米金利の大フラットニングが話題になっているなか、銀行は短期で調達して長期で運用しているため、フラットニングで銀行の収益が圧迫されて銀行株が下がるのではないかという懸念が根強い。銀行株と金利の関係性の話題はトランプ相場で米金利が急上昇する中で米銀株が大きく上昇したのが始まりであり、いまはそれを鏡に映した形である(さらに日銀のマイナス金利導入で銀行株が暴落したところまでさかのぼっても良い)。 
 しかし、金利の絶対幅はともかく金利カーブの傾きは銀行株のパフォーマンスにそこまで影響するものだろうか。日米欧の代表的なメガバンクの株価推移と米国の2-10スプレッドを5年間取ってみた。
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    まずJPモルガン。2-10スプレッドをxとすると、

    y = -15.87x + 89.18    R = 0.60, R2 = 0.36

 むしろ2-10スプレッドと逆相関であり、2-10がフラットニングしていく過程においても右上がりを維持してきた。いわゆる利ざやが薄くなっても他のビジネスでカバーできるのだろう。
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 次に我が国の三菱UFJフィナンシャルグループ。こちらは

    y = -11.62x + 668.8    R = 0.05, R2 = 0.00

 ほぼ独立である。米金利→ドル円→日銀の金融政策→円金利までだいぶ遠いということだろう。ましてや2-10のスプレッドなど知ったことではない。それよりも日銀の金融政策に依存してそうだ。
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 フラットニングがパフォーマンスを圧迫するイメージを作ったのは意外にもこちら、ドイツ銀行であったようだ。

    y = 10.36x + 6.04    R= 0.83, R2 = 0.69

    海の向こうの米国の2-10スプレッドでドイツ銀行株の株価変動の実に69%が説明されている。従来通りの相関が保たれるとすればフラットニングが進むにつれてドイツ銀行株が更に下落する可能性が高いが、幹部たちにとって喜ばしいことに、切片が6ユーロなので、2-10スプレッドがフラットになってもドイツ銀行株は6ユーロ残る計算になる。その後金融危機がやってきたらわからない。

 まとめると、こと日米の銀行株に関しては、イメージとは裏腹に米金利のフラットニングを気にする必要はなさそうだと、過去の相関は語っている。 

この記事は投資行動を推奨するものではありません。