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 年末を前にして世界中で急にドル不足となっている。ドルと円をLIBOR金利/LIBOR金利で本来交換できるはずが、円を貸してドルを借りる方が払わねばならないプレミアムが急上昇している。本邦から円ヘッジ付きで外債投資をする場合、ドルを借りて投資しなければならない(ヘッジなしで買う時はドル円の為替リスクを取る代わりに自分のドルが手に入るためこの問題は発生しない)が、その時に日米金利差に加えて払わねばならない上乗せコストが上昇し、日米金利差も加えた仕上がりのドル円のヘッジコストは1ヶ月もので368bp, 3ヶ月もので237bpと、米国債投資で得られる利回りを一時全て食いつぶすレベルとなっている。

アングル:邦銀のドル調達コストが急上昇、流動性低下が要因か

邦銀による年末越えのドル調達コストが急上昇している。前週の米連邦準備理事会(FRB)による利上げ幅の2倍以上の拡大だ。年末特有の資金需要だけではなく、世界的な金融相場の進展でマネーが米株や米国債に流れ込み、キャッシュの流動性が低下していることが要因ではないかとみられている。<キャッシュ比率が低下>為替スワップ取引では、ドルの供給元である米欧銀が年末に向けてポジションを圧縮するため、例年、年末...

 反対に元々ドルを持っている参加者からすれば、円を担保にドルを貸出すだけで米国債投資を上回る利回りを、短期間ではあるが得られることになる。この上乗せプレミアムは残っている限り、ドルを持っている人はどんどんドルを貸し出すはずなので、理論的には存在しないことになっている(Covered interest parity)。実際、プレミアムをもらえるため海外勢はドルを本邦勢に貸して利回りを稼いだりしているが、毎年年末にはあまりやる気が起きないためドルの供給が引き締まるのが恒例である。にしても、今年年末のコスト上昇は急ピッチである。

 理由はよくわかっていないがどうも円の問題ではなく、世界中で対ユーロでも対ポンドでもドルの需給が急に引き締まったようだ。一つ言われているのは、税制改革で海外で滞在し運用されていた米ドルが、レパトリで米国に還流されやすくなるため海外ドルが足りなくなるということだが、将来の話は1ヶ月の契約と関係ないため、1ヶ月もの引き締まっているということはそれが1ヶ月以内に起きるということを予期しているというのか。一方ドル円スポット市場の参加者の中ではそんな短期的なインパクトはなく、むしろ減税が控えているのだからレパトリを来年まで引き延ばすことによるドル安効果まで議論されているのだから、スポットとフォワードの温度差がすごいということになっている。

 個人投資家からすると、この問題はドル円ロングポジションのスワップポイントの増大として影響してくる。スワップポイントの出所はドル円の為替リスクを取った個人が、外債投資しているが為替リスクを取りたくないという機関投資家にドルを貸すことの対価である。個人的には、米債とドル円は逆相関であり、フルヘッジせずに為替リスクを取った方がプレミアムを払わずに済む上に仕上がりのボラティリティが下がるため、フルヘッジで外債投資する投資家は相当センスがないと思っているが、外債投資をあくまでも円債の代替と政策的に位置付けている投資家からすると為替リスクは許容できず、ドルを借り続けるようだ。いずれにしろ、このまま推移すると年末にかけてドル円ショートポジションのコストはとても高く付くだろう。 

 2017年年間を通して(地銀のヘッジ付き外債投資が森長官に怒られ、売却と共にヘッジも外されたため)ドル円のプレミアムは先月まで限定的だったので、Cross-currency basis, RIP?のような記事さえ出回っていたが、全くRIPなどしていなかったのだ。この騒動により、2018年のヘッジコストも低下しづらくなるだろう。

 ドル調達コストはマニアックな話題だが、以下の本に詳しい。