ssec
 上海株指数は高値圏でボラティリティが高まっている。経済指標を点検すると、確かに景況感はやや足踏みになっているが方向性が変わったわけではない。一方、中国の長期金利は2014年ぶりに4%を超えており、株のバリュエーションにプレッシャーをかけているようだ。日米と異なり、金利が上がっても別に銀行株が強くならないのが中国株の辛いところである。
China 10 year
curve
 金利カーブを見ると1年前と比べて大きくベアフラットニング、1ヶ月前と比べるとパラレルシフトで前年限の金利が上昇している。CPIは2%以下で特に上昇傾向を見せていないため、金利上昇は政策的引き締めによる短期金利上昇の長期ゾーンへの伝播の結果に見える。ちょいちょい5-10や7-10がインバートしているが、カーブは流動性プレミアムなどでところどころ歪んでいるので2-10がインバートしない限り誤差の範囲内と言えそうだ。参加者はファンディングを締められるとこの引き締めが過当なものだと思っていても長期債を買ってフラットナーを張りづらく、カーブは概ねパラレルに上昇してきた。
CPI
 CPIが伸びていないのにどうして金融政策が引き締められているかというと、何度も書いてきたように足元のGDP成長率がターゲットを上回っているため、GDP下支えよりもデレバレッジの方が優先度が高いからだ。不動産価格も引き締めたい。つまりプルーデンス引締めである。
CNH
 株の調整が景気の悪化ではなく引締めに由来するため、人民元(CNH/USD)は同時に上昇している。もっとも、このチャートはドル円にもそこそこ似ており、米ドル側の要因の方が大きい可能性がある。

 インフレターゲットは得てして過度に緩和的なスタンスに帰着することが多いが、GDPターゲットはそれよりも引締め的なスタンスを正当化する。この引締めがGDPが6.5に戻るまで続くとしたらどこかでクラッシュを招きそうだが、いつ実際に深刻化するかは不動産価格と固定資産投資、李克強指数、PMI製造業とPPIあたりの監視を通して考えていこうと思う。

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