
S&P 500は二番底らしき下落を経て大幅に反発した。月曜4/21はアマゾンのデータセンターリース停止についてのレポートでAI供給過剰リスクがテーマとなり、ファーウェイの新型AI半導体量産のヘッドラインも材料にされた。しかし月曜が引ける前から押し目買いが入り、火曜4/22からは一転して連日上昇が始まった。米中間の貿易摩擦について、徐々にではあるが双方からポジティブなヘッドラインが飛びはじめた。もちろん否定のヘッドラインもあったがそれらがもたらす下落は限定的となった。木曜4/24引け後のGOOGL決算は無難に通過した。クリーブランド連銀のハマック総裁が条件付きながら6月利下げを否定しなかったことでややゴルディロックス気味な展開にも見えた。

年初まで言われてきた「米国例外主義」トレードは最近ないペースで反転した。それが米国の連日のトリプル安の背景でもあるが、関税経済に加え、関税経済への対応の違いを巡る対立の結果、先週末のパウエル議長の解任騒ぎまで発展したため、「中央銀行の独立性」懸念まで加わった。もっとも4/22火曜にはトランプが折れてパウエル解任を否定したことでこの話は終わっている。先週の記事では「機械勢はさすがにこれ以上売りに回らないだろうから、裁量投資家が投げ終わったらそこで下落局面は終了となる。それが終わるまでが長いのだが、基本的にここから裁量投資家と一緒に売る、特にヘッドラインを追いかける形で売るとあまりいいことがなさそうである」としつつ、「色々言われている中、マクロな不確実性は既に後退しはじめており、残っているのはあくまでも米株自身の懸念である」と判断したが、「米株自身の懸念」というテーマも月曜1日でやり切った形となり、火曜から米株はキャッチアップを始めたのである。

強気一色だった投資銀行達がS&P 500の目標を引き下げ始めた。


GS CTAは非常に低いポジション水準から5月上旬まで買い戻しが続くとしている。

BofAのCTA推定も概ね同様である。



Deepseekショック以来、HFが売り、個人投資家が拾った構図が明瞭である。現物を見てもオプションを見ても個人投資家は下げ局面で買っている。0DTEは後日利食うという行為がないのでいいとして、現物の方はいつどのようなきっかけで売りに回るか。

年初来でイントラデーで2%以上動いた日は5日に1日の割合を超えた。2022年、2020年以来である。このボラティリティではCTAを除く機械勢は再装填どころではないが、落ち着いて来ればどこかで機械勢の復元が見られるだろう。そういう意味でツイート一つで上下に動くのもそうだが、暴騰でしか上がらないのは必ずしも健全ではない。


SWFによる米国への直接投資が鈍ったという観測さえあり、そんなに鋭敏に分かるのかと疑っているのだが、仮に海外投資家による米株売却の動きが長続きするなら米株と米ドルのダブル安の長期化が正当化されることになる。

先週の記事で取り上げた残骸のようなガンマプロファイルは、5200近辺の山は役に立たなかったが、5350から5650にかけてのネガティブガンマ域は重要だった。「何かの拍子で5300台後半までラリーできれば、かなり久々に"アップサイド手当不足のネガティブガンマ域"への突入が見られるだろう」としていたが、この領域内のショートカバーは教科書的であったと言える。そういう意味では今現在もネガティブガンマ域内のショートカバーが継続している。新たに流れてきた最新のディーラーのガンマプロファイルは、コール買いを受けすぎたのか、むしろアップサイド手当不足が悪化しており、CTAの買戻しトリガーともされる5750を万が一ブレイクした場合はショートカバーが加速しやすそうである。

先物市場の流動性は少しだけ戻って来た。

アナリストによる見通し下方修正が続くにつれて各年度のEPSコンセンサスが減速している。もっともロールアップ込みのフォワードEPSで見ると概ねフラットが続く。米ドル安は米株への悲観的な見方を先取りしていることが多い一方、今回はトリプル安が先であり、因果関係で言うと2022年の経験からGAFAMなどは米ドル高の方が減益要因になるはずだ。

通商政策がもたらす経済減速でEPS減速という論法が悲観論の背後にあるが、少なくともGAFAMのマージンは高水準に維持されている。結局のところ米株も米ドルも「GAFAMがほしいか」に帰着するだろう。つまり米株が上値を試せる唯一のシナリオが、景気減速下のゴルディロックス気味の債券とGAFAM限定のダブル高ということである。



月末を通り過ぎた週後半にはマグニフィセント7決算が再び集中し始める。マグニフィセント7は今のところどれも決算で滑っていないが、その勢いが来週も続くかどうか。先週までの荒れ具合だと決算どころではなかったのだが、期待もなかった中でのリリーフラリー局面なので、ポジティブ決算は報われた。一方で今期決算は所詮バックミラーなので、高い位置で迎えると決算で改めて上に吹っ飛ぶということは難しそうだ。決算期の自社株買いブラックアウトはもうすぐ明ける。

NAAIMは少しだけ楽観化した。今サイクルの調整でNAAIMを先行したGSセンチメントは中立近くまで戻って来た。もしNAAIMが追い掛ける形で急反発した場合は売り場となるだろう。

テクニカル。先々週から引き継いだ5200 -5530レンジは、月曜4/21に下方にブレイクされて一度下に走った。もっとも火曜4/22から反発してレンジ内に戻っており、金曜4/25はレンジ上限に極めて近い5528で引けている。レンジ内では「水曜4/16からの下落マイクロトレンドの終了を宣言できるのは5330超えであり、そこをブレイクできれば雰囲気がだいぶ改善する」「5330より上の上値については、先週超えられなかった5500近辺で再び重くなるだろう」としていたが、5330は夜間にワープしており役に立たなかった。レンジ内で上げを追い掛けるのは心理的抵抗が強かったと思われ、とにかくその前に裁量投資家と一緒に下値を売ることを拒否する羞恥心を信じることが大事だったということになる。週後半に5500レジスタンスは2度ほどワークしたが、金曜のゴルディロックス気味の流れの中で突破されている。スティープすぎるレジスタンスやサポートラインは好きではないが、世の中一般では2月Op Exからのダウントレンドを金曜4/25にブレイクしたことになっている。素直に日足を見ると金曜の下ヒゲ陽線のヒゲ5455がサポートとなり、5455がブレイクされれば5200 -5530レンジに逆戻りする。月末は月中の値動きの逆張りのリバランスが入るとすれば米株とドルの買戻しになりやすいはずだ。続伸した場合の上値余地は週足と日足の50SMAに挟まれた5600台半ばというところか。ローズガーデン関税前の戻り高値と200SMAが集まる5750は強いレジスタンスとなり、またその水準はローズガーデン前後の値動きから「一律10%関税」に相当するレベルなので、交渉中に、大幅な金利低下によるゴルディロックス化がない中の5750への接近は許されづらいのではないか。
5月に入ってからの頼みの綱は機械勢の買い戻しと自社株買い、具体的には「ニュースフローがない中のじり高」に移行できるかどうかである。一度でも例えば「海外時間で大幅安→米国時間でフラットまでも戻せず大幅続落」を経験したらじり高モードが終わってしまう。機械勢の買い戻しが支える堅調さの間にファンダメンタルズから上昇を講釈する人が増えたらそこは逃げ場となるだろう。或いは通商関連のグッドニュースが出ても上値の伸びが悪ければ降りどころとなる。とはいえ週足は、レバレッジをかけてロングするには長すぎて役にたたないが、しっかりとした週足下ヒゲ陽線となっているので、4月の急落の二匹目のドジョウを狙うショートはワークしづらいだろう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。