
S&P 500は週を通してみると小動きになった。先週の記事では「月曜引けにはどこかが保有するJPMの5750コールが消滅するので理論的にはアップサイドが広がるが、ボラティリティが高まりやすくなる解釈も可能であり、果たして。5750は上方にブレイクされたと言って上に飛ぶタイプのレジスタンスではないため、先週の記事で取り上げた5615 -5750レンジはまだ健在であると判断される。ナスダックの18180は突破されたため過去最高値までレジスタンスがない状態であるが、こちらも同様に今更感がある。上に飛ぶ決定打には欠けるものの、ニューショートをトラップできるような押し目があれば拾えそうではある」としていたが、概ねイメージ通りの週となったと言えるだろう。

月曜は5750のコールの蓋が取れたのを確認する形で引けにかけて上値を伸ばした。しかし火曜の寄付き前後にイランによるイスラエルへの弾道ミサイル攻撃が差し迫っていると米国が警告したのを受けて激しいリスクオフとなった。長い攻撃待ちのヘッジが続くとも思われたが、火曜の日中に早速着弾が確認されたところでショートカバーになった。その後も雇用統計を控え地政学リスクが燻ぶる中で上値が重い日が続いた。金曜の雇用統計は堅調であり、11月の大幅利下げ織込みが吹っ飛んで金利は大きく上昇した。同時にヘッジ外しと、景気後退リスクも剥落したことでリスクオンとなったが、そこからは恐らく週末に中東の地政学リスクを恐れての利食いで押され、NY午前には一旦売りに押された。なお9月FOMC以来、どの営業日も必ず一旦手動利食いと思われる売りに1日1回は押されており、上げようと下げようと(下ヒゲになろうと陰線になろうと)寄り底になったことだけはない。

先々週から漠然とVIXが下げ渋っており、特に中東の地政学リスクを受けてVIXは大きくブローアップしたが、その割には動きが小さい週が続いたことから、VIXとリアライズドVolの格差が大きく跳ねている。大統領選が近いからという漠然とした理由もあるが、いずれにしろ過剰ヘッジである。

GS CTAは指数が堅調であったこともあって、ポジションは重めながらも売りフリップがグダグダと先延ばしになっている。このパターンを我々はたくさん見てきた。

DBのシステマティックポジションもだいぶ復元が進んできた。

EPSの伸び率は鈍ったままであり、それを2019年パターンのように金利低下によるバリュエーション膨張が支えてきたという認識でいたが、金利も大きく反発したことから、リスクオンの雰囲気の割りには金曜のS&P 500は伸びなかった。

もっとも景気後退リスクも同時に大きく剥落したため、アンチゴルディロックスになるほどでもなかったわけである。非リセッション下の初利下げ後、指数は一旦は下押しするもののその後大きく伸びるのが過去パターンであり、現在の堅調さもそれに沿ったものになっていいる。非リセッション利下げパターンの方に当てはまるのはさすがに決定的になったのではないか。


シーズナリティは10月末から劇的に改善するが、それまでまだ3週間ある。自社株買いは完全にブラックアウトに入った。

インサイダーについては、NVDAのCEOに続いて幹部達の換金売りが目立つが、全体で見るとそこまででもない。

NAAIMは地政学ヘッドラインで動けないのもあって横ばいが続く。
テクニカル。週足は小さな下ヒゲ陽線となっており、5670はサポートとなる。これは9月FOMCでそれまでの長いダブルトップを上にブチ抜いて以来のレンジの下限でもあり、これを割り込まれると9月FOMC前のレジームに逆戻りになる。レジスタンスとしては5750はまだ健在と言えなくもないが、調整は水準としてのレジスタンスよりも地政学リスクなどのヘッドラインに誘発されやすいだろう。それが起こらずじり高が更に続くようなら過剰ヘッジの炙り出しが見られるだろう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。