FOMCの週だった。週初めはまずiphone16の需要不足懸念でAAPLが売り込まれ、代わりにMSFTが自社株買いと増配を発表して一時上昇したものの、総じてラージテックにはFOMCに向けたヘッジが先行した。これは結局最後まで概ね60:40の織り込みで突入したことになったためである。前回の記事では「FOMCは直前の織り込みを尊重するであろうから当日はこれまでの指標の日ほどは荒れないと思われるが、綺麗に50: 50で突入しそうな場合は事前ヘッジが入りやすいだろう」としていたが、果たして当日は事前にかなり無理しながらも多数派まで押し込んだ通りの50bp利下げが実現することになった。50bp利下げの可能性については「堅調なCPIで25bpで決着しそうになっても株式指数は大して下落しなかったのだからそれでよかったはずなのに、週後半になって改めて50bp利下げを織り込ませようとする動きが妙に目立った。今のところ50bp利下げを唱えているのは主に昨年引締めが足りないと言っていたメンツと被るのが筋悪であり、そういう意味で再剥落のリスクオフでやられるのは大変アホらしいが、仮にFedの方の意向だったとすれば2023年12月FOMCと似たような展開も想定される」と想定していたのだが、やはり我々非駐投資家が米国市場で盛り上がる利下げ織込みを蚊帳の外から眺めて納得できない時は蚊帳の中が正しいという2019年の調整利下げ局面を追体験することになり、2023年12月FOMCと似たような展開は当日NYが引けてからやってきた。
FOMC当日の株式市場は反応に困っていた感が強く、どちらかというと上がったところに、おそらく以前から計画していた通りに売りをぶつける動きの方が大きかったのである。もちろん「50bp利下げの方がFedが悪化のデータを知っていると市場に思わせることになるので株が下がる」なんていうのは、盛り上がる50bp利下げ織込みに付いて来れなかった人間の捨て台詞に近い負け惜しみの戯言でしかなく、市場参加者が知らないような知見をFedが持っていたらこの利上げサイクルで何も苦労しなかったのである。過去の初利下げ後は景気後退や暴落が続くことが多かった、という議論もGDP 2%台の下では取り合う価値がない。
とはいえ初手から50bp利下げを放り込むと当然次やその次まで50bp利下げ織込みが進んでしまうというアキレスと亀の利下げ織込みに翻弄されるのではないかと思われたが、FOMCでは今回のペースは標準にならないと亀に釘を刺している。これは当日にはホーキッシュ利下げとも思われたようだが、ホーキッシュ・サプライズ50bp利下げなどというものが存在するはずもなく、ホーキッシュというのもやはり50bp利下げがないと言っていた人達の負け惜しみの捨て台詞として考えて差し支えない。アキレスの利下げ織込みが抑制されたことで金利のインプライドVolが低下したことの方が重要であったことに翌日から市場参加者は気付いた。
GSのCTAポジショニングは9月末まで買い戻し優勢であり、10月に入るとどのシナリオでも買いにならない。もっともこれまでの経験では実際にトレンドが下向きにならないと、時間切れという理由だけでフリップしたことはあまりない。Volコントロールも大半の買い戻しが済んでおり、買い戻しのドライバーの座からは外れる。
DBのシステマティック勢のポジション復元はもう少し遅れている。一方、裁量投資家はもう復元する気もないといった様相である。
Op Exを通過したことでディーラーの厚いガンマロングの一部が消滅したと考えられる。教科書的には指数が動きやすくなるということであるが、これまでの値動きの形跡を考えるとプットロング建玉はOp Exを待たずに実質的に消滅しているので、コールロングが消滅して上がりやすくなるという解釈となる。9月の場合は更に月末失効のJPMカラーの5750コール売りが残っており、5750より上は月末まで重いと思われる。なお3ヶ月前にメモしていたのは5770であり、このカラーの水準は毎回10~20ポイント間違えて覚えている。今期末にロールした分も20ポイントほど間違えるだろう。
今年の自社株買いは旺盛ではあったようだが、先週から自社株買いは完全にブラックアウトに入っており、抜けるのは10月後半である。依然最大の下落要因はシーズナリティである。
決算期はここ数ヶ月需要不足懸念が燻ぶった半導体セクターの先行きを示唆するマイクロンから始まる。
NAAIMは徐々に楽観に戻り始めているが、過去最高値の割りには総楽観になっていない。FOMC後のラリーがあまり広く受け入れられていないことを示している。
テクニカル。S&P 500の過去最高値更新によりダブルトップシナリオはなくなってしまい、利下げサイクルにおける新高値に逆らうのは不利である。「高値を更新したもののそんなに上に飛ばない」を手掛かりにショートを入れているとズルズルと持っていかれるリスクがある。日足レベルではFOMCの5615がサポートとなり、まずは5615 -5750のレンジに移行できているかを確認する時間帯となる。5615をブレイクした場合はFOMCの解釈を見直す流れになりやすいだろう。先週のラリー局面ではS&p 500の5750が意識されたのに加え、ナスダックの18180という古いレジスタンスも堅牢であった。ナスダックのアンダーパフォームを反転させるには18180を突破する必要があるだろう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。