最後まで迷ったらしい7月利上げ
日本銀行の金融政策についての前回の記事は7月会合の直前だったが、まさか7月会合の答え合わせが日本株のブラックマンデーになるとは思っていなかった。7月会合に至るまでの流れを振り返ると、直前リークは明らかにいつもより遅く、会合1日目にあたる7/30が終わるタイミングまで目立った記事がなかった。23:40になってようやくNHKから確実そうなリーク記事が出された。もっともリーク記事も言い切りはせず、0.25%への追加利上げを「検討」「議論」している、また反対する審議委員の存在を示唆した。ただ「植田総裁は、基調的な物価上昇率が目標とする2%に向けて安定的に上昇すれば追加の利上げを行うとしていますが、委員の間では物価は見通しに沿って上昇しているという見方が強まっています」までは言ってあるので、三段論法で利上げ優勢と察することができた。2日目の朝2:00—―この時刻は本ブログ読者ならぴったり当てられるだろう――に日経新聞から最終的なリーク記事が出された。ここに来ても0.25%への利上げが「有力」とまでしか言い切れなかった。それでもほぼ利上げがほぼ決定的と思わせる情報があり、先日の「日銀が利上げしようとするなら決定会合での議決延期請求権の行使もあり得る」への回答のような形でわざわざ「会合に参加する財務省と内閣府も議決延期請求権は行使せず、容認する構えだ」と述べており、政府関係者のスタンスだけは妙に確定的であった。ここまで周囲にお膳立てしてもらったのに審議委員達が決めきれなかったらさすがに情けなすぎるというものである。
これまでの朝2時リークの背景もこの一文で判明したと個人的には思っている。議決延期請求権の行使の有無はもちろんだし、議案には上がったが結論はまだ分からない(しゃんしゃんの会合と異なり、根回しがどこまで済んでいるのか分からないので多数決で勝てそうかどうかまでは判断できない)のも含めて、これは明らかに政府側参加者から見た景色だ。数週間前~数日前の地均し的なリークは恐らく日銀関係者による何らかのレクチャーを受けたものと思われるが、毎回の決定会合2日目の朝2時のリークは1日目に参加した後の政府側参加者からの取材に基づいている可能性が高い。
リーク、声明文、記者会見と続くサプライズ
というわけで、7/31の朝に起きる頃には概ね追加利上げが決まったようなものだった。リークの読み方はともかく、さすがにこの期に及んでリークそのものを信じない市場参加者は失格である。答え合わせイベントになったプレスリリースは0.25%への利上げと国債買入れの減額が発表された。リーク記事からも分かる通り審議委員達の意見は7対2で割れた。前回の記事で「植田日銀らしくない」と疑っていた初めての「引締めと引締めのパッケージ」となったが、7月から10月の間に利上げ1回くらいあるのはさすがにコンセンサスだったと思われ、その3ヶ月は大した違いがないため利上げ自体は青天の霹靂ではない。
それよりも、恐らく植田日銀になってから初めて、リークを超える形でプレスリリースが新しいタカ的なサプライズをもたらしたのである。前回の記事は利上げの有無について「リーク次第、当日朝2時まではリークに警戒も、なければ利上げもない」というスタンスだった。それはいいとして「心理的には初手の利上げペースは今後の利上げペースを想像する手掛かりを与える」まで想像した上で「これは短期金利の累積である長期金利の水準を考える上でもかなり大きな分岐となるが、どちらの結論に落ち着くにせよ、日銀は今回の決定から先々のパスを深読みさせるようなアナウンスの仕方を避けると思われる」とは思っていた。要するに7月利上げがあるなら「3、7月と来たが今後はこのペースで連続利上げを行うわけではない」、ないなら「9月か10月の利上げはライブ」とバランスを取ると考えていたのだが、プレスリリースでは「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の"展望レポート"で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」と、利上げに加えて今後の高い確度の追加利上げまで示唆しており、下手したら「きわめて低い実質金利」からさっさと脱却するために連続利上げもあり得るということではないか。
