中国政府が個人の外貨購入への規制を強化するのが新年の恒例行事となっている。もとより市民1人あたり毎年5万ドルの外貨購入枠があり、この額はさすがに2018年現在になっても変わっていないが、2017年新年では固有の権利のはずの5万ドルの枠を使う際にも面倒な申請書を出すことになった。

・2017年1月1日より、銀行窓口やネット銀行での外貨購入に際しては、「个人购汇申请书」を記入し、その用途を明らかにしなければならない。
・用途には旅行、留学、公務、商用、訪問な、貿易などを含む。
・申請書を記入する際には以下のことに留意する。
①虚偽内容を記入してはならない
②虚偽資料を提出してはならない
③他人に購入枠(5万ドル)を貸し出してはならない
③他人の購入枠(5万ドル)を借りてはならない
⑤国外で不動産購入、証券投資、生命保険や投資性保険などまだ許可されていない資本投資の用途に供してはならない
⑥マネーロンダリング、脱税、地下銀行などの違反行為をしてはならない
・違反者はブラックリストに載せ管理する。 
 その後はこの面倒な手続きを避けるために、銀聯カードを使って日本などのATMで外貨を引き出すのが流行った。チャイナショック後は銀聯カード1枚あたり年間10万元が上限だったが、これを様々な銀行で何枚も作って、海外のセブンイレブンなどで1枚ずつ上限まで引き出すわけである。

 その流れを受けて2018年新年では「銀行カード1枚あたりの上限が年間10万元」だったのが「一人あたり銀行カードを使った海外引出しの上限が年間10万元」に変えられた。カードを何枚用意していようと、同じ人が年間で10万元以上引き出すとSAFE(外貨管理局)のオフショア外貨取引監視システムに検知され、ブラックリスト入りしてその日の17時までに全てのカードの海外引出しを止められ、翌年年末まで海外引出しができなくなる。
CNY 2017
 確かになかなかに海外で10万元(170万円)を使う場面はないし、あらゆる手段を使って2016年に人民元をドルに換金した人は直ちに米株でも買っていない限りボロ負けしているため、本物のマネロンや不正蓄財の海外移転以外で外貨換金はもう流行っていないと思われ、普通の人への影響は限定的だが、とにかく人民元はさらに使いにくくなった。危機が去ったのでそろそろ規制を緩めるべきだと思っているが、予想通り自由化の帰り道は長い。

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