S&P 500はヘビーな決算週を大幅下落で終えた。弱い週となること自体は先週の記事で十分に想定されていたことであり、「テクニカルには週足の下ヒゲ陽線期間が中断されたことで5878がレジスタンスとなる。特に金曜の値動きはそれを確認した。もちろん週が明けて調整の雰囲気があっさり中断し、5878があっさり突破されたらいよいよ6000が見えてくるが、それが実際に起きるまで引続き週足チャートは小休止を示唆する。ヘッドラインが多い二週間となる中、長期金利が更に上昇すれば明瞭にオッズが悪化するが、そうでなければ基本的に個別決算への過剰反応は受け流す方向性でよいと思われる。大統領選通過後に改めて上値を追い掛けることになっても大して悔しくない位置にはいるので、引続き振り落とされないようにリスクを抑えたいところである」としていた通りの展開であった。調整のきっかけとしては「だいたい以前の記事で超えないだろうとしていた4.3%を突破すると株式指数のクラッシュを伴いやすいだろう。ここまで来ても米金利そのものは基本的に懸念していないが、荒れるとすれば意外と日本銀行の決定会合直前のリークがきっかけとなり得るか」と長期金利上昇を挙げていたが、長期金利は実際に4.3%を付け、その2日後に指数の下落が本格化した。きっかけは――タイミングはほぼ合っていたものの――あくまでも日銀ではなくイギリス国債市場である。
火曜引け後の決算はAMDが滑り、GOOGLがよかったのがオフセットして水曜は横ばいとなり、木曜はMSFTとMETAが決算で同時に売られたのをきっかけに指数も売り込まれた。下げ幅は1.86%と限りなく2%に近付いたものの辛うじて2%下落は回避された。その後はINTCとAMZNの好決算と雇用統計通過をきっかけに金曜は切り返して始まったものの、週末と大統領選を前にして引続き上値は重く、まるで前日2%下落があったかのような小十字に近い横ばいになった。引け近辺で反落したため前日の1.86%下げでも機械を誘発したのかと思えたが、その前に長期金利が4.3%を大きく突き抜けたのも大きかったと思われる。決算に限って言うと個別銘柄に振り回される必要がなかった。
それでも大統領選前の警戒としては債券のインプライドVolが突出しており、株式も含めて他の資産はそうでもない。これは主に既存ポジショニングの影響と思われるが、債券のインプライドVolがVIXに染み出したとしても文句は言えない。現に10月はS&P 500もマイナスパフォーマンスになってしまった。
GS CTAはメインシナリオが再び上向いてきた。リアライズドVolの低迷が続く限り、大統領選をとにかく通過すれば買い戻し圧力がかかりやすいということか。
NAAIMは少しだけ楽観化しているが大幅な変化ではない。インサイダーの売りラッシュは止んだ。
大統領選の投開票が5日に控えている。多くの州で僅差が予想されるため2016年以前よりは結果判明が遅くなる(早くても日本時間午後)と思われるが、パンデミック下の2020年のように郵便投票の配達が大幅に遅れたとも思われないため、結果判明に数日かかる可能性も低い。下院は大統領よりだいぶ遅いため、結果判明までに過去の大統領と下院の高い相関を頼りにする時間帯が存在する。これまで金融機関はベッティングサイトを後追いしてきたが、肝心のベッティングサイトはここに来てコイントスに戻っている。これは当日に向けて金融市場にとっての不確実性が戻ってくる可能性を意味するのと同時に、金融市場はカンニング元を最後までカンニングせずトランプ・トレードは巻き戻っていないため、基本的にハリス大統領を想定した方がオッズがよいと思われる。トランプ当選でも減税だけを手掛かりに株式を買うのは無理があるという声も高まっており、もしよく分かっていない市場参加者が主導するアジア時間に結果が出るなら、トランプなら2016年の逆、ハリスなら2016年に近い展開を辿る可能性が高い。FOMCも控えているが確実な25bp利下げが予定されており大した波乱にならないだろう。むしろFOMCで長期金利の無秩序な上昇を抑えにかかる必要がある。決算期は単独銘柄で指数を動かす局面を通過し、それに伴いブラックアウト期間も明ける。
テクニカル。週足では5878が引続きレジスタンスとなるがすっかり遠くなった。その前に上昇トレンドに戻るには日足でもまず25SMAにも当たる5772をブレイクして小十字疑惑を取り除かなければならない。サポートは古いものを漁ると5670が出てくるが必ずしも強いわけではない。先週の記事で取り上げたBofAのガンマ・プロファイルが変わっていないとすれば、5650を下回るとネガティブガンマ域に入るため不安定化が加速しそうである。
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