Tokyo Firewoks
 2016年1月に騙し討ちで導入され、以降8年余りにわたって金融機関の収益を圧迫してきた憎きマイナス金利政策がついに撤廃された。同時にYCCとオーバーシュート型コミットメントもゴミ箱に放り込まれた。植田日銀が始まってちょうど1年になるが、前任者の負の遺産の大半を綺麗さっぱりに片付けたことになる。まだ海外勢のYCCアタックへの対応を懸念されていた就任当初には、一連の作業が不可能でないにしても極めて困難なものとは思われていたことを想起すると実にめでたい。
Nikkei 2y JGB yield
  3~4月のマイナス金利政策撤廃の織込みは1月会合で既に始まっており、どちらかのタイミングで撤廃されることはその時点から確実視できていないといけなかった。これは大前提である。「総じて4月は当然として3月会合でのマイナス金利政策撤廃もライブであるとの印象を与えることになった」前回の記事でも述べている。それでも本ブログの3,6,9,12月空振り論からすると撤廃が「4月ではなく3月」になる喫緊さは必ずしもないように見えたが、それでも1月会合から日銀の「3月撤廃の自由を排除しない」ことへのこだわりを市場参加者は感じていたと思われる。思えば1月会合から「展望レポートがない回でも政策変更はあり得るということです」と布石は打たれていた。2/29の高田審議委員講演は「2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になってきた」「金融緩和からの出口対応に向けた検討が必要」と広くタカ的と受け取られた3月に入ると3月撤廃論と4月撤廃論は拮抗し始めた短期金利市場も3月撤廃を織込み始めた
Nikkei Japan Negative Rates 3 Tiers System
 マイナス金利政策撤廃のテクニカルなオペレーションとしてはマイナス金利政策導入時に始まった三層構造を温存したままの政策金利引き上げ(実際に+0.1%の付利が支払われる超過準備の金額は限定的になる)が想定されていたようだが、2月の内田副総裁が金融経済懇談会で戦後の姿として「仮にこの状態に戻すとすれば」と触れたことから、全ての超過準備に+0.1%の金利が付く、法定準備とのシンプルな二層化が現実的になった。二層に戻すのは「金融機関への補助金との批判が出る可能性はある」との懸念もあったようだが、もしそのような批判が実際に出るとすれば頭が沸いていると決め付けて差し支えない。全ての利上げは金融機関への補助金ということになるからだ。このテクニカルな変更だけで利上げ0.5回分くらいのインパクトがあった。またシンプルな二層構造に戻すのであれば前もって金融機関に用意させるためにアナウンスする必要もなく、金融機関側も二層構造の心の準備をしているとアピールした
news
 2月には日本の実質GDPが2023年後半に2期連続マイナス成長になっていたことが発表され、3月利上げどころではなくなるというノイズも入った。「日本は景気後退の淵に追い込まれている」などという声も上がったがさすがにそれはミクロを見てなさすぎであり、結局GDP改定値は好調な設備投資で再びプラス域に戻った。もっともその後の2024年1-3期も不正問題を受けた自動車メーカーの生産停止でGDPは弱そうと思われており、4月の展望レポートで成長率見通しを上方修正するのは難しく、また物価見通しを今更上方修正する可能性も高くないので、確かにマイナス金利政策を撤廃したいのが先にあるならば、これまでのように展望レポートを待つ必要はなかった。

絶え間ないリーク

 マイナス金利政策撤廃の事前リークは時事通信社の独擅場となった。2/29に時事通信社が「日銀からの情報リークなどによる裏取り作業を踏まえたものではなく、数多くの取材から得たヒントをつなぎ合わせた現時点での個人的な予想」と前置きしつつ、
「マイナス金利の解除後、日銀当座預金の超過準備への付利水準は0.1%とするのはほぼ間違いなさそうだ。所要準備の0%は維持しつつ、超過準備は0.1%の1層となる公算が大きく、その場合、短期金利である無担保コール翌日物レート(TONA)は0.1%やや下回る水準で推移することが見込まれる」
「イールドカーブ・コントロール(YCC)に関しては、10年物国債金利の0%誘導は撤廃が見込まれる」「金利が急騰した際には指し値オペなどによる機動的な国債購入を通じ、相場を安定させるスタンスは強調するだろう」
「政策修正後の国債買い入れ規模を巡っては、(中略)政策の不連続性を避けるため、当面、現在の月間のグロスベースの購入額(6兆円弱)は維持される可能性が強い」

