TIBORという渋い金利指標の値動きを日経が批判している。TIBORは東京市場の銀行間貸出金利であり、毎日邦銀を中心とする15の金融機関が提示したレートを集計したもの。融資の基準金利になる場合もあるそうだ。(TIBORの上昇で)「邦銀株に一筋の光明」などという記事が出ているくらいなので、一部が望むようにTIBORが下がると銀行株、ひいては日本株指数にも悪影響があると思われるため、きちんと反論しておくことに意義があると思う。
各種短期金利の推移。マイナス金利導入前のTIBORは特段動きが鈍かったわけではない。
筆者は前からTIBORの存在意義がないと思っていたが、実際に制度としてそうある以上、パネルバンクを批判するのはフェアではないと思う。円LIBORはドルを持っている外銀が調達できる理論的円金利が日々変動するため変動し得るが、円の政策金利が動いていないし、動く気配もない中で邦銀が円TIBORを動かす理由があるのか。まさにLIBOR絡みの不正事件で巨額の罰金を課される可能性があるからこそ、パネルバンクとしては理由もなく動かすわけにはいかないのではないか。動かしたら動かしたで、数年後に金融庁に「何年何月何日に前日より1/2bp高く提示した理由は何ですか?自行の利益のための操縦じゃないですか?」と詰められる可能性もあるのだ。
なぜTIBORがマイナス金利にならないのかについても、邦銀の預金からの調達金利がゼロであることを考えると特段不思議ではない。TIBORのORはオファーレート、つまり貸し出す時の金利であり、何らかの市場金利の中心値であることをコミットしているわけではない。もしオファーレートのTIBORがマイナスなら、オファーレートよりも高いゼロ金利で個人預金を受け付け続けるには株主への説明が必要となるのではないか。ユーロ円先物の取引が盛り上がらず東証に落ちる手数料が増えないのは日銀が金利をカーブごと凍結させたせいであり、文句があるなら日銀に対して言うべきだろう。
迷走・金利改革 動かぬ銀行間金利、不正のリスク排除遠く
「期待外れだ」。12月1日、東京金融取引所の太田省三社長は報道陣の前で痛烈な批判を口にした。矛先は100兆円もの融資の基準となる東京銀行間取引金利(TIBOR)。金融取引の根幹を担う中核指標を、公的

各種短期金利の推移。マイナス金利導入前のTIBORは特段動きが鈍かったわけではない。
筆者は前からTIBORの存在意義がないと思っていたが、実際に制度としてそうある以上、パネルバンクを批判するのはフェアではないと思う。円LIBORはドルを持っている外銀が調達できる理論的円金利が日々変動するため変動し得るが、円の政策金利が動いていないし、動く気配もない中で邦銀が円TIBORを動かす理由があるのか。まさにLIBOR絡みの不正事件で巨額の罰金を課される可能性があるからこそ、パネルバンクとしては理由もなく動かすわけにはいかないのではないか。動かしたら動かしたで、数年後に金融庁に「何年何月何日に前日より1/2bp高く提示した理由は何ですか?自行の利益のための操縦じゃないですか?」と詰められる可能性もあるのだ。
なぜTIBORがマイナス金利にならないのかについても、邦銀の預金からの調達金利がゼロであることを考えると特段不思議ではない。TIBORのORはオファーレート、つまり貸し出す時の金利であり、何らかの市場金利の中心値であることをコミットしているわけではない。もしオファーレートのTIBORがマイナスなら、オファーレートよりも高いゼロ金利で個人預金を受け付け続けるには株主への説明が必要となるのではないか。ユーロ円先物の取引が盛り上がらず東証に落ちる手数料が増えないのは日銀が金利をカーブごと凍結させたせいであり、文句があるなら日銀に対して言うべきだろう。
この記事は投資行動を推奨するものではありません。