
S&P 500は二本目の週足上ヒゲ陰線となった。週末の間に紛争が拡大しなかったことで月曜6/16はリスクオン一色となったが、先週の記事で取り上げた6060の週足レジスタンスを前に失速し、火曜はあっさり反落した。米軍の介入懸念が話題になりはじめたため、原油はついに反落せずリスクオフ気味が続いた。「"遠くの戦争は買い"なら株式市場の長い不調を招いた2022年2月のウクライナ戦争で既に戦死しており、まさか4歳以上の人間が2022年の経験を無視してこの格言を取り上げるはずがない。芸がない言い方となるが、遠くの戦争のインパクトは概ね原油価格によって規定される。来週になっても原油価格の上昇が続くなら顔面着地感が続くし、大きく下落するのを確認できれば株式も再び買えるようになる」とした通り、停戦が見えたわけでもない中で過剰な楽観論は有害であった。戦死、討死、陣没、散華、玉砕、何でもいいが、とにかく「遠くの戦争は買い」という陳腐な表現についてはそんな感じである。

水曜6/18のFOMCにおいてパウエル議長のスタンスが少しタカ派だったことで、S&P 500は終盤にかけて売り込まれた。木曜の休日を挟んで金曜6/20になっても先物は地政学リスクで下値を試し続けたが、トランプがイランに2週間の猶予を与えたことで金曜6/20はショートカバーが先行した。関税のニュースもそうだが、とにかく猶予期間ができるとその期間の長さに耐えられないショートはカバーさせられるものであり、その動きは猶予後の結末を予想したものではない。今後もそうだろう。


金曜6/20は先々週から「じり高転換のタイミング」として気にしていたOp Exであり、特にこの1ヶ月でパフォーマンスがよかったセクターを中心に反落が優勢となった。半導体セクターはトランプ政権の対中輸出規制のヘッドラインで下値を伸ばした。指数ベースでは下値を叩くほどでもなく、多少弱かった程度で引けているが、それまでの連日の「バッドニュースの下げは寄り底」から「グッドニュースの上げは寄り天」への変遷の芽が見えなかったわけではない。

週末の間に米軍がイランの各施設を空爆した。先ほどの2週間の猶予とは矛盾する話であり、大半の市場参加者にとっても不意打ちになっただろう。イランによるホルムズ海峡封鎖の――封鎖能力は別として――リスクが高まっている。戦闘自体はこれ以上拡大しづらいと思われるものの、その方向性は株式の売り買いの論点ではなく、先週の記事の解釈と同様、週明けも引続きひたすら原油価格に注目であり、特に原油価格の高騰に伴い米金利が変な上昇の仕方をした場合はアンチ・ゴルディロックスとなりやすいだろう。先週末には日曜営業のテルアビブ株式市場の「近くの戦争は買い」もいわんばかりの堅調さは週前半の世界株式のヒントになっており、今週末も急騰しているが果たして。画像はイメージである。


DBの統合ポジショニングは一度28パーセンタイルまで跳ねた後に20パーセンタイルまで反落している。これは主に地政学リスクを受けた裁量勢のポジション削減が背景にあり、システマティック勢はその中でも買戻しが続く。

HFをはじめとするGSプライムブローカレッジの顧客のネットレバレッジは概ね4月の急落前の水準まで復元された。

GSによると個人投資家は春に増やしたポジションの一部を売り越しに転じている。個人投資家とHFがスマートマネーであり、脳がないルールベース機械勢と脳がないようなものである裁量系機関投資家がダムマネーであることに注意が必要である。


なぜか6月末の年金リバランスが各所で話題になっているが、GSもBNPパリバも米株の売りフローを予想する。

また6月末を満期とするJHEQX(JPMカラー)のコール売りが5905に刺さっており、月末が近付くにつれて野村は「5905に向けた重力」を取り上げている。

なおGSが調べた1928年以降のシーズナリティでは6/23以降はしばらく不調で、6月末を通過すると資金流入が復活しやすいように見える。

6/13時点の物となるがGSの今後の各営業日のインプライドVolも流れてきており、7月に入ると関税交渉で3ヶ月延期されたデッドラインが近付く7/7に警戒が集まる。

Op Ex前のものとなるがBofAのディーラーガンマは下値でポジティブガンマ、上値でネガティブガンマという最強構図が続いていた。とはいえ上値の手当は近い方から進んでいるようで、ショートカバーを誘発しやすい水準は6200より上まで後退している。これが更にOp Ex通過でどう変わったかはまだ分からないが、まさか山と谷が深くなることはないだろうから、5800台のサポートも6200超えのショートカバートリガーも、これまでよりは弱まるのではないか。自社株買いもブラックアウトにどっぷり浸かり始めたため、ここまでに見られた下値の堅さが減衰する複数の要因が重なっている。

という色々と力関係が変わり始める節目でNAAIMは総楽観に触れており、これでは非常に悲観的にならざるを得ない。2週間ほど前から本ブログは一貫して6/20のOp Exをじり高が終わる日柄の目途としており、爆弾が落ちようと落ちなかろうと6/20から6/30にかけての日柄では慎重になる予定であった。そういう意味で本ブログのタイムスケジュールには雨が降ろうと爆弾が降ろうと変更はない。

テクニカル。先週の記事では「基本的に5800 -6060レンジ、その内側で作るなら5861 -6026レンジからは逸脱しづらいだろう」としていたが、6026はともかく6060の上限は実に綺麗すぎるほどワークした。よもや「遠くの戦争は買い」の一環である緊張緩和期待で週前半に6060直下で高値を追い掛けた人はいないだろう。週足上ヒゲの6050までレジスタンスが降りて来る。4/24に上方ブレイクされて以来一度も下方ブレイクされていない25SMAは6/20に初めて接近され、これが下方ブレイクされれば5月を中心とするじり高局面の一服を示唆する。5800近辺のポジティブガンマの山が弱まった可能性があるとはいえ、5月後半にも一度サポートになった日足200SMAの5814近辺はテクニカル的にはまだ日足レベルのサポートとして生きている可能性が高く、その下でも日足50SMAの5736が控えている。その上で、機械勢の足を止められる1日2%下げの有無が引続き調整の規模を決定すると考えられ、また日柄がこれだけ明瞭であることから、押し目買いの目安は値幅より(6月末の)日柄ではないか。ショートは停戦方向のヘッドラインに弱いと先週の記事でも述べており、それは現に先週月曜と金曜に見られたが、先週金曜がそうだったように、停戦方向のヘッドラインで既に上がったところは売り場となるだろう。ニュースで買いに転じられるケースがあるとすれば、引続き原油価格の大幅下落が確認できてからである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。