
S&P 500はじり高が続いた後に地政学リスクで反落した。月曜6/9、火曜6/10は中国との通商交渉への期待でじり高となり、水曜6/11は警戒されていたCPIが弱めに出たことで一気にゴルディロックスが進みかけたが、イラン関連の地政学リスクの高まりを受けて高値から反落した。もっともその勢いは木曜まで続かず、木曜は再び押し目買いが優勢になった。ここまで、TACOの流行から始まる押し目買いムーブはあまりにも強烈であった。

金曜は欧州時間に始まったイスラエルによるイランへの空襲のヘッドラインで指数は大きく安寄りとなり、一時は再び押し目買いが入ったものの、イラン側も報復の弾道ミサイル攻撃に出たことで再び売り直された。以前にも取り上げたことがある、「ニュースが開けた下窓に個人投資家の買いが群がるパターンでは、前日比プラス域で更に上に飛ぶリスクは低いため、フラットに近付いたところは売り場にできる」パターンに近かったものの、さすがにフラットからある程度遠いところから売り直されている。原油が暴騰したことでリスクオフの金利低下にもならず、株式はアンチ・ゴルディロックス感が強まった。過去のパターンでは2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃以来、中東方面の地政学リスクで下げたところは最終的には押し目に終わることが多く、より細かくは、先手側が攻撃し、後手側の反撃も行われ、それが弾着した時点で押し目買いを入れてもいいという経験則が知られている(先手側の攻撃で下げたところは、後手側の反撃が控えているのだから時期尚早である)が、金曜の午後遅くにそれをやって土日を跨ぐのはさすがに蛮勇ということなのだろう。現に土日の間に応酬は更に続いているが、今のところその拡大ぶりは限定的である。
もっともこの手の話は「遠くの戦争は買い」のような陳腐な格言を指して言っているのではない。「遠くの戦争は買い」なら株式市場の長い不調を招いた2022年2月のウクライナ戦争で既に戦死しており、まさか4歳以上の人間が2022年の経験を無視してこの格言を取り上げるはずがない。芸がない言い方となるが、遠くの戦争のインパクトは概ね原油価格によって規定される。来週になっても原油価格の上昇が続くなら顔面着地感が続くし、大きく下落するのを確認できれば株式も再び買えるようになる。


GS CTAはやはり買いの主力から外れる。システマティック勢全体でも似たようなものであるが、ポジショニング水準としては半分ほど買い戻した程度である。

DBの統合ポジショニングもやはり4月の売りを半分買い戻した程度であり、現在23パーセンタイルである。

久々にリスクパリティのポジショニングも流れてきた。こちらはvolコントロールの足が遅い版であることが知られており、ポジションは非常に軽い。

ファンディング・スプレッドも少し戻した程度であり、機関投資家による大掛かりなレバレッジ需要が回復していないことを示唆する。

先々週のフローは相変わらず企業の自社株買い vs機関投資家の売りであり、どちらも加速している。



決算期が少しずつ近付くにつれ、企業の自社株買いはブラックアウト期間が始まる。6月末にはほとんどの企業はブラックアウト期間に入る。6月下旬のシーズナリティもよくないが、ブラックアウト期間中であるにもかかわらず、6月末さえ通過すればサマーラリーに入りやすくなる。地政学に押されて存在感がすっかり薄くなっているが、小売売上高とFOMCの週である。


NAAIMは小動きで引続き楽観域にある。一方GSセンチメントはマイナス域で停滞しており、インサイダーは比較的大幅な売り越しとなっている。

テクニカル。週足は上ヒゲ陰線となり上ヒゲの6060は週足レジスタンスとなる。日足でも金曜日足が同様の上ヒゲ陰線となっており6026も日足レジスタンスとなる。先週までの週足サポート5861はまだ生きており、またその下の5800近辺はガンマウォールがある。もっとも週末20日に控えている6月Op Exを通過するとガンマウォールが縮小する可能性もある。ブラックアウト本格化も重なるため、そのタイミングからはこれまで控えられていた下攻めが再開される可能性がある。これ自体は先週の記事でも考えたシナリオの一つであるが、イスラエルのせいでOp Ex前からフライングで下げ始めた形となる。金曜でも作れなかった1日2%下げが見られるかも引続きキーとなる。休戦宣言のヘッドラインも随時飛び得るため、下値でショートするとあっという間に捕まる可能性もある。基本的に5800 -6060レンジ、その内側で作るなら5861 -6026レンジからは逸脱しづらいだろう。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。