
長期金利の上昇がようやく効いてS&P 500は3週連続で下落となった。中でもナスダックの下げはきつく、2022年11月以来の下げとなった。要因としては地政学リスク、金利上昇、決算、決算期のブラックアウト、そしてポジショニングの悪さによる機械の逆回転が挙げられるだろう。決算は事故に近かったが、残りの要因は全て4月に入って毎回の記事で挙げてきたものであり、下げ幅はともかく、調整が差し迫っていたことは本ブログの読者であれば十分予知可能だっただろう。「1日2%の下落が見られた場合、翌日小十字からの翌々日続落というパターンを想起したい」と下げ方まで指定していたのだが、月曜の下げ幅は前日比2%にかろうじて届かなかったものの、火曜小十字からの水曜続落とパターンが再現されたのである。
地政学リスクはクラッシュした後の指数を週末まで拾いづらい理由にはなったものの、クラッシュの原因としては限定的である。なぜなら先週の記事の観察の通り、原油市場もゴールド市場も一瞬しか有事モードにならなかったからだ。週末に一旦お互いにやりあって一件落着したように見える形で週明けを迎えたのだが、「イラン関連のヘッドラインの影響は2020年1月の経験と同じように大して長く続かないだろう。それを理由にクラッシュが先行したらその後のラリーを期待できそうであるし、逆に出尽くし上げが先行したら売れるタイプのイベントだと思っている」としていたが、月曜寄付きの出尽くし上げはまさに売れるタイプの上げだった。金曜アジア時間にはイスラエルが再反撃を行い、イランがそれ以上の反撃を行わないとしたことで地政学リスク自体は通過したが、二度も「出尽くし上げは売れる上げ」になった。
決算は半導体を中心に不調ないしは心の準備不足が目立った週となった。まずASMLが滑り、次にTSMCの見通しが慎重だったことから半導体が週末まで売られた。前回の決算では上に飛んだNFLXが会員数公表を停止したことで売られたのは地合いの問題だろう。金曜にはナスダックが総崩れになり、これまでの先導株だったNVDAが1日で10%売られた。


金利については本ブログなどは月初の記事の時点で「Fedの今年利下げ死守スタンスはそれでも続いているが、利下げを遅らせる声もボスティック、ウォラーから上がり始めており、これがウィリアムズかパウエルまで波及したら一波乱ありそうなので、彼らが喋る前は要注意である」と早々とウィリアムズ副総裁を名指ししていたが、その後のウィリアムズの数回の講演は平和だった。先週は地合いも悪い中でやや牽強ではあるが、ウィリアムズによる差し迫った利下げの否定が話題になった。最終的には5月FOMCで答えが出るのだが、6月利下げの可能性はほぼ消滅したと考えてよさそうである。金利市場の不確実性が話題になる前から本ブログはMOVEの高止まりがVIXの高止まりに繋がったと指摘してきた。

まだポジショニングのチャートは流れてきていないが、先週の記事で「週明けに一段とドローダウンが続くようなら久々にCTAのフリップが見られる可能性がある」と取り上げたCTAのフリップは当然トリガーされていると思われるし、安値引けの日の多さから見ても恐らく週を通して機械の売りが走り続けたものと思われる。ボラティリティの上昇に伴い、またしてもS&P 500先物の流動性が枯渇した。2022年の経験では先物の流動性が枯渇→大きなリバランス注文は時間分散で発注することになる(VWAP砲)→引けまでじりじりと売られる日が見られるようになる。金曜と木曜午後はそれに当たる展開だったかもしれない。


金曜に5000を割り込んだことで、もし先週からガンマプロファイルが変わってなければディーラーは完全にネガティブガンマに陥ったと思われる。もっとも金曜はOp Exであり、そこである程度のネガティブガンマは消滅していると見るべきだが、金曜の値動きは全くOp Exらしくなかった。実際、指数の下げ方の割りには金曜NY時間にVIXがピクリとも上がらなかったことはヘッジニーズの低下を示唆するが、代わりにナスダック中心の現物売りっぽい動きが下げを主導した。

FMSのキャッシュ比率は売りシグナルの4%に近い4.2%であり、投資家のポジションがそれなりに重いことを示唆する。


4/15にタックスセリングが明けてもブラックアウトがあることを意識していた必要があり、タックスセリング明けから直ちにサマーラリーを意識するのは拙速だったということになる。決算期は佳境に入りつつある。特に木曜引け後はヘビーである。指数の水準としては決算前から調整が進んでいるとも言えるだろうが、一方でポジショニングは傷んでいるため、決算で切り返すことができるかどうかでいうとコンセンサスロング以外の銘柄の方が決算で跳ねやすいか。コンセンサスロング銘柄は現状のポジショニングでは上に窓を開けて跳ねたところで戻り売りに遭いやすそうである。マクロはGDPやPCEなど答え合わせ系指標の週なので大して荒れる要因にならないだろう。

NAAIMはさすがに値動き相応に低下している。これは木曜時点なので金曜には一段とぶん投げが進んでいたと思われるものの、逆張りにはもう一息必要に見える。

テクニカル。ナスダックの週足上ヒゲ陰線はクリーンヒットとなり、ナスダックは1ヶ月半もみ合った16000台から完全に下放たれた。長いじり上げの後のクラッシュなのでサポートが遠く、有意義なものが見当たらないのが現実である。つまり完全に落ちるナイフになっている。逆にレジスタンスの方も遠くなっており、一旦切り返しに転じた場合も理論的にはそれなりの値幅が出る可能性もある。もっともたとえ大陽線をブチ上げたとしても、金利低下かMOVE、VIXの崩落が伴っていないなら戻り売りに押されやすく、今週から始まったことでもないが高VIXレジームで高値追いだけはオッズが悪い。ボラティリティが高い間は引続きVWAP砲に要注意であり、ロンドン引け後までじりじりと売られるならそのパターンに入っている可能性が高い。落ち着くまで値幅より日柄にも見え、あえて挙げるならOp Exが区切りになってもおかしくないのだが、週明けも下げ止まらない場合は金利の不確実性がある程度低下する5月FOMCまで荒れ続ける可能性がある。
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。
この記事は投資行動を推奨するものではありません。