と、事後に改めて眺めると明らかに日銀内部から何らかの情報提供を受けたようにしか見えない記事を発信している。

 3/6には時事通信社が「日銀委員、3月解除で意見表明へ」との観測を報道した
「政策委員9人のうち、少なくとも1人がマイナス金利解除が適切だと主張」
と、少なくとも3月会合でマイナス金利政策撤廃は議案として上がることを予告した。たった一人ではあるが、これまで長らく「少数意見の提案→否決」のパターンはなかった。3/7にはBloombergからも「日銀のマイナス金利解除に対し一部の政府関係者が容認姿勢」との観測記事が出た短期金融市場でも3月撤廃の織込みが本格化した

 3/9に時事通信社が「YCCに代わる新しい量的枠組み」を正式に報道した。ここまで来ると「これはリークではない」という前置きも省かれた。マイナス金利政策撤廃よりもなぜかYCCに重きを置いており、近い将来のYCCの完全撤廃を決定付けた。附属的に3月会合でのマイナス金利政策の撤廃も一気に現実的になった。曰く、
「長期金利を"0%程度"に誘導する"長短金利操作(YCC)"は撤廃する」
「早ければ18, 19両日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除とともに決める」
「新たな枠組みは、金利を直接操作する手法を撤廃し、国債購入額という"量"を対象とする方向で検討」
「買い入れ額は当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する」

とのことであった。

 前の記事の「少なくとも1人」に対して「少数意見か」と笑い飛ばす動きもあったことを受けたのか、3/12には更に時事通信社が「日銀、広がる3月解除支持」と念を押すような記事を出している
「日銀は解除の判断に当たり、今春闘での賃上げ動向を"一つの大きなポイント"と位置付け、連合が15日発表する第1回回答集計の結果に注目」
「平均賃上げ率が昨年第1回の3.80%を大きく上回れば、解除に踏み切る見通し」

と丁寧に判断材料と基準まで説明した。

 現に15日午後に発表された連合の春闘の第1回回答(大企業中心)の集計結果が3.80%を大きく上回る5.28%と出ると、これまでに透明にされた判断ルールに従い、翌週のマイナス金利政策撤廃は決定的になった。同日午後に時事通信社は「日銀、マイナス金利解除で最終調整」と「最終調整」の文言を使用した。その間、並行してETFの買入れの完全撤廃もBloombergが報じた。こちらは本ブログも取り上げたように半ば前回の決定会合からの決定事項であり、大したインパクトがなかった。
Nikkei BOJ History of YCC
 ここでリークの主役は日本経済新聞に交代する。3/16の朝2時に日経がこれまでのリークの集大成とも言える「日銀、マイナス金利解除へ 賃上げ拡大で17年ぶり利上げ」でマイナス金利政策撤廃を高らかに宣言した。改めてマイナス金利政策、YCC、ETF買入れの同時撤廃と、それに至った賃金の議論をまとめた。YCC撤廃後の国債市場運営については同日午後に「日銀、国債の買い入れ継続へ マイナス金利解除後も」を追加した。ここで撤廃後の「金利急騰を防ぐ仕組み」がそれまでの「買入れペース(量)維持」から新たに出てきた「指値オペの温存」にシフトしたのが興味深い。本来指値オペはYCCを維持するツールの一つであり、YCC撤廃後は当初のリークによると「金利が急騰した場合は、必要に応じて国債買い入れの増額などを通じて機動的に対応する」ことになっていた。この間に内外のどこかから「引上げた政策金利とこれまでと同じ量の組合せで本当に金利急騰を防げるのか?」という懸念が提示され、それに答える必要が出てきたのではないか。決定会合2日目にあたる3/19の朝2時に再び日本経済新聞から「日銀が大規模緩和解除へ 19日決定 長短金利操作も撤廃」と念押しのリークがあり、これで当日の決定会合の展開を追う必要さえもなくなった。毎回朝2時に電子版にヘッドラインが出る背景は直接把握していないが、恐らく朝刊の記事が決まるタイミングなどテクニカルなものと推測している。