「実質金利は極めて(非常に)低い」という理由は植田総裁が記者会見でも複数回繰り返し、更に中立金利の水準には不確実性があるとしつつ、今の政策金利水準はその「不確実な範囲よりも遥か下にある」と強調した。今回の利上げを引締め的であるとも認識していない、ということである。更に過去30年の政策金利の上限であった0.5%について聞かれて「壁として意識していない」と発言した。冷静に考えると長期金利の1%超えは当然政策金利の1%超えを想定していたわけで、3月、7月とハイペースで利上げしてきたのに0.5%で急停止するわけがなかろう、ということになるので目新しい話ではないのだが、長期金利の織り込みを知らない人にとって、この壁の分かりやすさが再び仇になったのかもしれない。それどころか、次の利上げで既に政策金利はその0.5%になるわけだが、年内の追加利上げの有無についても「否定しない」程度の表現ではなく、「見通し通り或いは上振れる際にはあり得る」と、見通し通りでもやる気満々であることを示唆した。つまり高い蓋然性で年内には0.5%の壁に到達するということである。質疑応答ではプレスリリース対比で更に一段とタカ的なサプライズだったということである。
極め付けは、これらの急速な引締め転向の背景について、「非常に低い水準にある金利を経済・物価情勢に合わせて少しずつ調整をしておいた方が、先に行って慌てて調整するという事態に追い込まれたときに、ものすごい急激な調整を強いられるというリスクを減らす」と説明しており、これは2年前のFedのようなビハインド・ザ・カーブ(手遅れ)になり、クラッシュ覚悟の急激な利上げを迫られる可能性を認識した上での予防的利上げという整理になる。このような急速な方向転換が行われたのは、円安阻止(通貨防衛としての利上げ)の必要性が強まったがゆえに、結論が先行して決まっていたからではないか。現に記者会見でも「通貨防衛としての利上げ」を隠さなくなり、素早い利上げの根拠として「見通し通り(オントラック)の経済物価データ」に加えて「円安が(輸入物価の再上昇を通して)物価に(かなり大きな)上振れリスクを発生させている」を挙げている。4月会合では「今の円安が基調的な物価上昇率に大きな影響を与えておらず、無視できる範囲だった」と答えて円安進行を招いたのと見比べると実に味わい深い。このように記者会見は「通貨防衛としての利上げ」と「予防的利上げ」のミックスになったということである。普段から「通貨防衛としての利上げ」を唱えてきた本ブログでも蒼ざめるほどのタカさであった。これだけタカ的なら事前に迷っていたのは何だったのか。
日本株のブラックマンデー
前回の記事は結論の決め打ちはできなかったが、事前のコンセンサスからはそうそう外れていないと思われるため、現実のアナウンスと見比べればどこがサプライズだったのかが整理でき、それを行ってようやく7/31以降のパニックの全容を掴むことができる。運が悪かったことに、8/2に米国の失業統計がサームルールをトリガーしたことで一気に景気後退懸念と共にFedのビハインド・ザ・カーブ懸念(つまり7月に利下げしておくべきだった、9月は遅すぎる)が噴出し、米国市場は激しい金利低下とリスクオフに見舞われた。ついでにこれは久々の「引締めすぎ」のリスクオフではなく景気後退懸念のリスクオフであったことからドル安円高を伴うことになり、雇用統計後の週明けに寄り付いた日本株にも景気後退懸念の売りが降りかかった。パンデミック後にグローバル投資家が中国株や香港株から資金抜いて日本株に配分したとも言われているが、それだけにアジア時間のマクロヘッジ需要はこれまで以上に日本株に集中した。それに対して流動性を提供してきた逆張り好きの日本の個人投資家が日銀の利上げで一瞬手を引いたことで需給が大きく崩れたことが、日経平均が1日10%以上も下落した日本版ブラックマンデーを演じた背景である。
