
S&P 500は久々に見るブラッドバスになった。月曜3/31は広く予想された通り、月末絡みのテクニカルなフローが錯綜する中で寄り底に近い陽線となり、「解放の日」を前にやることがない火曜4/1、水曜4/2もふわっとした反発になった。「解放の日」は水曜4/2の引け後であり、一律10%の普遍的な関税というヘッドラインが流れた時に一時ショートカバーが走ったが、本丸はその後であり、10%をボトムとする各国向けの「相互関税」が発表されると一転して時間外で暴落した。木曜4/3は下放たれで始まってから続落し、金曜4/4は寄り付き前に中国が報復関税を放り込んできたことで更に大幅続落となった。雇用統計へのヘッジはある程度済んでいたが、そのショートカバーで関税のヘッドラインを跳ね返すには力不足であり、更にパウエル議長が様子見姿勢を芸もなく繰り返したことで下落が加速した。

先週の記事では「今のところ市場では"景気が減速してもFedが利下げできない"という間違ったテーマが優勢であり、それにより本来債券買いで行われるべきマクロヘッジも株式指数売りで行わざるを得なくなっている。従って経済指標への株式のリアクションの仕方は長期金利次第になると考えられ、どこかで長期金利が大幅に低下すればアンチ・ゴルディロックスの魔法が解けることになるが、それを実際に観測できるまでは顔面着地リスクが引続き高い。逆に長期金利の大幅低下さえ観測できれば、たとえリセッショナリーな経済指標が出たとしても恐れる必要はなくなるし、むしろショートが禁制になるだろう。3月FOMCは関税インフレのノイズは世間の謬論と違って少なくとも金融緩和方向の施策を妨げるものではないことを行動で示したが、5月利下げを予告するまで至らなかったのは間違いであり、5月FOMCまでの1ヶ月半はあまりにも長い」としており、純粋に長期金利で見ると大幅に低下したように見えなくもないが、その低下幅は株式の想定以上の下げと比べるとやはり甘く、金曜のパウエル講演も含めて謬論の方の優勢が続き顔面着地した感が否めない。「関税インフレのせいでFedが利下げできない」という謬論の方を素直に信じていたら、長期金利ビュー自体を外したことになっても、もっと豪快に株式指数をショートできただろう。
それでも、「かねてから注目されてきた年金基金の月末リバランスの株式買い戻しの規模をGSは41bnと推測する。これはショートカバー局面に当たれば上昇の燃料となるが、反発局面でポジションを外したい機関投資家が待ち構えている場合は吸収されてしまう。同じ月末では5565のJPMカラーのプット買いが失効する。残り1日ではあるが5565を叩き割られた場合は下に走りやすそうであるが、その構図は31日引けで一旦消滅する。もっともその手のテクニカルで上げたとしても"解放の日"まで持ち越すのは困難である」「3月上旬から想定してきたように中期的なダウントレンドに転換している可能性が高く、先週の展開からも分かるように、上げを取る方が、少し前に下げを取るような投機であるとの自覚が必要となる。もちろんこれは上げがないことを意味するわけではないし、今週のイベントは内容はともかくタイミングはほぼ全てオープンリーチであるため、3/27のようなショートカバーもちょいちょい見られるだろうが、イベントに向けた事前ヘッジの定刻カバーが唯一の買い手と思われ、裁量勢はもちろん、上で見てきたように機械の買いも出て来さそうなので、カバーが済んだところは再び売りに押されやすくなると思われる」としていたのは、3月末にあたる週前半のテクニカルな堅調さまで含め、週間の値動きをかなり精密に予想できたと思っている。「週足は再び大きな週足上ヒゲ陰線となり、5787は週足レベルのレジスタンスとなる。従って先週5800台としていた売り場は少なくとも5700台まで降りて来る」としていたが、「解放の日」前の高値は5695であった。
それだけに、2月Op Exから始まる今サイクルの急落を予想し――ショートで稼げたかどうかは別として――ロングによる損失の大半を回避するのは決してたどり着けない境地でもなければ、難しい作業でもない。ここまでの間に調整を全く予想できなかった人間の発信はもはや今後参考にする価値がないとさえ言えるだろう。政治のヘッドラインについても「解放の日」の激しさまでは予想できないにしても、本ブログはカナダ・メキシコ関税の時点から「関税は歳入を毟るのが目的であり、ディールのためではない」と結論付けており、「ディールの芸術」を信じている市場参加者は政治の補習も必要である。
JPMのJHEQXが保有する5565プットはこの相場でも滑稽なことにITMにならないままエクスパイアを迎えた。6月末エクスパイアのJHEQXは5880コール売り、5290プット買い、4460プット売りとなっている。プット買いのストライクを既に通過しているが、満期までまだ3ヶ月あるためまだ慌てるような時間ではない。


