
S&P 500は米国時間週末のジュネーブでの米中合意を受けて上方向に大きく窓を開け、そのまま一直線に続伸した。前回の記事などはせいぜいじり高しか想定しておらず、ナスダックの17500だけ分水嶺に挙げ、売り場については5900など想像もしないままOp Exの日柄だけを想定してきたが、一週間で世界がすっかり変わってしまっている。マクロ指標はもはや誰も見ておらず、金利高株高のリスクオンの一週間となった。そういう意味で債券利回りを挙げて「TINAではない」と述べたのは余計であり、米株は「代替先」を大幅にアウトパフォームした。

Op Exは5/16金曜に通過した。不思議と5900近辺では少なかったが、5700~5800近辺のコールの山は満期を迎え、買い手は自然利食いとなり売り手のショートカバーニーズも消滅する。JHEQXのカラーは当日に調べたストライク水準と、数ヶ月経ってから市場参加者が改めて口にする水準が微妙にずれているのは毎度のことであるが、3月末に建てられた6月末のカラーも同様である。4月の記事では5880 /5290 /4460とメモしているが、世の中的には5905 /5310 /4480ということになっている。いずれにしろ、6月末まで残り一ヶ月半あるのでまだそこまで影響は大きくないと思われるが、5900より上は6月末までの期間にかけてコール売りを吸収したマーケットメーカー側の利食いが出やすいだろう。

一連の騒ぎについて、Bloombergは「ヘッジファンドなどプロの投資家ら、ウォール街のいわゆる"スマートマネー(smart money)"は株を投げ売りし、ストラテジストは顧客に市場から手を引くよう呼びかけた。だが、個人投資家を中心とするいわゆる"ダムマネー(dumb money)"はそう考えなかった。彼らにとって株式市場は突如、バーゲンセール状態になり、買い控えるのではなく買い時だと判断した」とまとめている。しかし情報格差が縮まった現代においてはこの分類はもはや適切ではなく、収益を求めて自由に最善の行動を取れるHFはともかく、挙動が予想され尽くしているルールベースの機械系や、個別企業のリサーチアルファを行動の遅さと説明責任が食い尽くしているプロの機関投資家はダムマネーに分類されるべきだ。上長やスポンサーからスマートと信用されていないから投資行動に説明責任が発生するのであり、AAIIよりもNAAIMの方が逆指標として秀逸であるのも、まさに機関投資家がダムマネーだからである。

ローズガーデン以来の行き過ぎた関税の巻き戻しはEPS予想の小さな反発を招いた。結局アップル以外のマグ7が決算で滑らなかったからでもあるが、これは5000割れからの反発トレンドの存在を正当化する一方、長期金利が下がらない中での最高値更新までは示唆しないだろう。

GS CTAは予定通りの買戻しが続く。先週5日連続の陽線になったことが、引け近辺の機械の買いの勢いを示唆するだろう。相場が再び下向きにならない限り、5月下旬まで買戻しが続くと思われる。先々週の記事から注目してきた「ローズガーデンが抜けることによる1ヶ月リアライズドVolの急低下」は実現しており、Volコントロールの買戻しを誘っている。

スマートな個人投資家が愛用するレバレッジETFは再び元気になってきた。NVDU等だけはNVDAの反発にもかかわらず投資家が駆逐されたままであり、一方TSLL等はTSLAを追い掛ける形で人気が続く。

Op Ex前だがディーラーガンマはかなりの上方リスク手当不足の深いマイナスガンマだった。事前にこのチャートを見ても想像力が足りず予想できなかったが、中国との相互関税一時停止のヘッドラインがなくても、ガンマプロファイルだけでも、5750ブレイク後の上値余地の大きさを示唆していたことになる。もっとも、Op Exを通過したことでショートカバーの燃料はかなり減ったのではないか。

HFも売った分の買い戻しが進む。

最後のラリーの前の週のものになってしまうが5月1週目は、やはり自社株買いと個人が買いの主力で、HFは少し買い戻し、機関投資家はやれやれ売りという構図だった。

NAAIMは概ね楽観的ながらも少し調整しており、GSセンチメントもマイナス域で停滞しており、総楽観にはほど遠い。従って踏まれたほどではないにしろ「ラリーに付いて来れなかった参加者」が多いのはどうも事実であり、彼らが最後まで悲観さを貫き通せれば買い手不在になっていくだろうが、上司に言われてポジションを縮小した後に「やはり第二次トランプ政権は株安が怖いからビジネスフレンドリーに回帰するだろう」と考えてしまうかどうかである。

テクニカル。週足は窓を開けての下ヒゲ陽線となり5786は週足サポートとなる。週末の間にムーディーズが米国を格下げしているため、下窓を開けてのオープンになると思われる。このニュースの重要さは、それがどこまでボラティリティと下向きトレンドを作れたかによって後から規定される。下向きにトレンドが曲がればCTAの買いは止まるし、1日2%以上の下げが見られればVolコントロールの買いも止まる。ヘッドラインとは別に5/16 Op Ex戻り天井説もまだ保持している。ある程度下がった場合の対処としては、企業の自社株買いは続くため「二匹目のドジョウを狙うショート」の分は相変わらずよくないことを想起すべきである。。5650 -5786間の窓をもし再び突破されればアイランド・リバーサルになってしまい、かなり長期にわたっての戻り天井が確定してしまうが、まだそこまで想定する段階ではなく、とりあえず窓を開けた時のストーリーが否定されるまで、窓の上限はサポートであり続ける。90日間の猶予期間中は「楽観的に織込みすぎだ」と思ってもショートしてはならないのが鉄則であるが、それより少し早く一方的に答えを出す予定も取り沙汰されている。高値追いの賞味期限は長くてそこまでであり、少なくとも仮に関税レジームに戻って来た時、やはり下で売りたくなるようなポジショニングでは6月を迎えたくないものである。
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