決定会合と総裁記者会見

BOJ Mar MPC
 当日の声明文はほぼ事前の織込み通りのものとなった。黒田時代のヘンテコな長い政策名は消え、一連のパッケージは「普通の金融調節」という名前で呼ばれた。政策金利のON無担保コールレートを0~0.1%程度で推移させる、そのために超過準備付利を翌営業日から一律0.1%に引き上げる。「-0.1%のマイナス金利をなくしただけでなく、付利金利を+0.1%にしたのだから実質20bp幅の利上げではないか」といった類の誤解を解くため、また内田副総裁が昨年から言ってきた「マイナス金利の解除は0.1%の利上げになる」を墨守する形で「10bp利上げ」を絵で強調した
BOJ Annual JGB Purchase
 YCCは名実ともに完全に消滅し、代わりにバトンタッチされたのは「これまでと概ね同程度の金額で長期国債の買入れを継続」と、本ブログがずっと推してきた「YCCからピュアQEへのシフト」が名実ともに完成した。金利急騰を防ぐための施策として「機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する」と雑な全部盛りになった。これは1月会合で植田総裁が述べた「大きな不連続性が発生する政策運営は避けられる」の墨守でもあるが、誰かへの説明のための説明であった印象を受ける。事前のリークにあった「月間6兆円」は注で「足もとの長期国債の月間買入れ額は、6兆円程度となっている。実際の買入れは、従来同様、ある程度の幅をもって予定額を示すこととし、市場の動向や国債需給などを踏まえて実施していく」と小さく書かれただけであり、最初から数字に束縛されたくない気持ちがダダ洩れである。次回から注を取っ払ってしまえば完全に自由になれるだろう。

 保有国債の償還ペース(2024年は四半期あたり16~17兆円程度)以上の国債買入れを約束するオーバーシュート型コミットメントはしれっとなくなっている。本ブログは12月会合の後に「たとえマイナス金利政策撤廃が賃金上昇の縛りを受けて遅れるとしても、オーバーシュート型コミットメントの2%だけは既に達成したと言い張れる」と言い張ったが、現に「オーバーシュート型コミットメントについては、その要件を充足したものと判断」された。こちらも、仮に残すとすれば月6兆円程度の買入れはオーバーシュート型コミットメントの枠組み下で自明なのに、リークで殊更月6兆円という数字を挙げたことからある程度察しが付くものであり、サプライズではない。オーバーシュート型コミットメントの縛りが消えたことで、たとえ今の移行の瞬間では国債買入れペースが変わらないとしても、その気になればいくらでも国債買入れを減らせるようになる。YCCからピュアQEに移行するまでの間に物価目標達成が見えてきたので、そのままピュアQTにも移行できる

 総裁記者会見ではその点について「バランスシートの大きさに関連しまして、長国買入れの金額ですけれども、現状の金額をしばらく維持するということですが、将来はどうかというご質問だと思いますが、前々から申し上げておりますように、大規模緩和終了後はバランスシート縮小を視野に入れていくというつもりでおりますので、将来のどこかの時点で、買入れ額を減らしていくということも考えたいと思いますが、今、具体的にそれについて申し上げられる段階ではございません」と述べている。将来減らしておきたい方向性は明確であり、その上で「いまは減らす段階にない」とさえ言わなかった。金融機関に払う付利がもったいないなら超過準備が減るようにQTすればいい。とはいえ、現実的にはダイナミックに買入れ額を減らすのは難しく、満足できる利回りで買えない投資家が「日銀は買入れを減額しろ」と叫んでも通らない時間帯はちょくちょく見られるだろう。逆も同様である。

