S&P 500はマクロの次に決算に振り回される週間となった。先週の記事では「指数の水準としては決算前から調整が進んでいるとも言えるだろうが、一方でポジショニングは傷んでいるため、決算で切り返すことができるかどうかでいうとコンセンサスロング以外の銘柄の方が決算で跳ねやすいか。コンセンサスロング銘柄は現状のポジショニングでは上に窓を開けて跳ねたところで戻り売りに遭いやすそうである」としていたが、初っ端からコンセンサスショートのTSLAが大してよくもない決算で大きく跳ねた。TSLAのショート建玉は決算前に3年ぶりの多さになっていたと言われる。そこでアニマルスピリッツが付いて上値追いが増えたところで、前期に大きく跳ねたMETAが大して悪くもない決算で急落した。
更に木曜にGDPがスタグフレーショナリーに出たため指数は再び大幅に下げて始まったが、今年の大半のスタグフレーショナリーな指標パッケージの日と同様、株式は債券をアウトパフォームした。先週の記事ではGDPとPCEを「答え合わせ系指標」と軽視していたため油断していた形になったが、ギャップダウンしたところからは恐らく一番底で買いそびれた市場参加者が引けまで拾い続けた。木曜引け後の決算では更にMSFTとGOOGLが堅調に出たため金曜は上値追いの日になった。
23日引け後にTIの強気ガイダンスが流れ、半導体はそこからマクロや決算に一切振らされずに一直線に上昇した。たとえインテルがいつものように滑っても、である。
久々のGS CTAはこれまでとすっかり様相が変わっている。1, 2, 3月と上昇を享受していたのを、本ブログが警戒していた通り、4月半ばに大々的に削減に転じた。トレンドが再び曲がるまでCTAの売りが続く可能性が高く、GS自身もそう述べている。ディーラーガンマもマイナスに転落したとのことだが、先週のBofAのガンマプロファイルを想起すると、5100まで戻った後はさすがにポジティブガンマに戻っている気もする。流動性は依然戻るまで時間を要しており、いつか流れが変わった時、VWAP砲が引けまでじり安を誘発する可能性がまだ消えたわけではない。
DB positioning。統合ポジショニングは少し畳まれはじめており、CTAは4/18時点でまだ売り始めというところであった。
変動が大きい2週間に見えたものの、結局本ブログが重視していた1日2%以上の下落は見られず、1日2%以上の下落がない日は1928年(!)以来の337営業日連続となった。従ってインプライドはともかく、リアライズドベースではまだ低Volレジームから脱却していない。もっともそれでも先週一週間にわたってインプライドベースの高Volレジームの中で「高値追いを行わない」スタンス自体は間違っていたわけではない。
本ブログが警戒してきた金利のインプライドVolはさすがにやや低下した。GDPを受けて金利の水準が持ち上がったにもかかわらずである。テックのバリュエーションも金利ボラティリティに左右されてきたことが分かっている。
金利のアンカーを作るなり持ち上げるなりするのは、ここまで気にしてきた日本時間5/2未明のFOMCということになる。6月利下げのアナウンスは行われないと思われるものの、金利水準だけを見ると十分Fedのスタンス再変更を先取りしているため、パウエル議長が記者会見でアドリブで変なことを口走らない限り、少なくとも声明文ベースではイベント通過で済みやすい会合ではないか。一方1ヶ月前から本ブログが警戒してきた「利下げ後ろ倒しモード」の集大成になるのもこの会合であり、「6月利下げ~年末まで利下げがない」まで広がる観測の間で出てきた結果がどう捉えられるかはポジショニング次第ということになる。つまり会合までに雑に上昇していた場合はどちらかというと腰を折られやすくなるか。変なことを口走って金利Volが再上昇した場合はVIXも高Volレジームに逆戻りする可能性がある。
ここまでの決算は滑るとがっつり売られた。今週は半導体大手とAMZNを前座とし、広く滑ると思われているAAPLを迎える。さすがに直近の急落をほとんど全戻しした状態でAAPLを迎えるならオッズが悪くなりそうだが、調整後に迎えるならサプライズの少なさがサポートになるだろう。
株式の上昇局面では債券へのリバランスが行われやすかった月末は、株式も下落したことから久々に年金による期末の株式売りがなさそうだとGSはしている。シーズナリティとしては4/15のタックスセリングを通過し、4/19のOp Ex引けで底打ち(いつもは寄付きで底打ちが多かったのでOp Exデーの一直線下げはイメージとは大きく違った、Op Ex底打ち説はまさに首の皮一枚だった)だったということになる。今週の決算を通過すれば自社株買いブラックアウトも明け始める。
NAAIMは指数が反発したにもかかわらず一段と悲観化している。
インサイダーは株価が下がるとピタッと売却が止まった。株価が下がったのを見てAIバブルが弾けたなどという解答を覗いた後の議論も持ち上がったが、中の人はその議論に与しなかった。
テクニカル。「完全に落ちるナイフになっている。逆にレジスタンスの方も遠くなっており、一旦切り返しに転じた場合も理論的にはそれなりの値幅が出る可能性もある」の範疇から今のところ外れていない。肝心のここからだが、GDPは二番底を固めたという解釈もでき、これまで堅かった5000直下を貫通するにはもう少し素直にロスカットしたくなるような材料が必要ではないか。それまではナスダックの15200が分かりやすいが、2月安値と作った水平サポートがワークし、二番底はヘッドアンドショルダー形成失敗と解釈もできる。つまりそれなりの可能性で15200を割らないまま上昇トレンドが続くシナリオに入り得る。特に今週がリアライズドVol低下のじり上げになった場合はそうだろう。一方それだけに15200を割られると下落が本格加速する可能性が高まるし、或いは滞空時間が長くポジションが残されていそうな5200近辺やナスダックの16500手前を早々と大陽線で試しにいくと、FOMCやアップル決算は再売り崩しのきっかけになりやすいのではないか。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。