3メガ銀、口座維持手数料を検討 マイナス金利で苦境(産経新聞) - Yahoo!ニュース
三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクが、銀行口座の維持にか - Yahoo!ニュース(産経新聞)
銀行が口座維持手数料の導入を検討しているというニュースが話題を呼んでいる。当然ながらネット上は批判一色であるが、前回のGPIFがマイナス金利を徴収されそうという話と合わせ、「マイナス金利の顧客転嫁」の流れができているように見えるのは銀行セクターにとって大変素晴らしいことだ。
この話を最初に盛り上げたのは10/23に発表された日銀のFSRレポートと思われる。マイナス金利が金融機関を苦しめているという批判に対する反論として、日本の金融機関の低収益性はマイナス金利政策だけでなく他の構造的なものでもあると論証したのだが、その時に挙げた目玉対策は合併によるオーバーバンキングの解消と決済サービスに対する手数料の徴収である。特に、上のチャートは衝撃的であった。日本の金融サービスはもっとずっとお金を取ってもよいはずだが、何でも無料であるというのが常識になっている。
レポートでは結論をぼかしたが、59ページではひたすら欧米金融機関の様々なサービスの有料化について語っているため、要するにそういうことなのだろう。次に11/29の中曽副総裁講演も概ねFSRレポートの内容に沿ったものだが、中曽副総裁はさらにはっきりと「日本の金融機関が適正な対価をとることなく決済サービスを提供し続けている」と断言し、「おそらく、国民の一般的な感覚は、「大事なお金を銀行に預けているのに、手数料をとるなんて、おかしい!」というものかと思いますが、私は、金融仲介サービスに関する適正な対価について、国民的な議論が必要な段階に来ていると思います。」とはっきりと問題提起を行った。
確かに私たちが100万でも1000万でも良い、銀行に口座を開いて預金を預け、給料を振り込んでもらったり引き出したりしているとして、一体どこでどう銀行に収益をもたらしているのか全く見当がつかない。トップラインでも銀行に収益をもたらしていないのに、どうして窓口の人手を使っての新札への両替なども無料でできるのが当たり前だと思えるだろうか。
というわけで中曽副総裁の問題提起は恐らく完璧に正当なものである。元々マイナス金利政策を導入した時も土管である銀行にストレスをかけるのは本意でなかったはずだ。ただし、振込手数料やATM使用料もそうだが、決済サービスの手数料が気になるのもまさに金利が低いのが原因であるから、日銀の低金利、マイナス金利政策が免罪されるわけではない。もし預金金利が十分に高ければ多少の手数料を取られてもここまで嫌な気分はしなかっただろう。
一部の銀行が口座維持手数料を徴収するとして、それらの銀行からの預金流出は避けられないが、残念ながら預金流出は銀行に対する預金者の脅し材料とならない。銀行にとって少額預金口座の減少は両手を挙げて歓迎すべき事態だからだ。人口1億2千万人の日本では銀行口座は11億個もあるが、その維持コストは莫大なものである。手数料を取る前にやることがあるだろう、という批判も当然あるだろうが、この人口減少社会でこの金融庁とこのバーゼル委員会の下では「ない」と胸を張って良い。どうせ数ヶ月後に金融庁からストップがかかる飛び道具の新ビジネスを探すよりも、この口座維持手数料徴収をしっかり実行していくことが最も銀行にとってポジティブな材料となる。文句があるなら出て行け、と言える体制にあるのは銀行にとって大きな強みである。邦銀勢だけ不当に無料にしていたのだから、値上げで海外勢に取って代わられる心配もない。収益さえ上がれば他の施策をやっていく体力も出てくるだろう。2018年は銀行セクターがアンダーパフォームの沼から這い上がる年となるか。
