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 安倍晋三首相の経済アドバイザーとして知られる本田悦朗・駐スイス大使が次期日銀総裁の椅子にやる気を出している。「今の執行部は退任しろ、自分なら脱デフレできる」というリフレ派節が黒田総裁にも向けられるとは因果である。もし本田元参与が総裁になったらなったで数年後にまた他のリフレ派から「今の執行部は退任しろ、自分なら脱デフレできる」と言われる下剋上サイクルが続くのだろうか。

日銀総裁に就任すれば、全力でデフレ脱却実現する=本田・駐スイス大使

安倍晋三首相の経済アドバイザーとして知られる本田悦朗・駐スイス大使は8日、ロイターとのインタビューに応じ、次期日銀総裁に指名され就任が決まれば、2%の物価目標実現によるデフレ脱却を全力で実現すると述べ、ポストに強い意欲を示した。また、消費増税までに強じんな日本経済の実現が必要であり、拡張的な財政政策が必

日銀執行部は退任を、体制転換なくデフレ脱却ない-本田スイス大使

安倍晋三首相の経済政策の助言役を務める本田悦朗駐スイス大使は、デフレ脱却には日本銀行の現体制の転換が必要だとし、黒田東彦総裁ら執行部は任期終了をもって退任すべきだとの見解を示した。7日の電話取材で語った。

 嫌味はさておき、前参与の主張そのものは「消費増税に反対、せめて全額を社会保障へ」「デフレ脱却には金融緩和に加えて財政支出が必要」「名目600兆円のGDPを政府との共通目標に掲げる」と、案外まともである。黒田総裁がリフレ原理主義で消耗している間に、浜田・本田の両ブレーンはすっかりシムズ理論に転向している。

 サプライサイドの供給力が強靭であり、潜在成長率が低迷する以上、インフレは2%に行きようがない。「インフレ期待を持って買い急ぎする消費者がたくさんいればインフレになる」などという単純な話ではなかった。それに対してGDP目標は、だいたい今のペースを保てれば数年のうちに600兆にいくだろう。インフレ「率」の2%割れは来年になってもただの2%割れだが、GDP総量なら時間が経つにつれて確実に近づいていく。さらに、引き締め局面では確かに物価へのコミットが必要だが、緩和の究極的な目的はGDPであり、今のようにインフレがなくてもGDPが成長していればそれで良いはずだ(なお、リフレ派の理論的には現在の日本の状況は存在し得ないことになっていた)

 問題は、脱デフレに積極財政が必要というのなら、まず「デフレは貨幣現象であり、日銀の不作為のせい」としていたリフレ派の中央銀行万能論を自己批判するのが筋だ。また、前参与の実現したい政策は正しいとしても、それを実現するのに果たして自分が日銀総裁になる必要があるのか。日銀総裁が財政に対して持つ発言力は極めて限定的なので、財務大臣あたりを目指して猟官活動をすべきではないだろうか。そして脱デフレできなかったとしても黒田総裁のせいではなく政府のせいではないのか(できる、と言ったことができなかった、という意味では責任を取る必要はあるが)

 本田前参与が次期日銀総裁を目指すレースで先頭に出てくる可能性は高くないものの、思考実験としては積極財政は金利と株の上昇要因である。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。