Fedでさえポリシーフェイルと言われるなら当然日銀に対してもポリシーフェイルとの指摘が殺到した。日銀の立場からすれば米国の景気懸念など「海外発の不確実要因の一つ」でしかなく、まさか米国景気を見て金融政策を決定するわけにはいかない。そもそも米国景気を当てるのは難しい。しかし、日本経済は米国をはじめとする先進諸国の景気と強く連動しており、本ブログの見立てでは日本経済には普遍的な中立金利は存在せず、中立為替のみが存在する。米国が高金利・好景気レジームの時と、米国が低金利・景気後退レジームの時とでは中立金利は異なると考えるべきだ。なぜなら企業も家計も貯蓄主体である中、企業の収益に与える為替レートの影響は調達コストの微々たる変動を上回るからだ。金融引締めが効く負債主体などタワマンの住宅ローンと日本政府くらいしかないのである。従って日銀は金融政策を決定する際、為替レート(および米国景気)に極めて影響された結論が先行しているはずであり、しかし表向きにはそう言えないため、国内経済の指標や材料をパズルのようにつなぎ合わせて、先行した結論に繋がる道を舗装することもある。それだけに日銀は「海外の経済動向と日本の金融政策の整合性」に対してそれとなく責任を負わされることになる。外部環境に加え、負債主体である財務省からの有形無形の圧力も結論を微妙に捻じ曲げることもある。
皮肉なことに肝心な長期金利はサプライズ利上げが行われたにもかかわらず、すぐに「日銀のポリシーフェイル」を表現する形で0.8%割れまで低下した。それを見て銀行株が利上げサイクル挫折を嫌気する形でブチ売られた。そこまで来ると単純に利上げパスの挫折を織り込ませたところで緩和効果を持つとも思われず、日本の金融政策を巡る混乱は複雑骨折を極めたのである。
中銀プットで時間差ダビッシュ利上げに
筋論で言うと日銀がターゲットとすべきなのはあくまでも物価であり、金融政策で株式指数をサポートするのは日銀の仕事ではない。世間の評論家が繰り出すポリシーフェイル批判の大半は「株式指数の急落を招いた」に集中した。株式指数さえ下落すれば、あたかも答え合わせが済んでいるようなものなので、後から適当な理由を見つけて批判すればそれっぽく見える。その程度のものだ。しかし綺麗ごと抜きに、日本株のブラックマンデーは日銀に強いプレッシャーを与えたに違いない。
8/7の内田副総裁の函館市における講演では「米国はソフトランディング」「物価は2%近辺の推移が続く」「人手不足で賃金は上昇」という前提条件を変えないまま、露骨に株式市場をターゲットとした火消しが入った。曰く、
「先行きにつきましては、結論から申し上げますと、内外の金融資本市場の急激な変動がみられるもとで、当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要があると考えています」
「この点、展望レポートの中で、"金融政策運営については、先行きの経済・物価・金融情勢次第であるが、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく"という考え方を示しました。この考え方は、その前提として、"経済・物価の見通しが実現していくとすれば"という条件が付いています。そして、この点で、ここ1週間弱の株価・為替相場の大幅な変動が影響します」
「為替相場の面では、円安が修正された結果、輸入物価を通じた物価上振れのリスクは、その分だけ小さくなりました。(中略)円安の修正は、政策運営に影響します」
「こうした市場の変動の結果として、見通しやその上下のリスク、見通しの確度が変われば、当然金利のパスは変わってきます。もともと、欧米の利上げプロセスとは異なり、わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません。したがって、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません」