レポートでは結論をぼかしたが、59ページではひたすら欧米金融機関の様々なサービスの有料化について語っているため、要するにそういうことなのだろう。次に11/29の中曽副総裁講演も概ねFSRレポートの内容に沿ったものだが、中曽副総裁はさらにはっきりと「日本の金融機関が適正な対価をとることなく決済サービスを提供し続けている」と断言し、「おそらく、国民の一般的な感覚は、「大事なお金を銀行に預けているのに、手数料をとるなんて、おかしい!」というものかと思いますが、私は、金融仲介サービスに関する適正な対価について、国民的な議論が必要な段階に来ていると思います。」とはっきりと問題提起を行った。
確かに私たちが100万でも1000万でも良い、銀行に口座を開いて預金を預け、給料を振り込んでもらったり引き出したりしているとして、一体どこでどう銀行に収益をもたらしているのか全く見当がつかない。トップラインでも銀行に収益をもたらしていないのに、どうして窓口の人手を使っての新札への両替なども無料でできるのが当たり前だと思えるだろうか。
「日本国民のサービスに対するノルムは、海外ではみられない独自の進化をとげてきたと思います。例えば、国語辞典でサービスの意味を調べると、「奉仕」 や「値引き」、「おまけ」といった説明がでてきます。私たち日本人にとっては、「家族サービス」や「サービス残業」、「お客さん、サービスしますよ!」 といった言葉はお馴染みのものです。これらの例から明らかなように、日本のサービスには「無償」という概念が暗黙に込められているように思います。一方、英語辞典でサービスの意味を調べても、そうした概念はみられません。」
「おもてなし」の言葉にあらわれるように、日本には「金銭の見返りを求め ることなくサービスを提供すること」を美徳とする空気があります。金融業をはじめ日本のサービス産業の生産性が国際的に低いのも、こうした日本独特の サービスに対する国民のノルムと無関係ではないように思います。
上の文章はもし金融機関についてのものでなかったら恐らく意識の高い人々から大喝采を浴びていたことだろう。ヤマト運輸の値上げに対する国民の反応を思い出すと良い。その素晴らしいものである値上げが、金融機関にだけは許されないと考えるのはフェアではない。
上の文章はもし金融機関についてのものでなかったら恐らく意識の高い人々から大喝采を浴びていたことだろう。ヤマト運輸の値上げに対する国民の反応を思い出すと良い。その素晴らしいものである値上げが、金融機関にだけは許されないと考えるのはフェアではない。
というわけで中曽副総裁の問題提起は恐らく完璧に正当なものである。元々マイナス金利政策を導入した時も土管である銀行にストレスをかけるのは本意でなかったはずだ。ただし、振込手数料やATM使用料もそうだが、決済サービスの手数料が気になるのもまさに金利が低いのが原因であるから、日銀の低金利、マイナス金利政策が免罪されるわけではない。もし預金金利が十分に高ければ多少の手数料を取られてもここまで嫌な気分はしなかっただろう。
一部の銀行が口座維持手数料を徴収するとして、それらの銀行からの預金流出は避けられないが、残念ながら預金流出は銀行に対する預金者の脅し材料とならない。銀行にとって少額預金口座の減少は両手を挙げて歓迎すべき事態だからだ。人口1億2千万人の日本では銀行口座は11億個もあるが、その維持コストは莫大なものである。手数料を取る前にやることがあるだろう、という批判も当然あるだろうが、この人口減少社会でこの金融庁とこのバーゼル委員会の下では「ない」と胸を張って良い。どうせ数ヶ月後に金融庁からストップがかかる飛び道具の新ビジネスを探すよりも、この口座維持手数料徴収をしっかり実行していくことが最も銀行にとってポジティブな材料となる。文句があるなら出て行け、と言える体制にあるのは銀行にとって大きな強みである。邦銀勢だけ不当に無料にしていたのだから、値上げで海外勢に取って代わられる心配もない。収益さえ上がれば他の施策をやっていく体力も出てくるだろう。2018年は銀行セクターがアンダーパフォームの沼から這い上がる年となるか。
この記事は投資行動を推奨するものではありません。