短期金利と長期金利、為替

Bloomberg Japan Core CPI
 さて10年以上ぶりに「普通の金融政策」の中核に戻ってきた短期政策金利。マイナス金利政策撤廃に続く追加利上げは、自民党総裁選への影響等も考えて7月会合をスキップして10月会合となる可能性が高いと広く思われているが、基本的には2回の会合ともライブであると見るべきだ。連合の第二次集計も出揃っており第一次と結論が変わらないこれが第七次まであり7月まで集計が続くものの、賃金で結論を引っくり返すのは難しいだろう。一応低下が始まった物価上昇率がもし再び年率2%を割り込んだら影響があるものの、それもいつでもガソリン補助金をなくしたら戻って来る程度のものであり、まさかデフレへの逆戻りが利上げを妨げる展開にはならない。他にFedの6月利下げの有無にも左右されると思われるが、以前の記事でも取り上げたように、Fedの利下げが調整的なものなら日銀の利上げ継続を妨げない。総裁記者会見では「短期金利が上がるとして、その場合のペースという点ですけれども、これは繰り返しになりますが、経済・物価見通し次第であるということになるかと思います。ただし、申し上げましたように、現在手元にあります見通しを前提にしますと、急激な上昇というような経路は避けられるというふうにみております」と慎重に明言を避けた。

 いずれにしろ、「為替介入としての金融政策」という本ブログの仮説が続くとすれば、端的に言えば7月会合前にドル円が150円以上で推移するなら7月再利上げの可能性が大きく、150円以下で推移しているなら利上げを10月まで延期する選択肢が出て来るということではないか。「為替介入としての金融政策」が健在である以上、ドル円が150円より上でアンコントローラブルになる展開は引続き予想していない。フォワードガイダンスのデュレーションは次回会合までの数ヶ月まで縮んでおり、もしセオリー通りに時間軸政策というものが緩和効果を持つとすればそれだけ今回会合では引締めがあったと解釈すべきであり、その解釈が広まらないとすれば日銀のこれまでのフォワードガイダンスも「どうせステルスで形骸化される」と幅広く思われていたことを意味する。
TradingEconomics JGB 10y yield
 日本の長期金利については、目下の需給は変わらないものの、7月利上げが続くくらいなら当然その次もありその時点で政策金利は0.5%に達するので、ドル円150円以上と長期金利0.5%割れの組合せだけは非論理的である。本ブログはこれまで長らく0.5~1.0%のレンジを推してきたが、賃金の障害が白昼堂々と取り除かれた今、レンジ内でも濃淡は少しずつ1.0%寄りになっていくだろう。長期金利が1%を大幅に上回る展開は今でも見込んでいないが、0.5%に近付くのも同じくらい非論理的になってきた。

事前リークの功罪

 最後に今回の決定会合前に飛び交った通信社と新聞社のリークについて。植田体制になった後、重要な決定が下される前からリーク記事が流れることが多かった。朝一のリークがなかった12月には政策変更もなかったのだから、リークが金融政策を予言するという命題はサイエンスとして完全に成立する。従って今回の直前まで時事通信社のリークを信じなかった市場参加者は黒田体制に騙された過去を引きずりすぎである。会合後の総裁記者会見において植田総裁が、市場との対話を含む日銀の情報発信についての質問に対して、「今回の政策変更に先立って、仮に政策変更があるとしたらどういう考え方で行うのか、ということについては、よく考えて様々な情報発信をしてきたところでございます」「一連の報道が(いつもではありますけれども)会合に先立ってあったという風に認識しておりますけれども、それは全てわたくしどもが発信した情報を元に、報道された各社がそれぞれの見方を示されたもの、という風に理解しております」と回答したのが答え合わせとなる。その「発信した情報」は我々には直接見えなかったため、どこかで日銀執行部による記者向けレクチャーが存在したと解読すべきである