金曜のオプション出来高は空前の規模となった。現物の出来高も同様である。普段なら出来高の急増は出尽くしを意味するが、果たして。

GS CTAは既にポジションを過去対比でもショートに寄っており、今回のクラッシュの恩恵を受けている。本ブログはネットに既に落ちているスクリーンショットしか拾えないので3/31時点のものしか手元にない。

DBの統合ポジショニングもだいぶ削減が進んでいる。こちらでもシステマティック勢が素早くアンダーウェイトにしているのに対し、相対的に裁定勢のポジション削減が進まなかった。これは今回のクラッシュの特徴である。

BofAもCTAのショート継続を描いている。

バークレイズの試算でもCTAは米株の売り越しが進む。

CTAは今更売り涸れているが、リアライズドVolが急上昇したため、BofAは月曜4/7にVolコントロールの大幅な売りを見込む。木曜4/3、金曜4/4共に下げ幅が2%を超えたため、金曜4/3と月曜4/7の終盤に機械勢の売りが降ってきやすいのは教科書通りである。

JPMによると、個人投資家は木曜4/3に大きく買い越してから、金曜4/4の続落局面でぶん投げている。

今回の下落局面の最大の癌がNAAIMである。さすがに徐々に悲観化はしているものの、そのペースは値動きの激しさ対比ではあまりにも遅く、これはDB裁定勢の売り遅れや、この間までのFMSのキャッシュ比率の小ささと一致している。これほどまでにアクティブ機関投資家のセンチメントは逆指標なのである。

一方、GSのセンチメントインジケーターは過去対比でも総悲観に近付いており、過去の経験では2週リターンが改善する領域に入っている。

週後半には米銀決算が始まる。これまではJPM決算前日に金融セクターを仕込んでおけば報われてきたことが多いことが知られているが、さすがに今回はやや怖い。決算期に入るということは、自社株買いブラックアウトがまだ続いていることを意味する。
ここからの政治ヘッドラインの予想は困難である。4/5から諸外国への一律10%関税が開始されるが、「解放の日」の一律10%のヘッドラインが流れた時は5700を上回るショートカバーという反応だったため、その後10%以上調整した指数は、カナダ・メキシコ・中国以外の国々に対する10%を遥かに上回る平均関税率を織込んでいる。という中で、4/9の上乗せ分発動までの間、ベッセントの言う「解放の日の税率がキャップになる」という言葉を瓦礫の中から掘り起こしてみると、更なるバッドニュースとしては、中国の報復関税まで既に通過しており、残るは欧州からの報復関税のヘッドラインの可能性のみである。欧州の反応が透明になれば「ニュースの陰極」は通過したと認定できるだろう。
まさか週末の間のグッドニュースを期待してロングで跨いだ市場参加者は非常に少数だっただろうから、週末の間に追加のバッドニュースが特段なかったことを考えると、残る命題は「最後まで取り残された拙劣な裁量勢機関投資家の投げが金曜1日の間に出尽くしたかどうか」である。気持ちとしては当然週末の間に売り切りたかっただろうから、流動性の制限で売り切れなかった可能性も想定されるが、果たしてそれが起きたかどうか、前もって判断するのは我々個人投資家にとって困難である。もっとも、今後は日足ベースの切り返しが一度でも見られれば、そこで売り涸れと判定できるのではないか。もちろん、それ以前に4/7月曜は2%超え下げの翌営業日に当たるので、引け前のVolコントロールの売りをまずこなす必要がある。その後については、ここまでの調整における傷が浅く、また過剰なレバレッジで首の皮一枚になっていない限り、下値を叩く必要性をもはや感じない。あまりにも急激な下落の後なのでテクニカルは手掛かりがなくなっており、高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変にエイヤーで対処することになる。
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