
先週のS&P 500は4月の調整と同じ展開になった。つまり前回の記事で寄り天大陰線という類似性だけを取り上げて「経験上寄り天大陰線を引いた後は数日間は陰線の真ん中あたりで滞留するが、そのしばらく後のパフォーマンスは思わしくない。従って直近は安全と思われる一方、中期的には再び調整が近付いていると考える」と描いた通りになったのである。月曜休みを挟んで火曜まで堅調(ナスダックは過去最高値を更新した)で、その後は下落に転じたのである。上がってから下げたのでS&P 500の方は5250 -5350レンジを「意識」していたと言えるだろう。セールスフォースが弱気なガイダンスで売られた。AIサーバー期待で上昇が続いていたDELLも特に問題ない数字で大きく売られた。

そして木曜引けの下げでレンジ下限を突破したので、月末リバランスが控えていた金曜には一気に下値余地が広がった。もっともそこまではさすがに簡単に予想できるというか安直すぎたようで、備えていた参加者も多く月末引けには一気に上に跳ねた。ナスダックから売り込まれたのだが、代わりにバリュー主導でS&P 500だけがプラスで引けた。

要するに金利も高すぎるので、前のめりになりすぎた期待を調整する時間帯だったということである。年金の月末リバランスに向けて金利低下、株式は金利の懸念をせずに済む一方で月末日には売られるイメージでいたのだが、28日、29日にかけてかなりの意外性をもって金利が急速に上昇した。米国債入札で不調が続いたというのもあるが、直接的には日本国債が1%を大幅に突破して債券市場のアンカーがぶっこ抜かれたことがきっかけだろう。月末にかけてはPCEをノーイベントで通過しているが、債券だけが買われ株式は今一つゴルディロックスとは言えなかった。これは今後の金利低下局面も脱ゴルディロックス化に向かう変調を象徴している可能性もあるが、基本的には月末特有の動きの乱れだろう。

DBのポジショニング。GSのモデルと異なり4月の調整はほんの少しの窪みで終わっている。

BofAのガンマプロファイルは5200を割り込むとガンマロングが薄くなる。5200にはウォールがあり、金曜の下落は5200の明確なブレイクには失敗した。一方上値の5350のウォールも厚くなっており短期間で5400を試せるようには見えない。



シーズナリティ。大統領選の年の6, 7, 8月のサマーラリーは強いことになっている。もっとも今年は不確実性がやや早く降臨する可能性があり、8月まではラリーが続かなそうでもある。普通の年の6月も悪くないし、GSによると1-5月に指数が10%以上上がった年は年後半のパフォーマンスもよい。

NAAIMとGSセンチメントは引続き高めに推移しており、上値追いを正当化しない。マクロ的には今週はISMが控えており、こちらはフラッシュPMIがよいので基本的に反発が見込まれているが、良すぎても滑ってもあまりよい反応にならなそうな気がしている。ECBは初の主要中銀利下げが広く見込まれており、次回以降の示唆も気になるところである。Fedが利下げ入りする前の1回利下げと2回利下げのハードルは違うだろう。万が一にも利下げを見送ったら超大ディザスターとなるが、さすがに可能性が低い。

テクニカル。チャートの類似性があまりにもワークしている。月末日は様々なフローが飛び交ったと思われるが、50SMAで支えられた日足下ヒゲ陽線となっており、5192は日足サポートとなる。上値では大陰線の始点の5340が日足レジスタンスとなり、ガンマプロファイルも同じ示唆になっている。チャートの類似性だけで言うと大陰線からの調整の途中に一度大きな下ヒゲ陽線を挟むのは4月の時も同様であり、4月の時は翌日からその日足を無視して大幅に続落した。もっとも4月の時と異なるのはVIXが高止まりしていない、ブラックアウト期間に入っていない、ディーラーがまだ厚いポジティブガンマになっている、が挙げられ、共通点は金利上昇である。従って基本的には4月の日足下ヒゲ陽線の後の展開をなぞる懸念というのは高くないものの、月が変わって金利上昇と共にアンチ・ゴルディロックスが激化した場合はその限りではない、というところだろうか。水準に落とし込むと5192がキーになっており、ここを下に切れた場合は4月との類似度が上昇し下値余地が広がる。上値余地は下値余地対比でも大して大きくないため、5192を再びブレイクしない方にベットするにしても、切れても痛くないようにリスクを限定するか、レンジ内のなるべく深い押し目を待ちたいところである。ショートの方は4月を辿らなかった場合(今のところ相違点は多い)かなりペインになるのであまり居心地が良くなく、どちらかというと5192を下に切った場合や、もし2%下落があった場合の翌・小十字の日に追撃する方が安心感がある。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。