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 チャイナショックの前後から李克強指数を使ったりして、中国の公式GDPは捏造されたものであり、実態はもっと低いという主張がなされてきた。しかし、そこから2年間の粗探しを経ても公式GDPを否定する材料は出て来ず、どうも6.9%成長という公式の数字が概ね妥当であったことがわかっている。そこで今回FTは「中国のGDPだけは経済実態を表していない」という新たなケチの付け方を考え付いている。

China’s growth miracle has run out of steam

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 一般的にはGDP成長は国民の生活水準や生産性の成長を反映すると思われているが、中国ではそうはない。地方政府が(本来財政による制約を考えると到底行えないような)生産性の低い支出を続けているからである。また、投資の浪費の結果でできた不良債権の評価損を計上するとGDPは低下するが、中国では計上していない。もし計上していたら中国のGDPは3%未満となるとも言われている。

 1980年代の日本でもGDPに占める消費の割合が小さく、投資に大きく依存していたし、誤った資源配分に陥っていた。ソ連も同じで、両国ともに投資の浪費の結果、世界のGDPに占めるシェアの6, 7割もの低下を経験した。中国の成長もすでに動力を失っており、債務の激増によってしかGDP目標を達成できなくなっている。売れないものを作り、閑古鳥が鳴く空港を作るとGDPは増えるかもしれないが、そのGDPは経済を表していない。という話である。なぜか日本が引き合いに出されているが、無駄な公共工事のことを言っているのだろうか。

 債務の激増はGDP成長が高い原因というより結果である。GDP成長が高すぎるから個人も企業もバランスシートを膨らませないと負けてしまう。生産性の低い事業については、穴を掘って埋めてもGDPが増えるのは有名な話であり、作業した人が消費活動を行うことに意味があるのに穴の意義について論じても仕方がない。しかも今更ゴーストタウンが売れているように、どうもGDPが伸びるにつれて穴にも価値が付くようになるようだ。そもそも「L字型の成長減速」を覚悟していた当局にとって、目下の目標である6.5%を上回る6.9%を無理して維持する理由はない。

 むしろFTとは逆に、遅行指標である消費の盛り上がりでGDPの伸びが保たれていても、政府の生産性の低いセクターへの引き締めによりチャイナショックのようなことが起き得るので、本ブログでは引き続きGDPと共に鉱工業生産、李克強指数、固定資産投資とPPIをモニターしていく。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。