラデーのトレンドが加速しやすいとまでは言えない。従ってBofAは0DTEのボリュームとシェアが最高値を更新してもそれは質的変化ではないとしている。だとすれば本ブログが4月に述べたように低Volレジームを自己実現させる構図は変わっていないということか。


もっとも、2023年夏になってプットの取引も相対的に増えてきている。前回の記事では0DTEが悪さするとすれば「プット0DTEが流行った時と思われるが、今のところそのようなアクティビティは流行っていないし、流行りそうな兆候も見えない。そもそもベアに仕掛けたくなる時はインプライドVolも上がっているだろうから、かなり力技でプットを高く買って買い上げないと儲からないだろう」としていた。しかし、もしリスクオフ局面になってもインプライドVolが不当に押さえつけられるとすればどうなるだろうか。コールの時と同様、効率よく一個ずつストライクの梯子を降りるように下のプットを買い続けて相場をスパイラル状に押し下げることも可能になるのではないか。

そもそも0DTEが、ただの投機的な丁半博打と蔑まれながらも、長らく流行り続けることができたのはなぜか。この取引ボリュームでは個人投資家だけでなく機関投資家も参加するようになっていると見るべきだ。2018年2月のVIXショックでVIXを売ってキャリーを得るタイプのファンドは壊滅したが、パンデミック後には指数にオプション売りを被せてセータからのキャリーで高利回りを謳う投資戦略が流行り始めた。それらのファンドから供給されるインプライドVol売り圧力がインプライドVolを不当に押し下げたせいで、かなりの数の試行を経ても短期のオプション買いが正の期待値に従ってワークしてきたためではないか。オプション売り系ファンドは元々予想外の大幅な値動きに脆弱である上に、普段からインプライドVolを安く売らされているとなると、高い利回りにも関わらず、例えば今年年初から見てSPYやQQQに負けているのも仕方がない。アンダーパフォームした分の収益は他のオプショントレーダーに毟られたと考えるべきだ。
プットもインプライドVolの低迷のおかげで不当に安く買える構造が存在するならば、0DTEのプット買いラッシュがやって来ないと決め付けるのも危険な気がしてくる。そもそも今でも0DTEのプット買いはコール買いと比べて桁違いに少ないわけではない。だとすればいつかマクロ環境や地合い、集団心理の味方を得た時、これまでのコール買いの軌跡を鏡に映したような場面が出てきてもおかしくはないように思える。更に、一旦指数を動かした後の他の戦略との化学反応を考えると、買い上げのケースではせいぜいHFのショートカバーが炙り出される程度なので大きく飛ぶことはあまりないが、売り崩しの場合はもっとリアクションが複雑であるように思え、そこは上下対称でもない気がしている。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。