
先週のS&P 500はゆっくりであるが反落した。金曜引け後にムーディーズが米国を格下げしていたため月曜5/19は安寄りから始まったもののフラットまで反発した。

これは押したところで個人投資家が大量な押し目買いを入れたためである。マイナス域からフラットまで買い上げるもののフラットで止まるのも「下落に逆張りする個人投資家」の特徴である。水曜5/21に格下げ後の初の20年債入札が不調と伝わるとS&P 500も急落した。木曜5/22は金利が反落すると一度は大型テックを中心にリスクオンの雰囲気になりかけたが、半導体は終日を通して弱く、引けにかけて指数も謎の売りに押された。金曜5/23は寄付き前にトランプがSNSで欧州に対する関税引上げをツイートしたことで再び窓を開けた安寄りとなり、そして再び押し目買いが入っているが、今度はフラットまでも戻せずに引け近辺に売りに押された。同日にトランプが行ったAAPLへの批判も指数の上値を重くした。このように日中の押し目買い、それもアンチゴルディロックスとバッドニュースの双方に逆らう押し目買いの強さが目立ったものの、値動きとしては夜間の下げを埋めることなく、ただの下落した週となった。

ムーディーズの米国格下げも欧州への関税も「大したことない」と逆張りする声が大きく、これは個人投資家の押し目買いの動きと一致する。先週の記事では「ニュースの重要さは、それがどこまでボラティリティと下向きトレンドを作れたかによって後から規定される」「ヘッドラインとは別に5/16 Op Ex戻り天井説もまだ保持している」と慎重であった。その上で「二匹目のドジョウを狙うショートの分は相変わらずよくない」としていたのも、二度のヘッドラインで下がった後の値動きの予想としてはイメージ通りで着地したと言えるだろう。

GS CTAは買戻しもせいぜい5月いっぱいという予想となっている。

DBの統合ポジショニングもだいぶ買戻しが進んだ。裁量勢のポジショニングは既に昨年のレンジまで戻っており、昨年の水準を超えるほどの新規ロングはさすがに建てに来ないだろうから、今後の買戻し圧力は素早く戻しそびれた機械勢に限定されるだろう。

GSプライムブローカーのHFネットレバレッジもDBの裁量勢と同様にローズガーデン前まで戻りつつある。

NAAIMは再びかなり楽観になってきた。これで上値追いの主体は機械勢だけということになり、ここに来て上値を追う蛮勇が報われづらくなることを示唆する。

トランプ政権の中国との貿易戦争休戦が2匹目のドジョウを狙うショート勢に残したトラウマはあまりにも大きかった。実際、その際に取り残されたショートが5650 -5786の窓近辺に残存していたであろうことも、先週の下落がこの窓を貫通できなかった背景と思われる。中国との合意は、トランプ政権に楯突くのは「最悪元の場所に戻れるフリーオプション」であるとの印象を各国政府に植え付け、その後の通商交渉を茶番にしてしまった(ベッセントは善意で交渉しない国には関税再引上げもあり得ると警告せざるを得なかった)が、その上で、たとえ再引上げが起きたところで、どうせトランプ政権はすぐ妥協するだろうという見方を金融市場に植え付けた。しかし前回の記事で「90日間の猶予期間中は楽観的に織込みすぎだと思ってもショートしてはならないのが鉄則であるが、それより少し早く一方的に答えを出す予定も取り沙汰されている。高値追いの賞味期限は長くてそこまでであり、少なくとも仮に関税レジームに戻って来た時、やはり下で売りたくなるようなポジショニングでは6月を迎えたくないものである」としていた通り、関税レジームへの回帰のインパクトを過小評価はしたくない。28日水曜引け後にはNVDA決算が控えている。
テクニカル。週足が上ヒゲ陰線となったため、5969は週足レジスタンスとなる。下値では中国合意窓の上限と200SMAが重なる5700台後半がサポート域になっている。このすぐ下にも水平に近い移動平均線が何本も横たわっているため、上値が重くなったとしてもやはり4月のようなすんなりとした急落にはならないだろう。最も低いサポートは50SMAと日足の歪んだリバース・ヘッドアンドショルダーの右肩が重なる5580近辺であり、調整がここまでの区間内で食い止められるなら反発トレンドは維持される。反発トレンドが最も恐れているのはやはりボラティリティの再拡大であり、水曜のS&P 500は――日中高値からカウントした場合はともかく――前日比の下落幅は2%に届かず、低ボル・レジームの根強さを印象付けたが、今後1日2%以上の下げがあった場合は続落リスクが高まるだろう。逆にもしそれが起こらず低ボル・レジームが更に続いた場合、多少下がっても機械主導のじり高に戻る可能性が高い。上値としては先週の記事で6月末までJHEQXカラーのコール売りが刺さっている5900以上は重そうと述べたのは維持する。何かの拍子で再び5900に近付いた場合は5969を背にした売り場になる。金曜5/23がそうだったように、ニュースが開けた下窓に個人投資家の買いが群がるパターンでは、前日比プラス域で更に上に飛ぶリスクは低いため、フラットに近付いたところは売り場にできるだろう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。