 記者を使ってリークを行う「対話」の仕方には以前から批判が強かった金融政策の観測記事において時事や日経より格段に信用が劣るBloombergも日銀の情報管理を批判している。たとえば米国では金融政策の織込みは連銀総裁や理事のスピーチを通して行われることが多い。もっともFOMC直前にもブラックアウト期間があり、その期間でどうしても織り込ませたい時は記者の力を頼ることになる。様々なスタンスを持つ要人が様々な発信を行う中で金融市場を誘導する作業には歴史が必要であり、少なくとも10年間の黒田体制の下で金融思想だけを以て選抜された感が強い審議委員達は明らかにそのような歴史を形成して来なかった
Bloomberg BOJ Board Members
 植田体制下でも審議委員の講演は黒田体制対比で格段に重要にはなってきているものの、植田総裁や内田副総裁の講演は数ヶ月に1回しかなく、ヒラの審議委員はどうしても「キーパーソンの意見ではない」感が強いので新聞記事よりも軽く扱われてしまう。金融政策は経済情勢で決まるシンプルなものではなくなっており、金融市場に関連するテクニカルな調整の都合や論理も存在する。それこそが市場参加者が最も気になるところである。にもかかわらず、各県の金融経済懇談会における経済中心の審議委員講演は、金融政策の詳細に立ち入る場として必ずしも相応しいものではない。そもそも――蚊帳の外とまでは言わないまでも――審議委員の意見の集約としての決定が形成されているというより、明らかに執行部がやりたいことが先に決まっており、審議委員は議場でそれを追認するだけなのが現実である。従って執行部が直接記者にレクチャーする必要性は残る。とはいえ、いわば戦時中とも言える一連の非伝統的な金融政策の撤廃が終わり、正常な利上げパスに入りつつある中、市場との対話のやり方もそれに応じて透明なものにシフトさせていくべきである。今後日銀がもはやリークに依存する必要がなくなったと思っていても、世間が朝起きて「2時の日経新聞記事がなかった」と大混乱に陥るようでは困るのである。
BOJ press release anounce time
 それとは別に、当日の決定会合の最中にも「植田総裁がマイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の転換についての議案を提案した」ヘッドラインが12時10分台に流れた。会合が終わったのが12:28であり、プレスリリースが公表されたのは12:35であった。このフライング報道は完全サプライズで2016年1月にマイナス金利政策が導入された時にも起きている。さすがにこれは実際に会場の様子を知り得る人間でないとリークできない内容であるが、リークの仕組みは分かりづらくない。財務省と内閣府からの参加者が12:08~12:17にかけて一時退席したことが公式に分かっている。これは表決に際して投票権がないための一旦退席である。政府側出席者の退席とリーク報道のタイミングがぴったり合っているため、そういうことだと考えるのが自然だ。今回はなかったものの、理論的には日銀法19条によると政府は金融政策決定会合の議決延期請求権を持っているため、政府関係者がその行使の検討も含めて財務省と連携するためのもっと長い中断もあり得る。
USDJPY chart
 リークがあまりにも充実していたため、会合当日までのドル円の値動きは教科書に載せられるほど分かりやすい「織込み済み」パターンになった。いわゆる「一度円高方向に警戒はするものの、イベントを通過すると円安基調に戻る」パターンの「イベント通過」が日経の事前報道どころか時事通信リークのタイミングまで前倒しされている

要約

・日銀はマイナス金利、YCC、オーバーシュート型コミットメント、ETF買入れを同時撤廃
・今後は国債保有を減らすQTにも理論上自由に移行できる(ただしべき論)
・7月の追加利上げは会合前にドル円が150円以上ならあり、150円以下ならなしと推測
・ドル円の150円より上では金融政策を使って円安阻止に動く余地がある
・長期金利は0.5~1.0%レンジを引続き想定も、0.5%は一層遠ざかる
・時事通信社と日本経済新聞の事前リークは本物の可能性が高い
・リークで十分織込みが進んだため一連の非伝統的金融緩和の撤廃はインパクトなかった

リーク記事一覧

〔金利レーダー〕3月のマイナス金利解除も視野=政策修正後の新たな枠組み巡る考察 | ビジネスジャーナル (biz-journal.jp) 
日銀委員、3月解除で意見表明へ マイナス金利、次回会合で―決定なら17年ぶり利上げ:時事ドットコム (jiji.com)
国債購入、規模明示へ YCC撤廃、新「量的」枠組み―円滑な緩和正常化で・日銀検討:時事ドットコム (jiji.com) 
日銀、広がる3月解除支持 春闘、昨年超えの公算―マイナス金利:時事ドットコム (jiji.com)
日銀、マイナス金利解除で調整 高水準賃上げ、物価2%実現に自信―連合集計踏まえ最終判断:時事ドットコム (jiji.com) 

日銀、マイナス金利解除へ 賃上げ拡大で17年ぶり利上げ - 日本経済新聞 (nikkei.com) 
日銀、国債の買い入れ継続へ マイナス金利解除後も - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本銀行3月会合の公表資料

金融政策の枠組みの見直しについて 
(参考)金融政策の枠組みの見直し 
【記者会見】植田総裁(3/19分)

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