
S&P 500は前の週に続いて棒上げとなった。PPI/CPIは引続きpivotを確約する結果となった。先週の記事では5400に注目しており「今後5400に再び載せることができれば一気に値動きは安定しやすくなるだろう」「最も好ましいのは5400台でのじり高であり、それが見られれば機械勢のポジション復元にも期待できるだろう」としていたが、早々と5400台を奪還してポジティブガンマ域に戻って来たところで上値余地が一気に広がった形となる。CPIまで通過するとむしろ一旦利食いに押される場面もあったが、木曜寄付き前の小売売上高は堅調な結果になり、ここ数週間の景気後退懸念が更に剥落したことで株式指数は更に上値を伸ばした。代わりに長期金利も上昇したが、引締め懸念が再来するはずもなくアンチ・ゴルディロックスにはならなかった。先週の記事では「5120 -5570という極めて広いレンジの中ではあるが、これまで順張りが必要だったフェーズから徐々に"上か下を試したら動かないので反転"パターンになりやすいフェーズに移行しそう」としていたが、レンジの上半分を一気呵成した形となる。もっとも上限目安としての5570はかなり精密だったとも言える。



先々週に65をつけていたVIXは一気に10台まで下落した。先週までVIXの高さを鑑みるとUSIGスプレッドはもっと拡大すべきとの声が大きかった。それはリスク資産がもっと深刻に調整すべきということにほぼ等しいが、週を終えてみるとVIXの方が先に回復している。VIXの下げは機械勢のショートカバーを誘発する可能性があるが、あまりにも急速にも見え、きっかけさえあれば再びヘッジが入りやすい構図にも見える。

VIXの上昇に伴い、S&P 500先物市場の流動性も一時枯渇した。今後はこちらも修復局面に入ると思われるが、上昇の値動きが続かず早々と再反転した場合は再び引けまでじり安パターンでそれなりの値幅が出る可能性が残る。

GS CTAは指数の下落に伴い大幅にポジションをカットしており、その勢いは4月の調整を超えた。一方、ディーラーガンマは相場の回復に伴い再びポジティブガンマに転じている。


DBのポジショニングもCTAのフリップを観測している。機械勢だけでなく裁量勢も平均以下までポジションを落としており、ポジショニングは総じてかなり綺麗になっている。

バークレイズによるとVolコントロール型も同様である。


決算を概ね通過したところで、2024年分のEPSコンセンサスは下方修正が目立っているが、これはいつものことであり、1yフォワードEPSで見るとまだ下方修正していない2025年分に向かってロールアップする勢いの方が強い。

NAAIMはいつもは逆指標なのに今サイクルの調整では逆指標としても一拍子遅く使えなかった。

行きにせよ帰りにせよ、成長を測る系のマクロ指標への反応が大きくなっている。今週で言うとPMI速報値がそれにあたり、景気減速懸念が再燃するとすればこのタイミングになりやすいのではないか。月初のサームルール絡みの成長懸念はすっかり払拭されているため反発は正しいようにも見えるが、PMI速報値まで見ないとこの高値を正当化するほどの確定感はない。

金曜にはジャクソンホールが控えている。催促相場だった月末の時点ではジャクソンホールでリアクションを示して初めて催促相場が収まるみたいな観測もあったが、まさか9月50bp利下げの論理を述べてくるわけにもいかないだろうから、この位置で迎えたら大して緩和的なイベントにはならないだろう。決算は来週のNVDAまで目立ったものがない。

テクニカル。週足は2本目の大陽線となり、この急落の大半を既に取り戻した形となる。5570は依然レジスタンスとして健在であり、従って先週の記事で想定した広いレンジからまだブレイクアウトしたわけではない。このあたりは8月の本格急落前の水準でもあり、もう少しやれやれ売り由来の抵抗感を感じてもいい気はする。もっとも先週の週足はヒゲが極めて短いながらも下ヒゲ陽線とも言え、5324が週足サポートとなるため、調整があっても5324を下回らない限り押し目と判断される。5324を再び下回った場合は続落パターンに入りやすいだろう。5570を上回っても追いかけるというよりは、次はナスダックの18180、QQQで言うと485がヘッドアンドショルダー右肩レジスタンスになっており、このレジスタンスは強力であるとの認識は改めていない。

右肩レジスタンスをブレイクしたら利下げゴルディロックスに入ったと改めて判断すればよく、その手前までの反発過程で一度過剰なポジションを整理しておけば、どちらが実現するかはともかく、続伸ケースと比べて力尽きたケースの見返りは絶大なものになる。一方でチャートがあまりにも綺麗に素早く戻ったため、機械の買い戻しの勢いも過小評価すべきではなく、ショートで焼かれるのが最もアホらしい。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。