この原稿には2日前の日経平均急落が反映されており、また7月会合で我々が辿り着いたであろう解釈について逐一、否定の解説を行っている。クラッシュ覚悟の連続利上げを迫られる可能性については「ビハインド・ザ・カーブに陥っていない」ので否定された。「通貨防衛としての利上げ」は、150円を割り込んだところだった円安修正を受けて喫緊性が後退した。日銀はいまだに行動の自由を保持しているため、株式指数の急落を招くくらいなら無理に利上げすることはない、ということである。これは先進国の中では類を見ないほど赤裸々に株式市場にスポットを当てた中銀プットであり、海外の経済環境変化に対する金融政策パスの硬直さを否定し、ネガティブ・フィードバックを挿入することで金融市場の不確実性を取り除こうとしたのである。
結局7月会合と内田副総裁講演とで時間差を付けて「どちらの結論に落ち着くにせよ、日銀は今回の決定から先々のパスを深読みさせるようなアナウンスの仕方を避けると思われる」に回帰したわけである。これは逆に、べき論で最終的に戻って来る地点を当てたところで相場では役に立たないことをも改めて痛感するところである。値動きが大きいのは途中のノイズの方だ。とはいえ内田副総裁の講演でも――株式市場にスポットを当てた赤裸々な中銀プットを除くと――経済環境に対する根本的な認識と利上げパスは変わっていないと見るべきだが、年内もう一度利上げがあると覚悟されていたのがすっかり萎んでしまった。「金融市場が不安定の状況で利上げすることがない、ということであれば金融市場が不安定でなくなったら利上げできるのではないか」と考えるのは、デートした相手が「今月は忙しくて」と送ってきたのに対して「それなら来月1日は空いていますか?」と聞くようなものである。
8/23の国会閉会中審査では植田総裁は中銀プットを繰り返すのを避け、7月利上げの正当性を改めて擁護した。それでは内田副総裁の説明とは違うのではないか、というのを「株式指数が戻ったからリップサービスの必要性が薄れた」と単純に解釈することも可能であり、或いは「総裁と副総裁の間で意見の不一致がそれだけ深刻である」という不穏な深読みも見られた。
アカデミックな氷見野副総裁講演
これらの混乱を、これまで金融政策という点では影が薄かった氷見野副総裁の講演が整理していくことになる。氷見野副総裁の講演は市場関係者が気にしている論点を的確に把握していたのが印象的である。金融資本市場の不安定さを認識した上で、「経済・物価の見通しが実現する確度が高まっていく、ということであれば、金融緩和の度合いを調整していく(=利上げ)、というのが基本的な姿勢」であることを再確認した。つまり金融資本市場が不安定でも、それが金融政策に影響を与えるのはあくまでも経済・物価見通しに影響を与え得る場合である。原則として「株式指数が下がったら利上げがなくなる」中銀プットは再び消滅、少なくとも実際にクラッシュしていない限り利上げの「挫折」を織込むのは不可能になったと見るべきだ。更に本ブログがこれまで取り上げてきた通貨防衛的利上げ論の「裏」である「円安が収まれば利上げの必要性が薄れる」も揺らぐことになる。少なくともこの程度の円高&株安の組合せで日本経済がデフレに逆戻りするといった金融政策に疎い評論家達の観測だけは明確に否定された。円安修正の影響は消費においては物価減速による消費の回復、中小企業においてはコスト上昇圧力の軽減、大企業においても「よもや円安だけに頼って利益を上げてきたわけではあるまい」とそれぞれまとめられている。円高がインバウンド需要に、株安が高額品消費に影響する可能性にも触れているが、総じて消費は腰折れしないのをメインシナリオと据えている。つまり円安の修正は利上げ継続を妨げないのである。一方、植田総裁が利上げを急いだロジックとして取り上げ、内田副総裁が否定した「ビハインド・ザ・カーブに陥らないための予防的利上げ」論はこれ以上登場せず、この話はどうもそれっきりになったようだ。これは7月会合の説明が前のめりであり、内田副総裁の方が妥当だったという裁定になるだろう。結局、大事なのは日銀は引続き行動の自由を保持しているということである。利上げを迫られてもいなければ、利上げサイクルが挫折したわけでもない。挫折したわけでないなら――それが今年中になるか来年になるかはともかく――当然残り1回以上は利上げが控えており、その時点で政策金利は0.5%まで上昇するわけなので、近い将来に長期金利が0.5~0.75%の区間に回帰する可能性は低いだろう。一方、先行する先進諸国が既にかなり深い利下げサイクルに差し掛かっていることが分かっている中、時間の経過と共に日銀の政策金利が予定通りに引き上げられるだけなら、長期金利はだんだん不感症になっていく可能性が高い。長期金利が1%を大幅に上回る可能性は引続き限定的である。
講演、というより講義では、パンデミック後の日本の物価動向、具体的には欧米対比で上昇しづらかった背景についても取り上げている。円安が進んだ日本の輸入物価の上昇は欧米よりも激しかったが、それは交易条件の悪化(国民全体で所得減)にも繋がり賃金が上がる余力が薄かった。賃金≒サービス業物価、そして家賃が上がらないため、財のみのインフレは諸外国に遜色しないものだったにもかかわらず、日本の物価上昇幅は大きくなかったし、従って急激な利上げも必要なかったという整理になる。今後も必要ないだろう。一方で講演はこれまでの非伝統的な金融緩和についても振り返っており、波及経路として(教科書的な企業資金調達コスト低下よりも)株式や不動産といった資産価格の役割の大きさを取り上げている。またそれが割安域からの修復ならポジティブだったと評価できるものの、基本的に将来の非伝統的な金融緩和の多用に対して否定的なスタンスを確認できる。なお交易条件が最も悪化したのは2022年であったが、本ブログも経常収支の最悪期が2022年であったと述べていたのと重なる。にもかかわらずドル円の最悪期が2024年になったのは金融政策(金利差)のせいである。
再び米金利次第になるドル円
財務省の為替介入、米国の利下げ転換、日銀のポリシーフェイル芸とも言える利上げの三本の合わせ技により、6月に過剰なまでの円安が進行した分は剥落し、ドル円のレートは再び日米金利差で概ね説明できる水準に戻って来た。本ブログは長らく「ドル円が150円より上なら7月利上げ、150円より下なら7月利上げなし」としてきたが、それと似たような発想で「ドル円が160円より上なら年内再利上げ」説も出てきた。為替のハードルはそこまではさすがに高くないと思われるものの、150円さえも超えないなら日銀は引続き円安阻止の責務を負わされず、Fedの金融政策を落ち着いて観察できるようになるだろう。日銀が再びパッシブになれるなら、今後のドル円レートも日銀の金融政策も米国の金融政策次第という色が次第に強まり始めるのではないか。代わりに日銀のスタンスの方からドル円レートを論じるのは困難になるだろう。つまり再び為替は再び米金利次第になるということである。ドル円レートの考え方はまずデュレーションリスクでヘッジできないタイプの円高リスクがあるかどうかを点検し、ないならデュレーションリスクを充てれば十分であり、それでもレートを予想したいならばまず米金利を予想すべきという順序になる。元はと言えば6月会合でさっさと国債減額を決定し、続いて7月会合で粛々と利上げしていれば変に円安に走ることで発射台を高くしてから転落することもなかった。植田日銀の特徴である「3で割れる月のハトさと展望レポート月のタカさの落差」が今回も炸裂したことになったが、招いた混乱があまりにも大きかったため、年後半以降は脇役に戻っていくと思われる。
要約
・7月会合は「通貨防衛的な利上げ」「予防的利上げ」と極端にタカ的だった・日米中銀の金融政策のちぐはぐさは8月のブラックマンデーの一因に
・内田副総裁講演では株式市場に注目した露骨な火消し(中銀プット)
・氷見野副総裁講演では利上げ挫折説を更に否定、引続き利上げは視野に
・一方、ビハインド・ザ・カーブ懸念や予防的な利上げ説は消滅
・長期金利の0.75%割れも遠い一方、1%を大幅に上回る可能性も引続き低い
・ドル円レートは再び日米金利差で説明できる水準に。今後も同様に米金利次第か
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。